軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

212.呪いの効果

「ついにこの時が……っ」

犬の獣人と化したメイが震え出す。

アサシンの発動させたピラミッドの呪いによって、全員が獣人になってしまった。

「野生が……野生が……っ」

自身の姿に、あわあわと震えるメイ。

「まあこの場合、私は黒猫になるわよね……」

しっかり黒を押さえてくる呪いに、息をつくレン。

「な、何と可愛い姿なのでしょう……」

そんなメイやレンを見て、歓喜するウサギ姿のツバメ。

「なぜ私がタヌキなのだー!?」

「……女狐になってしまった」

そしてアルトリッテはタヌキ、マリーカはキツネになっていた。

「獣人化の呪いが姿の変更だけとは思えないし、何か意図があると思うんだけど……」

「む、武器が持てないぞ!」

「……これはやっかいな呪い」

「動物化して、何かを握れない感じになってるわけね」

ゲームらしい呪いの掛かり方に感心するレン。

そうなれば当然、戦い方にも変化が出てくるはずだ。

「も、もしかして、ずっとこのままなのかな」

もはや野生そのものになっていて、気が気じゃないメイ。

「多分ピラミッドを出れば戻ると思うわ。もしくはこの先に進んだ先で呪いを解く形ね。まあこうなった以上、アサシンの後を追う形になるでしょうけど……」

「それなら先に進みましょう! 絶対にこの姿で人前には出られませんっ!」

それを聞いて、メイはがぜんやる気を出す。

「メイは耳と尻尾が重複するバグがなくてよかったわね」

「結果として犬になるのも、なんだかおもしろいです」

そこはかとなく白い柴犬感が出ているメイに、ほほ笑むレンとツバメ。

どうやら獣人化に合わない装備品は、装備状態のまま不可視化しているようだ。

アサシンの後を追って呪いの部屋を出ると、そこは流砂の部屋。

高さ約1メートル間隔で壁に突き刺さっている石板を登って、上階へ進む形式になっている。

「【ペガサス】!」

アルトリッテの【天馬靴】から生える、光の翼。

地上を滑るような動きで進み、そのまま跳躍。

華麗な動きで一気に5段目の足場に飛び乗った。しかし。

「む!」

悪い足場、武器を持たないアルトリッテに迫るコウモリたち。

アルトリッテは肉球の手を振り回すが、リーチの短さと一撃ではギリギリ落ちない敵の体力がいやらしい。

「武器がないとやっかいだな、頼むぞマリーカ!」

「……【霊鳥】」

スキルを発動すると、マリーカの手に止まった光の小鳥たちが飛来。

まとわり付いていたコウモリたちを弾き飛ばした。

「マリーカ、つかまれ」

手を伸ばし、アルトリッテはマリーカを引っ張り上げる。

どうやらマリーカの方は、移動手段に欠けるようだ。

「【加速】【跳躍】【紫電】」

「【連続魔法】【ファイアボルト】」

ツバメとレンも二人のあとに続く。

こちらはツバメがまとめて雷光で動きを止め、レンが炎弾で打ち倒すといった形だ。

「……移動力に乏しい魔法使いにはアスレチック、近接職には武器がない。なかなか難しい」

「確かにそうね。獣人化は苦しい仕様だわ……本来なら」

マリーカの言葉に応えつつ、レンはメイを見る。

「【モンキークライム】! からの【キャットパンチ】! パンチパンチパンチ!」

素手では数発叩かないと倒せないはずのコウモリを次々倒しながら足場をポンポン跳び上がり、天辺にたどり着いたメイはくるっと振り返った。

「道、開けておきましたっ!」

あっさり最上段にたどり着き、ブンブンと手を振ってみせる。

「メイはむしろ、ものすごくしっくりくるわね」

獣人は「こう動きそう」をこれ以上ない形で再現するメイに、目を奪われる四人。

「ですがあれは、キャットパンチというよりドッグパンチ……というよりも」

「……お手」

「お手だ」

もはや飼い主を弾き飛ばす勢いのお手にしか見えないアルトリッテ達。

「ふ、普段はおしゃれなコーヒーを片手にメガネをクイっとさせてるお姉さん……に憧れてる普通の女の子なんですよ?」

そんな感想を聞いて、思わず冷や汗をかくメイだった。

「でもこのままだと不便だし、普通の敵も大変だから協力した方が良さそうね。どうかしら?」

たどり着いた部屋の頂上。

レンはアルトリッテ達に問いかける。

「聖騎士アルトリッテ、助力を求められられた以上は全力で貢献しようではないか!」

アルトリッテはそう言って胸を張った。

「……それが賢い選択」

マリーカも静かにそう言ってうなずいた。

「王墓の最深を目指すライバルとはいえ、ここは聖騎士アルトリッテに任せて――――ぬはーっ!」

いきなり真後ろから出てきた生き残りコウモリに、素直に悲鳴をあげるアルトリッテ。

「……【霊鳥】」

すぐにマリーカが魔法でフォローする。

「と、とにかく、このアルトリッテがいる以上、大船に乗ったつもりで――――ぬはーっ!」

「……【霊鳥】」

「信じられない速度で前フリを回収していくわね……」

「……いつものこと」

「いつもではなーいっ!」

こうして新ピラミッドで呪いを受けた五人は、獣人姿のまま共に進むことになったのだった。