作品タイトル不明
363.壊れかけのロボット
「狙い通り、かなり先行できたみたいだね」
ロボット兵をメイたちに差し向けた蘭はそのあと、三つ目のスイッチを捨てて動力部への道を探すことに専念。
遺跡中央部の奥地にいたロボットが隠し階段の場所を探しているのに気づいて、そのまま動力部への道を見つける流れとなった。
「障壁は残ってるけど、あたしらが集中攻撃すりゃすぐに割れるはず。こりゃ今回は余裕かな」
魔法による攻撃をメインにしていない姉妹は、魔力障壁のオフは要らないという判断ができたのも大きい。
フフっ、と笑いをこぼす蘭。
「こっちは人数もかなり多いし、圧倒的に有利だな」
「追ってきても進むにはクエストが必要だし、途中にいるお宝奪取組プレイヤーも立ちはだかることになる。もしうまいこと抜けてきたとしても、その時にはもう動力部は破壊済みだ!」
続くお宝奪取組の面々も、状況の余裕さに盛り上がる。
「遺跡保存組、もう気配すら感じないもんな」
「いけいけー! お宝はいただきだぁ!」
すでに多くのお宝奪取組プレイヤーが動力部へと向かう区画に流れ込み、分散して進んでいる。
大きく先行している上に、数も多い。
お宝奪取組は、まさに圧倒的な有利を得た状態だ。
「さーて、新発見の遺跡都市。お宝は何かなぁ」
早くも宝に思いをはせる蘭。
「……おっと、機械獣の相手は頼んだよ」
「うん」
通路を守るのは、一匹の獅子型機械獣。
この場所を守る門番の中ボスだ。
すみれは鮮やかな鞘の刀に手を伸ばし、機械獣が間合いに入ったのを確認して――。
「【返し飛燕】」
直後、機械獣の背後へと超高速移動。
目にも止まらぬ移動から、振り向き回転で斬り払いを放つ。
すると閃く白刃のエフェクトが機械獣を裂き、一撃で斬り伏せてみせた。
裏回りから、虚を突く形の高速移動攻撃。
速くかつ強力なそのスキルに、後を追うお宝奪取組がため息を吐く。
「こりゃもう余裕っぽいね。とっとと動力部に行って、終わらせちゃおうか」
蘭はそう言って笑い、動力部へ向けてひた走るのだった。
◆
明らかな出遅れに、メイたちは足を急がせる。
ホールに現れたブロック階段を降り、新たな区画を進んでいく。
「……何かしら?」
やや濃い色の石灰色の壁続く通路を遺跡保存組が駆けていると、道が二本に分かれていた。
新たなホールが見える正面の道と、狭い脇道。
そして脇道の先にはドアがある。
「一応調べておきましょうか」
「そうしよう」
保存組の面々も了承。
小走りで脇道を進むと、自動でドアが開いた。
すると各所に置かれた魔法石が照明代わりに輝きだし、その全貌が明らかになる。
「小さな図書館かな?」
メイがつぶやく。
その部屋は石灰色のシンプルな空間にデスクが一つ、あとはひたすらに同色の本棚が続くだけという空間。
広さは体育館の半分くらいといった大きさだ。
「こ、ここは……っ!」
するとそこに、考古学者が駆け込んできた。
そのまま近くの本に手を伸ばすと、中身を見て息を荒くする。
「遺跡や過去についての記述がある……これは研究がはかどるぞ……っ」
そう言って興奮しながら本棚を見て回り、突然ピタリと足を止めた。
「この子は……」
「どうしたのですか?」
ツバメが近寄ってみると、そこには今にも動きが止まりそうなドラム缶型ロボットが倒れていた。
ホコリをかぶったその個体は、植物園にいたものに近い外見をしている。
「この図書館の手伝いロボットに違いない」
「……この子もずっとここで、誰かが来るのを待ち続けていたのでしょうか」
ホコリをそっと払いながら、つぶやくツバメ。
ロボットの目に当たる部分には、今にも消えそうな弱々しい輝き。
そして図書館内にいた面々の視界に現れる、謎のゲージ。
「これってまさか……この子が停止するまでの制限時間!?」
減り出すゲージに、慌ててレンがロボットに駆け寄る。
すると、これ見よがしに胸元に刺さっている魔法石が弱く点滅し始めた。
「魔法石はどこか本棚に置いたはずだが、失念してしまったと書いてある」
考古学者は、デスクに置かれていた古いメモを読んでそう言った。
「なんで本棚に置きっぱなしにしたのよ!」
「とにかく探しましょうっ!」
「よし、俺たちも行くぞ!」
「「「おうっ!」」」
遺跡保存組は、一斉に図書館内へなだれ込んでくる。
そして全員が本棚に向かい、大急ぎで魔法石を探し出す。
人数で決められているのか、ゲージの減少速度はかなり急速だ。
「ない、ない、ない、ないっ!」
「ここにもありませんっ!」
「ここもないぞっ!」
やはり本の数に対して当たりが一つだけというのは厳しく、ロボットのゲージは切れる寸前。
焦り出す、遺跡保存組の面々。
「あった! これだろ!」
すると一人の盗賊が、魔法石を高く掲げた。
「メイっ!!」
「うんっ! 【バンビステップ】!」
ここでメイ、すかさずロボットを抱えて走り出す。
その重さはなかなかのものだが、メイなら問題なし。
「アサシンちゃん、頼むっ!」
「はいっ! 【加速】【リブースト】ッ!」
さらに遺跡保存組の発見者は、ツバメの速さを知っていた。
下手投げで投じられた魔法石を受け取ったツバメは、最高速でメイのもとへ。
ロボット運び中のメイと、即座に合流を果たす。
そして胸元の魔法石を交換。
「「「…………」」」
緊張の瞬間に、思わず遺跡保存組が息を飲む。
すると、ロボットの目に当たる部分がぴかぴかと輝きだし、腕を上下させながらクルクル回り出した。
そして大量に取り出され本たちを見つけて「仕事だ!」と、うれしそうに片づけを始める。
「「「よっしゃあー!!」」」
思わず拳を突き上げる遺跡保存組。
「よかったー!」
「はい、本当に良かったです」
ロボットの元気な姿に、メイとツバメは思わず抱きしめ合う。
「魔法石、一緒に探してくれてありがとうございましたっ!」
「ありがとうございました」
早い判断で図書館内を駆け回った保存組の面々に頭を下げたメイは、「よかったね」とロボットの頭をなでる。
そしてそんなメイの姿に、思わず和む遺跡保存組の面々。
「……やっぱ、遺跡停止はなしだよな」
「なしだなぁ」
「ここの遺跡って、こういうロボットたちがあっちこっちで動いてるんだもんな……」
自然と、そんな言葉がこぼれる。
「ありがとう、助かった。これで遺跡都市研究がはかどりそうだよ。ここには必ず……重要な何かが隠されているはずだ!」
考古学者はさっそく、積まれた本に手当たり次第に手を伸ばしていく。
手伝いロボットもうれしそうに、図書館内を駆け回り出す。
「……少し時間かかっちゃったけど、あらためて動力部を目指しましょうか」
「そうですね……やっぱり、動力部の破壊は防ぎたいです」
「歴史のある遺跡、それを守ってるロボット。これを停止させちゃうって結構恐ろしいクエストだよな……これ」
レンたちの言葉に遺跡保存組もあらためて深くうなずき、同時にロボットも動き出した。
「……どうしたのかな?」
気になったメイは、後を着いていってみる。
するとロボットは、図書館最奥の本棚から一冊本を抜き取った。
沈んでいく本棚。
そして、一本の道が現れた。
「レンちゃん、ツバメちゃん……っ!」
「……なるほどね。こんなところに隠し通路だなんて……ここから進めってことで間違いないでしょうね」
「そうだな、俺たちも続こう」
「ホールも少し気になるけど……この流れで別の道には行けねえよな」
遺跡保存組も、待機している顔ぶれを呼び込んで隠し通路へ。
手を振る図書館ロボットに見送られて、狭い通路を抜けた先では――。
「……足音がたくさん聞こえる」
メイの猫耳が、人の気配を捕えた。
「やったなおい!」
「ああ! これ、絶対距離縮まってるだろ!」
歓喜に拳を握る遺跡保存組。
どうやら、この選択は正解だったようだ。
こうしてメイたちは見事、お宝奪取組との距離を大きく縮めることに成功した。