作品タイトル不明
228.帰ってきました!
王宮に戻ってきたメイたちはさっそく、宮殿前の噴水広場で歓迎を受けた。
「皆様のお力で、ルナイルに平和がおとずれました」
ネフェルティアが、そう言ってかすかにほほ笑む。
「貴方たちがいなければ、今ごろルナイルはアサシン教団の手に落ちていたでしょう」
ザーラがうやうやしく頭を下げると、鳴り出すファンファーレ。
ネフェルティアとザーラを中心に、集まったルナイル王宮の関係者たちが三人を拍手で迎える。
「こんな派手なエンディングパートもあるのね」
「少し照れてしまいます」
一つのクエストの終わりを見ようと集まってくる、観光プレイヤーたち。
「新ピラミッド、やっぱりクエストもあったんだな」
「あれって噂のメイちゃんたちだろ?」
「よく見つけたなぁ……こんな規模の隠しクエスト」
そしてネフェルティアは、メイに一本のカギを手渡した。
「王宮地下の宝物庫のカギです。ささやかですが、ルナイルからのお礼の品を用意させていただきました」
「ありがとうございますっ!」
ぺこっと元気よく頭を下げるメイ。
「皆さまはルナイルの英雄です。いつでも遊びに来てください」
「はいっ!」
三人は楽しそうに笑い合い、メイはブンブンと尻尾を揺らすのだった。
◆
三人はいつもの港町ラフテリアで、待ち合わせをしていた。
すっかり見慣れた海の輝きも、砂漠から帰ってきて見るとどこか新鮮に映る。
「本当に、待ち合わせ時間通りにならないわねぇ」
大体15分前には集まってしまうメイたち。
今回も見事に、30分前に全員集合した。
「いやー、皆に会えるのが待ちきれなくて」
メイは「てへへ」と笑う。
「ツバメに至っては、1時間2時間は当たり前のように先に来ているものね」
「待っている時間に、身体を温めています」
実はレンもその辺りは変わらないため、つい苦笑いを浮かべる。
「さて、今回も見事にメイは運営の出してる広報誌の表紙になっていたわけだけど」
「うっ……今回はどんな感じになってたの?」
レンが取り出したのは、運営が出している広報誌。
ここ最近は可愛い野生児の登場によって読者も増え、その効果でプレイヤー自体も増えている。
そのため本人こそ実感がないものの、現在の『星屑』の顔になっている部分すらある。
「い、意外とおしゃれなメガネでコーヒーを手にしてる姿だったり……」
「そんな写真撮ったのですか?」
「……撮っておりません」
耳を垂らしながら白状するメイ。
「はい、今回もしっかりメイ最大の活躍の瞬間をとらえてるわ」
「わあーっ! やっぱりー!」
それは古き悪王の【黒星落下】を【魔断の棍棒】で打ち返した瞬間のメイの姿。
表紙には大きく『炸裂! 野性のフルスイング!!』と書かれている。
今回は新ピラミッドの登場に、盛り上がったゴールドラッシュ。
アサシン教団などの情報を求める声も多く、これまで以上に読者も多かった。
『星屑』史上初めて見る、とんでもない魔法。
そんなとんでもない魔法を、棍棒で打ち返すメイ。
その画だけでも話題になる、渾身の表紙と言える。
「バットならスポーツっぽくなるけど……木製の棍棒だものね」
「こんなに可愛いのに、だからこそ目が離せない迫力があります」
武骨な作りの棍棒は、トロルの専用武器と言われても何ら違和感がない。
獣耳姿で石器時代的なアイテムを豪快にフルスイングする絵は、最高に格好よく、最高に野性的だ。
運営は古き悪王の完全体を、高レベルプレイヤーたちが挑んでも挑んでもなかなか勝てない大ボスにするつもりだった。
結果として登場と同時にメイに打倒されてしまったが、その戦いを特集することでむしろゲーム自体は盛り上がっているのだった。
「っ!」
文句なしの野生表紙、そして『獣人化』の呪いにかかっていた時の姿まで載っていて思わず頭を抱えるメイ。
「今回は古き悪王についてまで、結構しっかり特集してるわね」
「考えてみれば、7年以上隠れていたクエストですし、ルナイル王家とのつながりもダンスゲームで劇場の支配人に認められるところからでしたね」
「……楽しかったなぁ」
ルナイル特集を読みながら、ほほ笑むメイ。
中にはアルトリッテと二人、剣を掲げる姿も載っている。
「ここまでしっかりと他パーティと協力しての冒険も、初めてだったものね」
「アルトリッテさんたちとは、またご一緒したいです」
「そうだねぇ」
「さて、今日はどこに行く? イベントに参加するも良し、まだ行ったことのない地方に行くも良し」
「どこでもまた、楽しくなりますね」
「どこがいいかなあ! 今日も楽しみだよーっ!」
砂漠とピラミッドの冒険を終えた三人。
陽光輝く港町で、メイは今日も尻尾をブンブン振りながら仲間たちに笑顔を向けた。