軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

174.最終日の朝のこと

合宿三日目、早朝。

朝日の入り込むレンの部屋。

「ふああ」

そのまばゆさに、さつきは目を覚ました。

身体を起こし、目を擦って、それから少しボーっとする。

レンの部屋には今、布団が三枚並んでいる。

「一人だけベッドは悪いから」と、敷いた布団。

さつきの両隣には、レンとツバメが静かに寝息を立てている。

ジッと、さつきは二人の姿を見つめる。

「今日でもう、ダンジョン合宿も終わりかぁ」

楽しいけど寂しい。

そんな少し不思議な感情。

静かな早朝の陽光の中で、つぶやく。

「色んな場所に行ってみたくて始めたゲーム。思い切ってジャングルを出てみて良かったなぁ」

メイはそっとレンの手に触れる。

「7年も遊んでたのに、知らないことばかり。そんなわたしの手を引いてくれるレンちゃん。すっごく頼りになるレンちゃんが……好き」

レンの寝顔を見つめて、ほほ笑む。

それからゆっくりとツバメの方へ。

「一緒に前線で戦う仲間のツバメちゃん」

その小さな手にそっと触れる。

「可愛くて、どこか上品で、それなのに少し変わったところがすごく楽しくて……好き」

ツバメを見つめて、ほほ笑む。

「二人と一緒で本当に良かった。ありがとう……レンちゃん、ツバメちゃん」

ぺこりと頭を下げると、そのままゆっくり枕に顔をうずめる。

「えへへ……楽しいなぁ」

時間はまだ早朝。

笑みを浮かべたまま、さつきは再び眠りにつく。

――――大変だったのは、レンだ。

実はメイが身体を起こしたところで、レンも目が覚めていた。

眠気にうつらうつらしていると、突然さつきが自分の手に触れた。

当然、全部聞こえてた。

耳が、顔が、焼けてるのかというくらいに熱い。

しかし今さら起き上がることもできず、そのまま真っ赤なままでいたところ―――。

「……ん」

あとに続くようにして、ツバメが目を覚ました。

ツバメはまだ早朝であること、そして寝ている二人を確認すると、静かに口を開く。

「毎日、こんなに楽しくていいのでしょうか……」

それからメイに語り掛けるように、わずかに顔を傾ける。

「メイさんのいつも元気なところが好きです。見ているだけで楽しいです」

そして、レンの方を向く。

「レンさんの何気ないツッコミが好きです。つい笑ってしまいます」

そして、静かに目を閉じる。

「今は胸を張って、大好きな友達と遊んで来ると家族に言えます。お二人のおかげです……出会えてよかった」

にこりと笑って、そのままメイの背に寄り添うようにして目を閉じた。

レン、もう動けない。

しばらくそのまま、赤面状態でいた後。

さつきとツバメの寝息が落ち着いていることを確認して、そーっと目を開ける。

静かに立ち上がり、足音に気をつけながら窓際に。

まぶしい朝の光を浴びて、熱い耳を冷ますように何度も深呼吸する。

まだまだ静かな街並み。

窓から見えるのは、飛び立つ鳥くらいのものだ。

そして、まだ白みがかっている青空を見つめたまま。

「……わ、私だって、二人に会えて良かったと思ってるわよ」

振り返ることなく、レンはそうつぶやいた。

「お姉ちゃんの結婚で急に目が覚めちゃった時は、本当に全部捨てて辞めちゃうつもりだったんだもの。素に戻った自分が、最初に出会ったのが素直で元気なメイで良かったわ」

静かな朝の空気の中で、続く言葉。

「その後、メイのすごさに一緒に驚ける仲間ができた。少し変わったところが可愛いツバメ。二人でメイに驚く時間はとても楽しいの」

話し出せば、自然と生まれて来る。

「何より。二人にも同じように『ムダかも』って思っちゃうような時間を過ごした経験があった。そのおかげで……自然でいられるのよ」

自然と生まれる柔らかな笑みを、浮かべたまま――。

「だから…………ありがとう」

レンはゆっくりと振り返る。

「ふげッ!?」

そこには、ただただ単純にうれしそうに目を輝かせるさつき。

そして照れながら、もじもじと身体を揺らすツバメ。

どうやら二人とも目を覚まし、レンの独白を最前列で聞いていたようだ。

レンは再び、身体が燃え上がりそうなほど赤面する。

「な、な、な、なんで私の時だけええええええ――――ッ!!」

自分の時だけ『ご本人にしっかり聞かれていた』ことに、思わず吠えるレン。

とにかく恥ずかしいこの空気に、居ても立っても居られない。

「と、と、とにかく今日もいくわよ! グランダリアが私たちを呼んでるわ! まずは朝食からっ!」

勢いのまま、部屋を出ていこうとするレン。

「……意外なお言葉でした。その……うれしいです」

「やめておきなさいよ! 今回に関してだけは『我が眷族として期待しているぞ』みたいな言い方の方が冗談にできて良かったわ! なんでこんな時ばっかりしっかり、しかも長文で私はぁぁぁぁ!」

ささやくツバメに、思わず頭を抱える。

「えへへ、レンちゃん顔が赤いよ」

「な、なによ! メイだって似たようなこと言ってたじゃない!」

「うんっ」

対してメイは、ビクともしない。

「だって、わたしも同じだからっ!」

ただ嬉しそうに言って笑う。

見事なカウンターに口をふさぐレン。

さつきは前を行くツバメの背を抱きしめながら、レンに笑いかけた。

ツバメはあわあわし、レンは長々演説したことを思い出して再び顔を赤くする。

掲示板は記録更新への期待で盛り上がっているが、三人に特別意識なし。

そんな事実は露も知らず、ほほ笑ましい朝を迎えていたのだった。

そして、合宿最終日が始まる。