作品タイトル不明
197.砂漠を進みます!
「どこまでも砂漠だねぇ」
「太陽がさんさんで心地いいわね」
「ラクダで移動する経験なんて、なかなかありません」
遠くピラミッドを望みながら、ルナイル砂漠を行く三人。
ルナイル国の姫を助けたことで与えられた【王家のラクダ】に乗って、のんびりと進む。
「あっ、オアシスが見えるよー!」
そんな中、広大な砂漠の中に輝く青い光をメイが見つけた。
「オアシスは蜃気楼が多く、本物には意外とたどり着かないらしいです」
ツバメの見た情報では、見えるオアシスは蜃気楼ばかりで本物にはなかなかたどり着かないらしい。
「蜃気楼かぁ……行ってみようよ!」
「いいわね。本物でもよし、偽物でも楽しそうだわ」
こうして三人は、オアシスに立ち寄ることを決定。
「あれ、どこに行くのー?」
すると王家のラクダは、見えているオアシスを避けるように進み、その先へ。
そこに見えたのは、また別のオアシスだ。
「またオアシスだー」
三人はそのまま、新たに見えたオアシスにたどり着く。
「……消えないわね。蜃気楼じゃなくていきなり本物にたどり着いたのかしら」
「本物にたどり着く確率は、1/10と聞きましたが……」
「【王家のラクダ】は、本物のオアシスに向かう特性があるのかもね」
「おおーっ! すごいねぇ」
ヤシの並ぶオアシス。
無表情なラクダに、メイは笑顔でポンポンふれる。
「それーっ!」
メイはさっそくその澄んだ水をすくい上げて遊ぶ。
この『威力』にも腕力値が関わっているのか、スコール並みの水しぶきが上がり驚くツバメ。
「あれ、ヤシの樹の下に商人さんがいるよ」
「本当ね。何を売ってるのかしら」
レンはさっそく商人らしきNPCのもとへ。
「本物のオアシスにたどり着くとは運がいい冒険者たち。こいつを買わないか?」
そう言って取り出したのは、一枚の大きな鱗。
「これを使えば泳ぎの能力が上がり、どんなに下手なヤツでも自在に泳げるようになる」
泳ぎには補正がかかるため、誰でもそれなりに楽しむことができる。
よってレンは、このアイテムを『補正を強める』ものだと予測した。
「いくらなの?」
「150万だ」
「高すぎでしょ……」
自在に泳げる。
戦闘に変化を与えるわけではないのに、強気すぎる価格付け。
かなりコレクション要素の強いアイテムだ。
「……ただ」
稀にしか着かないオアシスに、この価格のアイテムが置かれていることが無意味なのかどうか。
「そう考えると何かありそうだけど……メイ」
「なーに?」
「オアシスを少し泳いでみてもらえる? 何かありそうな気がするの」
「りょうかいですっ! あの金色の魚を追ってみるね!」
「金色の魚?」
「オアシスの中を金の魚が泳いでるんだよ」
「……絶対何かあるわねそれ。メイ、その子を追ってみて」
「おまかせくださいっ! 【ラビットジャンプ】!」
メイは大きな跳躍で水中へ飛び込むと、スキルを発動。
「【ドルフィンスイム】」
泳ぎを強化して、さっそく金色の魚を追う。
水は透明で、入り込む日差しが視界を明るく保ってくれている。
輝く金の魚は、まるでメイを誘うようにオアシスの底へと逃げていく。
「負けないよーっ!」
本来『鱗』を使って追いかける金の魚を、スキル一つで追いかけるメイ。
水中に沈んでいたのは、古い石造りの建物たち。
すでに半壊状態の建物の間を、金の魚は華麗な動きでかわしていく。
その速度は、通常の『泳ぎ』で捕まえるにはあまりに難しい。しかし。
「それーっ、待て待てーっ」
【ドルフィンスイム】によって、追いかけっこは問題なく成立。
そのうえ【耐久】の高さで『呼吸ゲージ』も問題なし。
「よっ、それっ」
窓の隙間を通り、瓦礫の合間を潜り抜け、しっかりと後を追う。
すると金の魚は、半壊の建物跡の一つにたどり着いた。
「……追いかけっこはここまで?」
どこか神秘的なその場所は、小さな神殿のようだ。
穴の開いた天井から差し込んでくる陽光が、不思議な神々しさを感じさせる。
「わあ……きれい」
金の魚はメイを待つように、台座の前で動きを止めた。
石の台座にメイが触れると、埋め込まれた宝珠が点灯する。
「何か装置が点いたよー!」
さっそく水面に戻ったメイは大きく手を振って、レンたちに呼びかけた。
「ありがとうメイ!」
レンもそれに手を振って応える。
「高額アイテムを買わずに、クエストをこなしてしまいましたね」
本来であれば蜃気楼の砂漠を回り、ようやく見つけたオアシスで高額のアイテムを買わなければならないこのクエスト。
それをメイたちは、最短最安で成功させた。
「……でも、見た感じの変化はなさそうね」
「何かの準備ができたと考えるのが妥当でしょうか」
「そう考えるのが自然ね」
「それーっ! 【アクロバット】!」
メイは水面に大きく跳ね上がると、空中で一回転。
そのまま水中に戻り、また金の魚と並んで泳ぎ出す。
「それにしても楽しそうねぇ」
「気分的な意味でもオアシスです……」
オアシスを自由に泳ぐメイ。
その楽しそうな姿を眺めながら、和んでしまう二人だった。