作品タイトル不明
199.打倒サンドワームです!
HPが半分を切り、サンドワームの色があせた黄色から赤みを帯び始める。
メイに砂漠での主導権を握られた『ヌシ』は、その本領を発揮。
「足元が……っ」
ツバメが驚きの声を上げる。
見れば付近一帯の砂が動き出し、流砂を生み出した。
「マズいわね。明らかに動きが遅くなってる」
地形効果。
砂に足を取られ、思うように動けない。
対してサンドワームは自由自在。
メイですら砂に足を取られる中、一気にその距離を詰めてくる。
「うわっ!」
これまでの反撃とばかりに、先頭にいるメイを狙っての喰らい付き。
「うわっ! うわわっ!」
メイは【バンビステップ】で必死の回避を続ける。
この流砂は、そのまま流されて渦の中心へ捉えられてしまえば『それまで』という厳しい仕掛けになっている。
「【誘導弾】【連続魔法】【フリーズボルト】!」
メイへの攻撃で生まれた隙を突き、早い魔法でHPを削る。
しかし減りは芳しくなく、サンドワームは勢いを落とさない。
連続の喰らい付きから、そのまま大きく身体をのけ反らせる。
「くるっ!」
吐き出される砂嵐。
足場が重くなったことで、ツバメとレンはさらに回避に集中させられることになる。
「ッ! これは……厳しいわね」
直撃はどうにか避けたものの、やはりダメージは受けてしまう。
砂による広い攻撃範囲は、とにかく強力だ。
「何か有効な魔法とか武器、突くべき死角があるんだろうけど……」
サンドワームのやっかいさにも、必ず有効な反撃ポイントがあるはずだとレンは考える。
足元は流砂、こっちの魔法攻撃は砂中に潜って回避。
ならば、どういう位置からの攻撃が有効なのか。
「うわっととと!」
喰らい付きに砂の砲弾、そして飛び掛かり。
怒涛の攻勢に、回避を続けるメイ。
それでも砂上を軽やかに舞う姿を見て、レンは不意に思う。
「舞う……?」
少なくとも従魔士がいれば、空中から竜をけしかけたり、一緒に攻撃を仕掛けることもできる。
地上戦ではやっかいなサンドワームも、死角になるであろう空中からの攻撃に対処できるようには思えない。
「メイ! ケツァールを呼んでみて! クマの時は道を塞ぐのに、クジラは海での移動に使えたわ! それってもしかしたら!」
レンの言葉にハッとする。
「そういうことかあっ!」
メイはさっそく右手を突き上げて【召喚の指輪】を起動。
「それでは――――何卒よろしくお願いいたします!」
砂漠の中空に現れる魔法陣。
そこから飛び出してきたのは、彩色の巨鳥。
「おーい! こっちだよー!」
大きく手を振ると、ケツァールは狙い通りメイのもとに滑空してきた。
「【ラビットジャンプ】!」
すぐさま跳躍スキルを発動し、ケツァールの背に飛び乗る。
こうなってしまえば、もう流砂は関係ない。
メイはケツァールの背に乗って、そのまま空を行く。
「ここは私が! 【加速】!」
足元に気を使いながら、オトリになるツバメ。
「【加速】ッ! 【跳躍】ッ!!」
暴れ狂うサンドワームの喰らい付きを、ギリギリまで引き付けることでどうにかかわす。
そして二連続での回避を成功させたところで――。
「それー!」
ケツァールと共に滑空してきたメイが、剣で一撃加える。
そのままメイは、ケツァールと共に大きく旋回。
体勢を立て直したツバメが、再びサンドワームの攻撃をかわしたところで。
「もう一回!」
続けざまにもう一撃叩き込んだ。
「メイさん、次で決めましょう!」
「りょうかいですっ!」
サンドワームは、大きな跳躍でツバメに飛び掛かってきた。
「ッ!! 【加速】!!」
慌てて回避にいくが、避け切れない。
足元の悪さと敵の巨体という悪条件に負け、そのまま喰いつかれた。
「ですが、それは残像です」
数メートル先に現れた本物のツバメが、生まれた隙を突く。
「【アクアエッジ】【四連剣舞】!」
放った四連の水刃で、サンドワームを斬りつける。
「【誘導弾】【フリーズブラスト】!」
そこにすかさず飛んで来た氷結の魔法が、わずかな凍結を生み出した。
「今です! 【跳躍】!」
「今よ! 【浮遊】!」
ツバメとレンは、場を開けるように距離を取る。
「おまかせくださいっ!」
「……え?」
「メイさん?」
返事をしたメイの『高度』に、唖然とするレンとツバメ。
すでに遥か高く上空にいたメイは、ケツァールの背で剣を掲げると――――そのまま落下。
「いっくよー!」
猛烈な勢いで落ちてくると、氷結状態のサンドワームにそのまま剣を叩きつける。
「ダイビング……【ソードバッシュ】だああああ――――ッ!!」
付近の砂を一気に巻き上げる、強烈な一撃。
「「うわっ!」」
距離を取っていたレンとツバメが尻もちをつくほどの一撃が、見事一発でサンドワームを粒子に変えた。
「……す、すごいわね。ジャンプからの攻撃はまだしも、上空からってとんでもないわ」
「驚きました……」
見ればメイの着地した箇所を中心に、大きなクレーターができていた。
放たれた流星のような一撃に、あらためてメイのすさまじさを知るレンたちだった。