軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

375.入校試験です!

クインフォード魔法学校へとやって来たメイたちは、ホール奥の受付へと向かう。

そこには、黒のローブをまとった壮年の男が立っていた。

「はじめまして!」

メイが元気よく頭を下げると、緩いオールバックの男はメガネの位置を直しながら語り出す。

「私はクインフォード魔法学校の試験官。本校は才能あるすべての者に門戸を開いています。ですが、入校には試験が必要となります」

「試験……?」

メイは首と尻尾を傾げる。

「合格者のみ入校が許可されるということです。合格のあかつきには、誉れ高きクインフォード魔法学校の制服を授与しましょう」

「わあっ! レンちゃんツバメちゃん制服だって!」

「はい、これですね!」

「それでは付いて来てください。貴方たちには……そうですね」

受付の試験官NPCは、試験内容を考えながら歩き出す。

どうやら、いくつかのパターンがあるようだ。

そのまま中庭へと進んで行くメイたち。

そこには、木製の的が並んでいた。

「ここからあの的を撃ち抜くことができれば、クインフォード魔法学校への入校を許可しましょう」

「放れた場所にある的を撃て……やっぱり魔法が基本になるクエストなのね。そしてこの位置からということは……」

どうやら魔法スキルの威力に関わる【知力】や、的に当てる能力に関わる【技量】を測るもののようだ。

この試験をクリアしなければ生徒になれず、立ち入り箇所も制限され、受けられるクエストも激減。

もちろん、制服ももらえない。

「ここは誇り高き魔法学校。君たちの力、しっかりと見せてもらいますよ」

そう言って、厳しい目を向ける試験官。

「まずは私からいくわね」

杖を伸ばして的に向ける。

当然、今のレンにとっては余裕が過ぎるクエストだ。

「【ファイアボルト】」

狙いを正確にする【技量】もあり、威力を決める【知能】も高い。

放った炎の弾丸は、難なく的を打ち破った。

「……見事だ」

その結果に、深くうなずく試験官。

「さあ、次は君の番だ」

「魔法……ですか……」

当然、ツバメは悩む。

【紫電】などは魔法系に属しはするが、攻撃力はなく範囲も短い。

おそろいの制服を前に、立ちはだかる壁。

「それなんだけどツバメ……【投擲】を使ってみて」

「大丈夫でしょうか?」

「魔法学校の入学自体は、魔導士でないと不可能ってことにはしていないと思うの。そう考えると魔法以外のスキルも有効なはずだから」

言われてみれば、試験官は『魔法で打ち抜け』とは言っていなかった。

攻撃魔法を持たないツバメは、レンの言う通り【投擲】で的を狙うことにする。

「それではいきます! 【投擲】!」

ある程度の【腕力】と【技量】があるため、投じられたブレードはしっかりと的を捉えた。

試験官の反応を、緊張と共に注目するツバメたち。

「……見事だ」

試験官は、再び深くうなずいた。

思わずレンとツバメは「やった!」とハイタッチ。

どうやら、『的をしっかり撃つ』ことができれば問題ないようだ。

「魔法が有利なのは間違いないけど、物理スキルでも問題はないみたいね。こうなったらもう……楽勝よ!」

「そうですね!」

「さあ、次は君の番だ」

「はいっ!」

そして最後はメイ。

元気に応えると、気合を入れて的に向き合う。

「どうせなら最後は派手に決めちゃって!」

「おねがいします!」

もちろん使用するのは、得意の遠距離攻撃スキルだ。

「おまかせくださいっ! いきます! 【投石】だぁぁぁぁーっ!」

メイが投じた石は、暴風を巻き起こしながら中庭を猛進。

グシャアアアア!! と豪快な破砕音を鳴らして的を消し飛ばし、そのまま背後の石壁にぶつかって粉々に弾け飛んだ。

吹き荒れる風にローブを派手にバサバサさせている試験官を、三人はじっと見つめる。

「……見事だ」

「やったー!」

もはや魔法どころか、技術とすら言えない原始的な攻撃法。

それにもかかわらず、大きくめくれあがったローブと乱れた髪のまま深くうなずく試験官の姿に、レンは思わず笑ってしまう。

「君たちにクインフォード魔法学校への入校を許可しよう。これからは誇り高く自覚を持って勤しむように」

「ありがとうございますっ!」

うれしそうに頭を下げるメイ。

「……なるほどね、完全に理解したわ」

魔法と【知力】が全てのはずの魔法学校マップ。

ここでの活動は、遊びや見学が中心になるのでないかと思っていた。

しかし『求められる結果を出しさえすれば、手段は問われない』ようだ。

早くも漂い出している『最強野生児in魔法学校』の気配に、レンは口元を緩ませる。

【クインフォード魔法学校制服】:名門魔法学校の制服。魔法系スキルの威力を微増する。耐久5 知力5

「やったー! これで皆おそろいだねっ!」

「いいですね!」

手に入れた制服は、決して性能の高い装備品ではない。だが。

メイはさっそく装備を換えて、ツバメと手を握り合ってぴょんぴょんする。

そのうれしそうな笑顔だけで、もう十分だ。

レンもすぐに制服に着替えると、希望通り三人おそろいの装備になった。

「わあ! レンちゃん雰囲気がいつもと違うね。すっごく頭の良い、きれいな先輩って感じ!」

「はい、間違いなく優等生ですね」

「優等生感なら、ツバメも結構なものじゃない?」

「うんうん、わかりますっ!」

ツバメはおとなしく読書好きな生徒といった感じだ。そして。

「どうですか? ご感想ください!」とばかりにポーズを決めるメイ。

「もちろん、とてもかわいいです……っ!」

「少し、知的な感じになったんじゃない?」

「えへへへへ」

尻尾をブンブン、うれしそうに笑うメイ。

耳と尻尾があるせいか、若干『魔法学校に潜り込んできた化け猫』感はあるが、それはご愛敬だ。

「この制服を着ている時は、私も中二病から解き放たれてるのよね……」

ゲームをする以上『いつ敵が出てきてもいいように強い装備をしておく』のが信条のレン。

しかし今回は、みんなで同じ衣装を着ることも楽しみの一つ。

それなら衣装チェンジも問題なしだ。

久しぶりに普通の魔導士になっている自分を見て、レンは思わず歓喜の笑みを浮かべたのだった。