作品タイトル不明
1506.ネオヨークにて
謎の褐色少女による侵攻は、世界各地で多発的に起きた。
居合わせた五月晴れや、一部のトップパーティは追い返すことに成功し、事なきを得ることに成功。
しかしトップ級プレイヤーが敗北したり、そもそもレベルの高いプレイヤーがいなかった都市には、大きな異変が起きていた。
「ここが、あのネオヨークシティなの……?」
レンが、思わずつぶやいた。
星屑では誰もが知る、『首都』の一つであるネオヨーク。
河に架かる大きな橋や、石造りの高い建物が居並ぶその街は、完全に緑に飲まれていた。
ネオヨークを占拠したのは、水を吐き出し続ける不思議な木々だ。
建物に張り付くようにして育つ大量の木々が水を吐き続けたことで、街の一部は水に沈み、小さな池が無数に出来上がっている。
また各所に高い建物に負けない巨大な樹木が枝を広げていて、もはや街の方が木々の間に作られたかのような光景を見せている。
「あっちにたくさん人がいるよ!」
同じく謎の褐色少女に襲われたメイたちは、いくつもの都市で起きた異変を見るため、ネオヨークにやってきていた。
めずらしい光景を見ながら歩いていると、たどり着いた街はずれ。
海を臨む街の外縁にやって来ると、そこには大量のプレイヤーたちが集まっていた。
「くっ! 街の中にこんな自由に魔物が闊歩するとかさァ! 【クロスセイバー】!」
十字キズが目に付くクロヒョウに放った斬撃がかすめたところで、即座に仲間の魔導士たちが追撃。
「「【フリーズブレイド】!」」
飛来するいくつもの氷刃が、次々にその身体を斬りつけていく。
ここで今度は、武闘家が急接近。
「【烈火拳】!」
放つ拳の一撃から繰り出す炎混じりの衝撃波が、ついに直撃。
クロヒョウは地面を跳ねて転がる。
「あの羽飾りの娘の手下なのか、新たなクエストかは知らないがこのまま片づけるぞ!」
「おうっ!」
クロヒョウはここで、高速移動スキルを発動。
そのまま爪によるエフェクトをまとう一撃を振り下ろす。しかし。
「させるか! 【フィジカル・シールド】!」
飛び込んで来た剣士の盾防御が、これをしっかり受け止める。
そうなれば、武闘家が即座に接近。
「【炎龍蹴り】!」
荒々しい炎を巻き上げる蹴り上げがヒットし、再び転がるクロヒョウ。
「このままトドメだ!」
「おう!」
駆け出す剣士と武闘家。
すると危機を悟ったクロヒョウは大きく後方と飛び退き、なんとそのまま逃走。
「おい! 逃げるぞ!」
「「【拡散弾】【フリーズブレイド】!」」
魔導士組はすぐさま追撃を放つが、クロヒョウはそのまま木々の間に逃げ去って行った。
「逃げられたか……」
「まあ、あれくらいなら放っておいても大丈夫だろ。次見つけたら確実に倒しておこう」
「でも、町中に魔物が入って来るなんて変っちまったな、ネオヨークも」
「クエストとかはしっかり残ってるけど、拠点としては使うには厳しいな」
緑に飲まれた街での戦いを見ながらつぶやくのは、ネオヨークを中心に活動していた者たち。
「謎の攻撃を受けたって聞いて来てみたけど……すごいな」
「一体どんな敵なら、街をこんなにできるんだ?」
噂のネオヨークを見に来たプレイヤーたちも、その規模の大きさに驚きを見せている。
「ポストアポカリプスの世界って感じね」
「それでもお店などは場所を変えたりしながら動いているのは、すごいですね」
「は、はひっ」
五月晴れもそんな面々に続いて、ネオヨークの様子を振り返る。
集まった多くのプレイヤーたち。
中心地は木々に飲まれてしまったため、ポータルがこの位置に移動したことも大きな変化になっている。
「あっ! メイちゃん!」
「メイですっ!」
五月晴れの存在に気づいたプレイヤーたちが一斉に、こちらに向き直る。
「この緑化、世界各所で起きてるみたいだけどメイちゃんは何か知ってる?」
やはり大きなクエストとなれば、メイたちとの関連を考えるのだろう。
もちろんメイは、ブンブンと首を振る。
「だとすると、一体なにが……」
集まったプレイヤーたちが、首を傾げていると――。
「何か来るよ!」
メイがそう言って、海を指差した。
「ん……?」
【遠視】のないプレイヤーたちには、まだ見えない。
しかし一部弓術師などの、目の良いプレイヤーたちがそれに気づき出す。
「あれは、船か……?」
「その船が、この事態を収束するためのクエストか?」
そんな問いに、弓術師は首を振る。
「……いや、そんなレベルじゃない」
息を飲む弓術師。
するとやがて、肉眼でも『船』が確認できるようになってきた。
こちらに向かって海を突き進む黒の帆船は、これまで見てきた船よりも明らかに巨大。
現実世界の豪華客船級だ。さらに。
「なんだ、あの数」
一隻ではない。
あたりを埋め尽くすほどの巨大船の船団が、ネオヨークに向けて見事な陣形を組みながらやって来る。
「これは……大変なことになりそうね」
これまで見たこともない壮大な光景を見たレンが、静かにそうつぶやいた。