軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

371.意外な邂逅

「やっぱりここは気持ちいいねぇ……」

「本当です」

「王都から続いて結構慌ただしかったし、こういう時間もいいわね」

遺跡都市ラプラタの大型クエストにおいて、見事『動力部』を守り抜いたメイたち。

それによってロボットたちも稼働を続け、ここ上層部の植物園には美しい緑が保たれている。

「【投擲】!」

ツバメがブレードを投擲して、伸びすぎた枝を切り飛ばす。

「【ラビットジャンプ】!」

そしてメイは【ショートソード】を手に跳躍し、枝を切る。

【技量】が高いせいか、何気に切り口も滑らかだ。

「……ここの枝は、残した方がきれいに見えそうだけど……」

一方【浮遊】で目標の枝のところへ難なくたどり着けるレンは、もはや優雅な庭作業といった感じだ。

ただし手にしているのが【魔力剣】なのが、やや奇妙な光景になっている。

「それにしてもここのクエストは、普通にやると大変そうなものが多いわねぇ」

「高いところにある枝を切っていくだけですが、意外と時間がかかりそうですね」

「【モンキークライム】っ! それそれそれっ!」

攻略を中心にしているプレイヤーは絶対にやらないであろうクエストを、三人は話をしながら進めていく。

それでも各人のスキルが見事に活き、なかなか良いペースで仕事が進む。

そんなメイたちを眺める動物たちと、応援している感じで手を振るロボット。

ラプラタ棲みの鳥にいたっては、程よい枝を選んで巣作りに使い始めている。

せっかく遺跡都市を守ったのだから、もう一度植物園の光景とあの愛嬌あるロボットを見に行こうということになったのがきっかけ。

来てみるとドラム缶型の植物園ロボットが高枝切りばさみを手にうろついていたので、クエストを受けることにしたという流れだ。

「ここは少し気になるから切っておこうかしら」

メイとツバメが大まかに枝を切り、見栄えを気にしながらレンがまとめる。

「なんだか、きれいにまとまりましたね」

「すごーい。レンちゃんの仕上げきれいだねぇ」

そんな感じで枝切りを終えると、ロボットが拍手を始めた。

「このクエスト、大雑把に切ってもいいけどきれいに切った方が得点が高いのかしら」

若干ハウジングっぽい雰囲気のあるクエスト。

満足げにうなずくロボットが持ってきたのは、一本のハサミ。

【剪定ばさみ】:ラプラタの特殊金属で作られたハサミ。色々便利に切れる。

ラプラタ産の特殊金属で作られたハサミは、ささやかながらも繊細な意匠が施されている。

どうやら本当に、得点が高かったようだ。

「この子もお気に召したみたいね」

「すっごくきれいになったよ!」

「本当です」

メイたちの剪定により伸びすぎた枝もなくなり、鳥も見事に巣を完成させた。

その光景は、最初に来た時の『砂と枯草の荒れ地』とは完全に別物だ。

するとさらに見栄えの良くなった植物園を見て、ロボットは目をピカピカさせながらメイにアイテムを差し出してきた。

【剪定ばさみ】:ラプラタの特殊金属で作られたハサミ。色々便利に切れる。

「…………あれ?」

二個目の【剪定ばさみ】に首を傾げるメイ。

「枝切りクエストの上位報酬と、植物園を一定以上進展させた際にもらえる報酬が同じだったんでしょうね」

「では、私が持っておきましょうか」

手に入れるのが難しい分、入手ルートが複数ある。

【剪定ばさみ】は、どうやらそんなアイテムのようだ。

余剰アイテムを受け取った三人は並んで植物園の壁際に腰を下ろすと、海へとつながる風景を眺める。

守られたロボットと植物たちの遺跡は、今日も静かな一日を過ごしていくのだった。

ツバメは、しばらくの時間を置いて再ログインした。

「念のため、ブレードを買い足しておきましょう」

植物園の枝切りクエストでも使用したため、数の減った投擲用ブレードを用意しておきたい。

ログアウト場所の植物園前に戻ってきたツバメ。

次に向かう場所が決まってから買いに行ってもいいのだが、そのために時間を取るというのも悪いので、準備は先にしておこうという算段だ。

一度王都に戻ってブレードを買おうと、ポータルへと向かい――――その足を止めた。

「いつの間にかクエストは終わってたし、結局ここに戻ってきてしまった……」

植物園の壁の端に腰を下ろす、一人の少女の姿。

植物園ロボットの頭をなでている所を見ると、メイたちの様にここでのクエストを受けたことのあるプレイヤーなのだろう。

そしてツバメはその姿に、見覚えがあった。

「あの……遺跡のホールで、隠しブロック階段を見つけたプレイヤーさんでしょうか」

「ッ!?」

メイパーティのアサシンちゃんことツバメに声をかけられて、驚きふためく少女。

あの時ツバメが見かけたのは、確かにこの子だった。

「あ、は、は、はい! 本当に偶然ですがっ!」

「あの道の発見で遺跡は止まらずに済みました。ありがとうございました」

「い、いえ、私は本当に偶然通っただけです!」

「ここのクエスト、お好きなのですか?」

「は、はい! ロボットがなんか可愛いので!」

「とてもよく分かります」

何度もうなずくツバメ。

「そうです。【剪定ばさみ】は持っていますか?」

「いえ! 持っておりません!」

「メイさんが二つ手に入れたので、持て余しているのですが……植物園クエストがお好きでしたら」

「い、いいいいんですか!? メイさんのアイテムだなんて!?」

「はい。ここのロボットたちが止まらずに済んだのは、あの隠し通路の発見があったからだと思います。メイさんもとても喜んでいました」

そう言ってツバメは【剪定ばさみ】を差し出した。

「ありがとうございました。それでは、失礼します」

ツバメは頭を下げると、ポータルへ向けて歩き出す。

「こ、こちらこそ、ありがとうございましたっ!」

ツバメの姿が見えなくなるまで、何度もブンブンと頭を下げまくる少女。

「……メイさんと、おそろいのアイテムだぁぁぁぁーッ!!」

少女は【剪定ばさみ】を掲げると、ジョウロ片手に進むロボットに抱き着き歓喜の声をあげたのだった。