軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

296.イベントが始まります!

「あはは、いっぱい食べちゃった」

「メイは本当に食べっぱなしだったわねぇ」

夕食後、しばらく和室に倒れ込んでいたさつきを思い出して、レンは笑う。

「すみません……」

ツバメは恥ずかしそうにダガーの柄をいじくり回す。

「あれも食え」「これも食え」とすすめてくるつばめ母と兄は、田舎のお年寄りのようだった。

夢中で食べ続けたさつきは、そのまま幸せそうな顔でダウン。

可憐たちはお茶を飲みつつ、満腹さつきをしばらく突いて遊んだ後、落ち着いたところで『星屑』へと復帰した。

イベントの開始までは、もうわずか。

王都ロマリアの街は、もともと多い人口に加えて各地から集まってきたイベント参加者によって賑わっている。

「今回は何をするイベントになるのかしら」

「以前には騎士ギルド主導で、戴冠式の運営というものがあったそうです」

「王都らしいね! お祭りみたいで楽しそう!」

「その時は、ここぞとばかりに動き出した大盗賊団を捕まえるといった内容のものが最大クエストだったようです」

「やっぱり戦闘の規模は大きくない感じねぇ」

ロマリアのイベントでは大きな戦いが起きたことはあまりなく、とにかく王都で起こる事件に対応するといったものが多い。

「王都イベントは、皆で集まって楽しくクエストこなしてって感じだよな」

「まあ明るく楽しい王都を駆け回るって感じだから、マイペースに遊ぶかぁ」

そのため参加者たちも、肩の力が抜けた雰囲気だ。

メイは街中をマイペースに歩く犬の頭をなでたり、ツバメと一緒に猫の集まりを眺めてみたりと、のんびりと過ごしている。

レンも何やらついばんでいる鳥たちを眺めながら、イベントの開始を待つ。

そして時間は夜9時。

王都イベントの開始時刻だ。

「なにかしら、あれ」

突然、王都中央部の噴水公園に巨大な転移結晶が現れた。

結晶を中心に描かれた魔法陣は強烈な輝きを放ち、付近にいたプレイヤーを陣の外へ強制移動。

NPCもまとめて外部へと移動させた。そして。

「な、なんだあいつ!?」

「デケえ……見たことないモンスターだ!」

参加者たちが一斉に指を差す。

「グルオァァァァァァァァァァ――――ッ!!」

転移結晶から現れたのは、怪獣のような巨大さを誇る二足型ドラゴン。

目を真っ赤に輝かせた濃灰色の巨竜は、辺りかまわず暴れ始めた。

長い尾で付近一帯の建物を弾き飛ばし、店を踏みつぶし、民家を蹴り飛ばす。

教会の塔を腕で叩くと、折れてアイテム店に突き刺さった。

「お、おい、なんだよこれ! 王都が崩壊しちまうぞ!」

転移結晶によって王都南部に集められた参加者たちは慌て出す。

ドラゴンは、その顔をこちらへ向けると――。

「ゴアアアアアアアア――――ッ!!」

「「「うおおおおっ!?」」」

猛烈な炎を吐いた。

慌てて建物の影に隠れて、身を護る参加者たち。

炎は一気に王都の一角を焼き尽くし、建物がボロボロと崩れ落ちていく。

「ツバメちゃん、レンちゃん!」

「ええ」

「やりましょう」

三人は焼け野原になっていく王都を守るため、さっそく動き出そうとするが――。

「動くな!」

そこにやって来たのは、金の装飾を施した銀鎧をまとった兵士たち。

「……王都兵だ」

参加者がつぶやく。

王城はもちろん、王都の主要地帯に配備されている王都兵NPCたちが、列をなしてやって来ていた。

「あのドラゴンには我々が対応する。冒険者たちはおとなしくしているように!」

そう言い放ち、兵長らしき豪華な頭飾りの兵士が剣を掲げた。

そしてその切っ先を、ドラゴンに向けると――。

「魔法隊、撃てぇぇぇぇ――――っ!!」

背後に並んだ魔法兵たちが、一斉に氷の魔法を放つ。

氷弾の嵐を喰らったドラゴンは、わずかに体勢を崩した。

「弓部隊、用意! ……撃てぇぇぇぇ――――っ!!」

続く無数の矢は、ドラゴンにぶつかると次々に小爆発を起こす。

王都兵たちの怒涛の攻撃に、いよいよドラゴンが足をふらつかせる。

するとそこに、ゆっくりとやって来た巨大なバリスタ。

大きな矢の先には、両手で抱えるほどの結晶が取り付けられている。

「今だー! 放てーっ!!」

指示と共に放たれた矢はドラゴンの足元に刺さり、魔法陣を展開する。

転移結晶が輝きと共に発動し、暴れるドラゴンをどこかへと消し去った。

「帰還する!」

見事に廃墟と化した、王都の一部。

王都兵はそれを気にすることもなく、帰投を開始する。

「……なんだったんだ? これもイベントか?」

「それなら俺たちも、あのドラゴンと戦うのが普通なんじゃないの?」

疑問を口にする参加者たち。

『――――王都ロマリアは、突然の巨竜襲来によって大きく損傷してしまいました』

ここで、運営のアナウンスが流れだした。

『――――それではただいまより、イベント『王都大改修!』を開始します!』

「おおおー! そういうことか!」

「なるほど! そのための演出だったんだな!」

ド派手な演出に、盛り上がる参加者たち。

「オープニングだったのですね」

「この壊れちゃった街を、皆で直していくんだね!」

ツバメとメイも感心する。

「……でも、あのドラゴンはどういう経緯で出てきたのかしら」

「この『大改修イベント』の、演出のためのものではないでしょうか」

「そこは突っ込むところじゃないって感じかしらね……」

大きなイベントは、大きなきっかけから始めたい。

そして「どうして壊れたか」が派手で分かりやすい方が、『大改修』を始めようという気になれる。

そんなふうに考えて、レンは納得することにした。

「そういうことなら、現地に行ってみましょうか」

「うんっ!」

「いきましょう!」

そしてメイたちはさっそく、ボロボロになった王都中央部へ向けて駆け出していくのだった。