軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

370.守り抜いた遺跡都市

トップ姉妹との戦いを終え、おとずれた時間切れ。

動力部は地下に潜行し、手出し不可能になった。

『――――ただ今、動力部が地下へ潜行したのを確認』

『――――これをもって、遺跡保存組の勝利となりました!』

『――――遺跡は現状のまま保存され、遺跡都市ラプラタとして通常の稼働を開始します』

「やったー!」

「やりました!」

メイはツバメと手を取り合い、歓喜にぴょんぴょん飛び跳ねる。

「これであのロボットちゃんたちも、元気なままでいられるねっ!」

「はい! これからも植物園や図書館で動き回るロボットたちの姿が見られそうです!」

「遺跡も無事に残って、これで一段落って感じね」

「……君たちが、遺跡を守ってくれたんだな」

するとそこに、図書館ロボットを連れた考古学者がやって来た。

「ありがとう。これで遺跡の研究は大きく進んでいくだろう。そして世界の歴史は守られたんだ」

うれしそうに笑う考古学者は、動力部の奥に設置されたエレベーターを起動し、四人一緒に遺跡最上層へ。

そこには、夜の遺跡都市が広がっていた。

「あっ!」

中央層のホールから見えたのは、対決クエストを終えて出てきた一団。

見覚えのある姿は、遺跡保存組の面々だ。

「みなさーん!」

メイはぴょんぴょん飛び跳ねながら、手を振る。

「ありがとうございましたっ! おかげで無事、遺跡を守ることができましたーっ!」

「おー! やったぜー!」

「やっぱメイちゃんたち、やってくれたんだな!」

メイに気づいた遺跡保存組の面々も、うれしそうに手を振り返す。

「……どうやらラプラタの住人たちが、逃げて行った先の一つが今の王都ロマリアだったみたいなんだ」

「逃げて行った先……?」

考古学者の意外な言葉に、わずかに驚きの表情を見せるレン。

「ロボット兵や機械獣、そして銀の雫。彼らは他にも兵器となるものを造り出し……制御できなくなってしまったのだろう」

「それで都市にロボットたちだけが残ってたのね」

「そして……」

考古学者と一緒にやって来た図書館ロボットが、一冊の本を取り出した。

「これの記述を見る限り、ラプラタは『ポータル』の発明にも大きくかかわっている……」

そう言って考古学者は、魔法石を掲げて起動。

すると、夜のラプラタに一斉に光が灯っていく。

「わあーっ! きれーい!」

魔法灯を使った照明が輝き、メイの目は街行くロボットの姿を発見。

植物園ロボットは変わらず、見回りを続けているようだ。

「これが君たちが守ってくれた、遺跡都市ラプラタのもう一つの姿だよ」

「なんだか不思議な光景です」

ロボットの街に灯る光を見て、息をつくツバメ。

「おい! なんか見慣れないポータルに光が入ったぞ!」

すると中央層にいる遺跡保存組が、驚きの声を上げた。

「これで古代ポータルが起動し、遺跡が一つ前に進んだ……研究が進んだ時にはまた、君たちの力を貸してくれ」

「なんだか、すごそうな話になってきたわね……」

「もしラプラタの住人たちが、どうしようもない何かから逃げて行ったのだとしたら……隠された歴史はこれからがんばって解明していくよ。この子たちと一緒にね」

図書館ロボットは、気合十分といった感じで腕をブンブンさせる。

そのどこか愛嬌のある姿に、和むメイたち。

「あーあー、長らく狙ってきたお宝が……」

そこに、トレジャーハンターがうなだれながらやって来た。

「こりゃまた、当分は貧乏暮らしだな」

「宝を奪うために、遺跡を止めようなどとするからだよ」

「最後の戦いの時は、おいしいところを頂こうと隠れて観戦してたんだがなぁ……あんたらには降参だ」

お手上げ状態で、ため息をつくトレジャーハンター。

「ああそうだ。こんなもんを見つけたから、お前にくれてやろうと思ってなぁ」

そう言って、考古学者に一冊の本を放り投げた。

「ラプラタ住人の日記か……これは研究がはかどりそうだ!」

「俺は新たな宝を探しに行く。次にぶつかった時は……敗けねえからな」

そう言い残して、トレジャーハンターは立ち去って行った。

「私たちも、古代ポータルを見に行ってみましょうか」

「うんっ」

三人は【浮遊】のレンに飛びつき、ふわふわと落下しながら中央層へ。

そこには他のポータルと違い、緑の輝きを灯す古代ポータルと、それをものめずらしそうに見るプレイヤー達の姿。

「あ、あの……」

三人が古代ポータルを眺めていると、声が聞こえた。

それはつぶやきほどの小声だったが、メイの耳はしっかりと捉える。

「こんにちはっ」

「は、はいっ」

声をかけられたすみれは、緊張に肩を震わせた。

「さ、先ほどは対戦していただいて、ありがとうございました……っ」

「こちらこそ、ありがとうございましたっ!」

深く頭を下げるすみれに、メイも元気よく頭を下げる。

「み、皆さん、すごいコンビネーションで驚きました」

「お二人の強さも、さすがの一言でした」

「本当ね。数で勝ってなかってたら危なかったわ」

「……あ、ありがとうございますっ」

「お姉さんはどうしたの?」

「お姉ちゃんは今、ものすごく悩んでいるみたいです」

「……何を?」

「メイさんがあの【敏捷】と【耐久】なのに、【腕力】まで自分を大きく上回っているのが、どうしても理解できないようで……『分からない分からない』と、のたうち回ってました」

普段は豪快な姉の蘭。

意外と悩み出したら止まらないタイプのようだ。

「なるほどねぇ……お姉さんに伝えておいて」

「は、はいっ」

「考えないようにするのが、一番いいって」

「そうですね。それが一番だと思います」

達観した表情で静かにうなずく二人に、すみれは思わず首を傾げるのだった。

古代遺跡を巡る戦い。

二派に分かれての大クエストはこうして、最高の形で終了を迎えた。

ただ、一つだけ問題があるとすれば――。

「……なあ、そう言えば銀色のメイちゃんってどうなるんだろうな?」

「そりゃ、あのホールからプレイヤーがいなくなったら消えるんじゃないか? 俺たちもクエスト終了時点で来た道をさっさと戻ってきたし、もう消えてるだろ」

「それはそうか……でもそういうことなら一度戦ってみたかったなぁ、記念にさ」

遺跡保存組のプレイヤーはそんなことを話しながら、美しい夜の遺跡都市を見て回る。

だが『銀の雫』は、倒さない限り消えることはない。

動力部前のホールにいた『お宝奪取組』プレイヤーたちを片付けたニセメイは、そのまま遺跡都市ラプラタの奥深くへと去って行った。

よって今この瞬間も、銀色のメイはどこかを徘徊している。

それだけが唯一、遺跡都市ラプラタに残された問題だろう。