軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

275.アサシンと錬金術師

長くふわふわな桃髪に、長い黒のローブ。

錬金術師なーにゃが狙いをつけたのは、ツバメだった。

立ちふさがる二体のホムンクルスは、どちらも女性型。

黒の戦闘用ドレスを着た短い白髪のアルカナと、白の戦闘用ドレスを着た黒い長髪のヘルメス。

「二体のドールを同時に使う方は、初めて見ました」

美麗なホムンクルスを前に、つぶやくツバメ。

「そうなのですよ! どうしても一体だけでは我慢ができず、寝る間も惜しんで生み出したのがこの子たちなのですな!」

なーにゃは目を輝かせ出す。

「どうせなら二体であることに意味を持たせつつ、見た目にもメリハリを持たせたいと考えて、正反対のモノトーンという形で髪型から衣装までこだわり抜いて――」

息も荒く早口でそう説明したところで止まる。

「おっと、申し訳ないですな。ホムンクルスのこととなると話が止まらなくなってしまうのですよ」

なーにゃは「たはは」と苦笑いを浮かべた。

「いえ、これだけの雰囲気を持つドールは初めて見ました」

ツバメは単純な感想を口にする。

「自慢の子たちなのでございますよ!」

なーにゃは、それはもううれしそうにハッキリと言い放った。そして。

「それでは……出来立てのコンビネーションをぜひともご賞味くださいな!」

その言葉を合図に、動き出すドールたち。

「【加速】」

しかし先手を打ったのはツバメだった。

早い移動で三者の懐に入り込み、スキルを発動する。

「【四連剣舞】」

「ヘルメスちゃん! 守りを!」

二等辺三角形の純黒盾を持ったヘルメスが、早い動きで前に出る。

「【イージス】」

弾けるようなエフェクトが舞い、ツバメとヘルメスが弾かれる。

「アルカナちゃん! 【ソニックアサルト】!」

ガードスキルによる硬直下にあるツバメに、白の槍を持ったアルカナが接近。

高速の突きを放つ。

「ッ!!」

これをギリギリ足の動き一つでかわす。

「【ラウンド】!」

「くっ!!」

しかしそこからの回転撃を喰らい、ツバメは地面を転がった。

ダメージは軽く、1割ほど。

「ここでさらなるコンビネーションを披露させていただきましょうぞ! アルカナちゃん、ヘルメスちゃん、連撃モード!」

「ッ!!」

すぐさま動き出す二体のドール。

意外にも、先手を打ってきたのは守りのヘルメス。

「【シールドバスター】」

「【加速】!」

盾の大きな振り回しを、後方への移動で回避する。

するとヘルメスの後ろから飛び出してきたアルカナが、刺突を放ってきた。

これを身体の傾け一つで回避。

「【加速】!」

続く振り回しを、後方への退避でかわす。

「【ソニックスピア】」

「【リブースト】」

追ってくる高速移動突きを横軸への高速切り返しで回避し、ツバメは反撃を狙う。

「電光石――」

「【ライジングシールド】」

「ッ!!」

そこに飛び込んできたのは、砂煙をあげて迫るヘルメスの突撃シールドアッパー。

ツバメはこれも、しゃがみで回避してみせた。

生まれた隙。

手前のヘルメスが硬直しているうちにダメージを奪おうと動き出す。しかし。

「アルカナちゃん! 【刺遠】!」

ヘルメスの背後にいたアルカナが、槍を突き出した。

「な、あっ……!?」

ヘルメスを通過して現れた刺突エフェクトが、ツバメに突き刺さる。

その一撃は、ヘルメスの身体と盾で隠されほとんど視認不可能。

残りHPは7割ほどまで減少した。

「攻守どちらでも、二体のドールが交互にスキルを放つことで、片方のクールタイムをもう片方が補うというわけですね」

理論的には延々と攻撃を続けられるコンビネーションだ。

「その通りでございますな」

素直に感心するツバメに、ドヤァとうれしそうにするなーにゃ。

「やっぱ一方的だな」

「トップの錬金術師は、こんな戦い方ができるのか……」

なーにゃとの戦いは、常に二対一。

作り込まれたホムンクルスの連携に、感嘆の息を吐く観戦者たち。

「共に隙を消し合うコンビネーション……これは大変です」

ツバメはここで、『防具』を変更。

「それでは、これならどうでしょう【加速】」

「ッ!?」

すぐに指示を出そうと身構えたなーにゃが、そのまま硬直する。

一歩目を蹴り出したツバメの姿が、かき消えた。

そして次の瞬間再び現れたツバメが、指示を待つヘルメスに斬撃を叩き込む。

「【リブースト】」

「ヘルメスちゃん! ――なっ!?」

そしてまた、指示を出そうとしたところで姿を消す。

【暗転のブーツ】は高速移動スキルの移動中、姿が見えなくなるという変則装備。

動きの軌道はそのまま、当たり判定も残っているが、『どこに向けて移動するのか』が分からない。

移動先が読めなければ、全てが後手になる。

次にツバメが現れたのは、アルカナの右側部。

斬撃を二発叩き込み、反撃の振り降ろしを足の動き一つでかわして【加速】

再びヘルメスのもとへ。

「ヘルメスちゃん! 【イージス】!」

「【アクアエッジ】【四連剣舞】!」

慌てて叫ぶなーにゃだが、放ったのは裏をかいた水刃。

【イージス】は攻撃を打ち消すが、弾かれたのはヘルメスと『水刃』のみ。

「【加速】【リブースト】」

ツバメは同一方向への【加速】によって一瞬で距離を詰め、ダガーによる突きを決める。

「ヘルメスちゃん! 【シールドバスター】!」

硬直が解けたヘルメスは、なーにゃの指示通り黒盾を振りに行くが――。

「【電光石火】」

高速の切り抜けで後方へ回り、盾の叩きつけをかわされた直後のヘルメスに斬撃を決めた。

「二対一でも追い切れないとは……っ。【物質変換】――――フレアメタル!」

一変した状況に、なーにゃは錬金術スキル【物質変換】を使用。

ドール達の持つ装備が、大きくその『仕様』を変える。

「アルカナちゃん、ヘルメスちゃん! 攻めるのですよっ!」

守りに入っては、瞬間移動の様な暗転攻撃に削られる一方になる。

そう踏んだなーにゃは、一転攻勢に出た。

「ッ!!」

白槍の三連突きが、熱閃を巻き起こす。

通常の連撃も範囲を広げ、普通の回避ではHPを削られてしまうほどの威力になった。

続く振り回しに、さらにダメージを奪われる。

「【加速】! ッ!?」

下がるツバメの懐に、ヘルメスが飛び込んでくる。

「【シールドバスター】」

「なっ!?」

叩きつけた盾が巻き起こす熱風。

直撃は避けたものの、思わず足をふらつかせたツバメに向けてアルカナが槍を引く。

「【熱光千里】」

放たれた一撃は、文字通り長い距離を駆け抜ける貫通刺突。

「うああっ!」

閃熱が肩をかすめ、ツバメのHPは5割を切った。

「さすがの連携……ですが……っ」

【加速】の発動と同時に、ツバメの姿が消える。

現れた先はアルカナの目前。

「アルカナちゃん!」

「【リブースト】」

攻撃せずに即時移動。

「ヘルメスちゃん! 【シールドバスター】!」

ヘルメスの目前に現れたツバメに、慌ててなーにゃが指示を出す。

しかしツバメはここでもまだ、直接攻撃を行わない。

大雑把な盾の振り回しを直前まで引き付けたところで【加速】

「【アクアエッジ】!」

ヘルメスの後方へと回り込んだツバメは、盾の振り回しが空を切ったところで水刃を叩き込む。

「【電光石火】」

さらに駆け抜ける一撃を決め、ここで武器を変更。

だがこの動作のおかげで、ヘルメスは体勢を立て直すことに成功した。

「【イージス】ッ!!」

「【サクリファイス】――――【雷光閃花】!」

生贄にしたHPは、残りのほぼ全て。

足元から火花を散らしながら迫る、ツバメの必殺の一撃。

対してきっちりタイミングを合わせて防御スキルを発動し、安堵の息をつくなーにゃ。

しかしツバメのダガーは黒盾を貫いて刺さり、猛烈な勢いで火花を上げる。

「どうして……っ?」

【デッドライン】は、特殊防御を無効化して貫く特殊武器。

愕然とするなーにゃの目前で、ヘルメスが爆発する。

【サクリファイス】の効果が乗った一撃は、ギリギリでHPを削り切った。

「アルカナちゃん! 【ホワイトファング】!」

しかし、片方に意識を持っていかれればもう片方に隙を突かれるのがこの戦い。

放たれた白の熱閃突きは、短い距離だが超高火力の貫通撃。

駆ける杭の様な熱閃が、残りHPのないツバメの背中を容赦なく刺し貫いた。

必殺の一撃に倒れ込むツバメを見て、今度こそ息をつくなーにゃ。

「それは――――残像です」

「ッ!?」

聞こえた声、消えていく残像。

「【加速】」

暗転によって突然、ツバメがアルカナの目前に現れた。

左右のダガーで連撃を入れると、再び【加速】で姿を消す。

かと思いきや【電光石火】で引き返してきて、さらに斬撃を加えた。

アルカナが振り向いたところで【加速】

放たれた突きを後方移動でかわし、すぐさま【リブースト】で舞い戻って攻撃。

「アルカナちゃん! 【回転斬り】!!」

振り払いは、跳弾の様な動きをするツバメの移動攻撃に対して有効だ。

そう判断したなーにゃの指示によって放たれる適切な一撃。しかし。

「【跳躍】」

ふわりとしたジャンプは、振り払いを軽々と越えていく。

ダガーによる振り下ろしを肩口に決めたツバメは、着地直後に【加速】

またもその姿を消す。

「【リブースト】」

V字移動。次に現れたのはアルカナの背後だった。

「――――【アサシンピアス】」

最後は首元にダガーの一撃。

アルカナはHPを全て失い、その場に倒れ伏した。

「「「…………」」」

なーにゃはもちろん、観戦者たちまでもが無言。

消えては現れ、斬ってはまた消える戦い方に、誰もが翻弄されっぱなしだった。

「負けて……しまいましたな」

しばらく呆然としていたなーにゃは、思い出したかのように敗北を宣言。

無念そうに息をついた。

小さな肩を落とす姿に、ツバメはどう声をかけていいか悩むが――。

「でも……」

なーにゃの目は、輝いていた。

「小さく可愛い女の子が高速アサシンとして飛び回るのというは良きですな……!」

「……え?」

「対になるアルカナちゃんとヘルメスちゃんの間に立つ、早い動きの可愛いアサシン! 想像するだけで最高でございますなっ!」

新たな構想が生まれて、はしゃぎ出すなーにゃ。

「…………」

切り替えの早すぎるマイペース錬金術師に、ツバメは思わず感心してしまうのだった。