軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

206.打倒ミイラ神官

包帯に隠された目の輝きが、赤に変わる。

残り6割ほどになったHPゲージ。

神官ミイラは黒銀の輪が付いた杖を、高く掲げた。

「魔法陣が天井にもっ!」

「これは結構大変ね……っ」

魔力光を放出する無数の魔法陣が、足元に続いて天井にも広がっていく。

「きます!」

ツバメの言葉に応えるように、始まる魔力光の噴出攻撃。

攻撃頻度は近距離ほど多いため、前衛組はとにかく回避に追われる。

これまでの範囲攻撃、追跡攻撃ではなくランダムの高速噴出だ。

「同時に天井も見ないといけないというのは……やっかいですね……っ!」

それでも回避に集中することでダメージを避けていると、神官ミイラは再び杖を掲げた。

天井そして地面の魔法陣が一斉に輝きだし、魔力光を吐き出し始める。

「【加速】!」

「【バンビステップ】!」

ツバメは飛び込むようにして安全圏へ。

対して、一発で回避して見せたメイは――。

「【ソードバッシュ】!」

駆ける衝撃波で反撃を狙う。

神官ミイラは【ブースト】でこれを回避するが、肩口をかすめ1割ほどHPを減らした。

フラつきながらも、杖を掲げる神官ミイラ。

地上の魔法陣が、一斉に輝き出す。

これを前衛二人はすぐさま退避。

すると、わずかに遅れて天井の魔法陣が輝き出す。

「時間差っ!? 【加速】ッ!」

「【バンビステップ】!」

まだ地面から噴出した魔力の粒子が残るうちの回避。

「ッ!!」

天井から降り注ぐ魔力光をギリギリのところで回避するが、ツバメはわずかに行き過ぎる。

噴出に弾かれる形になったツバメは、4割ほどHPを削られた。

神官ミイラは追撃を仕掛けにくる。

起き上がったばかりのツバメに直進の【ブースト】で距離を詰め、さらに――。

【リブースト】を使うことで文字通り再加速。

「なっ!?」

「同一方向への二段階加速は、スピード自体が上がるのっ!?」

レンは思わず驚嘆する。

一瞬で目の前に来た神官ミイラの杖降り下ろしが、ツバメを捉えた。

さらに3割HPが減少。

「ツバメちゃんっ!」

そして再び始まる、魔法陣からのランダム魔力光噴出。

「……そういうことならっ! 【装備変更】!」

メイはここで頭装備を【鹿角】に変更。

「【裸足の女神】!」

移動速度を上げる装備とスキルで飛び出して行く。

上下からくる怒涛の魔力光攻撃ですら、その俊敏さと反応の前には遅れ出す。

全てを踊るようにかわし、メイは一気に距離を詰める。

「それーっ!」

【ブースト】でメイの攻撃をかわした神官ミイラは、【リブースト】でまさかのとんぼ返り。

輝く杖の薙ぎ払いを仕掛ける。

「よいしょっ!」

これをバックステップで避ける。

すると神官ミイラは再び【ブースト】を発動し【リブースト】で超加速。

目にもとまらぬ速さで迫る、二度目の薙ぎ払い。

これをしゃがんで回避したメイは、続く十文字の振り降ろしに――。

「待ってましたあっ! とっつげきー!」

神官ミイラの近接攻撃が横と縦、もしくはその組み合わせの十文字であることは判明済み。

メイはここに角パリィを合わせてみせた。

大きく弾かれ合う両者。

しかし体勢の回復は、当然メイの方が早い。

「【バンビステップ】!」

高速【バンビステップ】ですぐさま距離を詰めたメイは――。

「【フルスイング】!!」

叩き込む豪快な一撃で、そのHPを消し飛ばす。

「ちょっとだけ残った!」

「最終奥義を使うために、最後に1HP残るスキルを積ませてあるんだわ!」

レンの予想は正解。

【リブースト】で逃げるように距離を取った神官ミイラは、これ見よがしに杖を掲げる。

これまでよりも強い輝きが先端に灯り、無数の魔法陣が一斉に光り出す。

そして、開放。

ランダムの魔力噴出は、猛烈な光の嵐を巻き起こす。

「と、とんでもない勢いね……っ!」

正解はレンのように、噴出の数が減る後方へ退避し回避に集中することだ。しかし。

「…………いけそう」

噴出を始めた魔力光の勢いを前に、メイがつぶやいた。

「【バンビステップ】!」

【鹿角】に【裸足の女神】状態のメイは、猛烈な勢いで噴出する魔力光をかわして突き進む。

細かな脚の運びで、数センチ数ミリの距離を間違えることもなく。

「すごい……」

驚異の回避劇場に、思わすつぶやくレン。

そして見事、魔力放出の範囲を抜けたところで――。

「えーいっ!」

降り下ろす剣。

これを神官ミイラは【ブースト】で回避した。

「【ソードバッシュ】!」

追いかけてくる衝撃波をさらに【リブースト】で回避したところでメイは停止。

「それでは最後、よろしくおねがいしますっ!」

「はいっ」

直撃を喰らえば即死。

決死の覚悟で魔力光乱舞を回避していたツバメが、【リブースト】終わりの神官ミイラのもとへ駆けこんでいく。

「【電光石火】!」

放つ高速の斬撃。

残った最後の1ドットを、キッチリと削り切った。

「ツバメちゃんナイスーっ!」

「メイさんのお陰です」

二人は軽快にハイタッチを決める。

消えていく神官ミイラ。

その後に残ったのは、革表紙のスクロールだった。

【リブースト】:高速移動スキルを2連続発動することが可能。同一方向への加速はその速度を上昇させる。

「これ、神官ミイラが使ってた移動スキルよね? 高速移動での切り返しに使えるし、同一方向なら相当早くなるって感じだったけど……回避と攻撃が一気に強化されるわね」

「ツバメちゃんがあの動きをするんだね……カッコイイだろうなぁ」

「それにこれ……【リブースト】って名前だけど、【加速】を二度使った後に【電光石火】もつなげない?」

「……っ」

レンの予想に、ツバメが息をのむ。

そうなれば、最高三段階の高速移動から斬撃につなぐことが可能になる。

「夢が広がります……」

新たなピラミッドで手にした、最初の宝。

攻防どちらも大きく強化されそうな新スキルに、思わずワクワクする三人なのだった。