軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

1464.二つで一つの魔物です!

長さ3メートルほどの尾でつながった、二体の黒猿。

異世界特有の変わった魔物の片割れを打倒することに成功したが、敵は即座に復活を果たした。

「戦闘中に何度も位置を入れ替わっていますし、どちらかが本体という形でしょうか」

「動き回る敵の本体の方を、確認しながら戦う必要がありそうね」

「はい、二択になってしまうと永遠に復活されてしまう気がします」

そう言って白目をむくツバメ。

ここからはちゃんと、本体らしき方を確認しながら戦うことにする。

生き残っていたのは、向かって左の黒猿だ。

「っ!」

速い動きで攻勢を開始する。

メイを真ん中に置いての走り出しは、一見後衛を狙っているかのように見えるが、突然身体の角度を変えて特攻。

中心のメイを狙うように『×』を描く形で爪撃を放つ。

「【アクロバット】!」

これをバク転でかわすと、今度は左右から同時に飛び掛かりにくる黒猿たち。

「【アクロバット】!」

続けざまの大きなバク転で回避すると、二体の黒猿は空中でそのまますれ違った。

着地する三者。

左側の黒猿が、その爪に魔力を輝かせる。

その特攻をメイがしゃがんでかわし、反撃に入ろうとしたところで、もう一体が尾を持ち振り回す。

すると今度は、黒猿を使った振り回し攻撃になる。

「うわっと!」

払いの形で迫る黒猿を、メイはその場に伏せることで回避。

すると今度は二体が魔力を全身にまとって、同時に特攻。

「っ!」

メイの前まで来たところで魔力を暴走させて、爆発を巻き起こした。

「【ラビットジャンプ】!」

慌てて後方へ高く跳躍。

「びっくりしたー!」

これにはメイも驚く。

魔力爆発を二体同時に起こして巻き込むという攻撃を、ギリギリのところで回避した。

「あれを完全回避できるのはメイくらいね! 【超高速魔法】【ファイアボルト】!」

黒猿の攻撃は、二体両方が同時に魔力を放出するという大掛かりなもの。

必然的に足が止まり、その隙をレンは見逃さない。

撃たれて体勢を崩した黒猿はもちろん、先ほど『復活』していない本体の方だ。

その意図に気づいたメイは、着地と同時に走り出した。

「【電光石火】!」

本体を守ろうと動き出していたもう一体の黒猿は、駆け出していたツバメが足止めに成功。

「【蛮族流】!」

メイは踏み込み、まずは左手の【地帝の斧】を振り回す。

これを黒猿は、必死の回避でかすめるに抑えた。

「【フルスイング】!」

だが即座に続く剣の一撃を、かわすことができない。

再び決まった猛烈な一撃。

つながる二体の黒猿は、凄まじい勢いで地面を転がっていく。

メイとツバメは軽やかなハイタッチを決めて、振り返る。

レンとまもりも、それに笑顔で応える。しかし。

「ふ、復活しています……」

気付いたまもりの言葉に、驚くレン。

今回は本体と思わしき方を打倒したにもかかわらず、黒猿は再び立ち上がった。

「……なるほど。この速度と連携の魔物を、二体ほぼ同時に倒せってことなのね」

ここでレンが、正解にたどり着く。

実はこの黒猿は、二体を同時に倒さないといくらでも復活する魔物。

間違いなく、やっかいな強敵だ。

「でも、そういう事なら……」

レンはそっと杖を【ヘクセンナハト】に換える。そして。

「【コンセントレイト】【フレアバースト】!」

いきなりの広範囲爆炎魔法で、黒猿をまとめて攻撃。

燃え上がる炎は確実に、二体を同時に捉えた。しかし。

「身代わりにした……!?」

片方が盾になることで、もう一匹を防御。

そしてすぐさま復活して二体になったところで、再び黒猿たちがメイを狙って動き出す。

先行の黒猿が大きな振り降ろしで放つ爪撃を、メイはバックステップで回避。

すると即座に追い越してきた二体目が、爪を大きく振り上げる。

「わっと!」

これを大きな斜め後方への一歩で避けたメイは、反撃を狙うため顔を上げる。

するとすでに黒猿二体は、宙にいた。

猛烈な飛びかかりから放つ、爪の振り降ろし攻撃。

「うわわわっと!」

慌ててしゃがむと、二体は頭上を通り過ぎて着地。

「【誘導弾】【フリーズストライク】!」

「【投擲】!」

レンの放った氷砲弾をかわし、ツバメの【雷ブレイド】を避ける。

そしてそのまま両手を引くと、魔力輝く爪をその場で振り下ろす。

生まれる大きな八本の斬撃は、クロスして逃げ場をなくす。

「……ここっ!」

それでもメイは冷静にその隙間を見計らって、回避に成功した。

ほっと安堵の息をつくと、黒猿二体は即座に高速で再接近。

見事な回避によって生まれた隙を、突かなかったメイに少し驚きを覚えるレン。さらに。

「【装備変更】!」

「「「っ!?」」」

まさかの装備に驚く。

メイが手に取ったのは、地上では使わない【海皇の槍】だった。

右の黒猿が閃光を灯した爪を振り下ろし、メイは右にかわす。

すると左の黒猿がそのまま尾を振り回して、右の黒猿を使った払いの攻撃へと変える。

「【ラビットジャンプ】!」

これをメイが、やや高めの跳躍でかわしたところで二体が同時攻撃に入った。

そして時間差でクロスするような、飛び掛かりに入ったところで――。

「きたーっ!」

初撃をかわしたメイが、【海皇の槍】を虚空に突き出した。

「……そういうことっ!」

思わず声をあげる。

メイが敵に当たらない位置に攻撃をしたことに困惑したレンだが、その意図はそもそもダメージを狙ったものではない。

目的は二体をつなぐ尾に、槍を引っ掛けてしまう事だ。

飛びかかって来た二体の間にある尾を、見事に捉えたメイはそのまま槍を振り下ろす。

「せーのっ! 【フルスイング】!」

猛烈な勢いで、槍が地面を叩く。

するとそれに引っ張られる形で、黒猿二体が地面に叩きつけられて跳ね転がった。

生まれた、大きすぎる隙。

「メイじゃなきゃ、できない攻略ね! 【誘導弾】【フレアストライク】!」

「【裸足の女神】【フルスイング】!」

左の黒猿を炎砲弾が、右の黒猿をメイの剣が打って二体同時の攻撃に成功。しかし。

「【シールドストライク】! 足りません……っ!」

まもりの盾投擲をぶつけても、まだ左の黒猿のHPが削り切れない。

「また復活……!?」

このままでは間違いなく、復活してしまう。

レンが悔しそうに息をついた、その瞬間。

「【極一閃】」

一筋の雷光が、地を駆け抜けた。

瞬き一つで見逃してしまうほどの速度で、生き残った黒猿の横を駆け抜けた閃光。

ツバメが敵の後方に回った後。

その凄まじい速さに置き去りにされた斬撃が、まるで花を咲かせるように遅れて乱舞する。

「間に合いましたね」

そう言ってツバメが【村雨】を鞘に納めると、斬り刻まれた黒猿が倒れ伏し、そのまま粒子になって消えていった。

「ツバメちゃん、カッコいいー!」

「斬撃の方がツバメの速さについてこられないみたいな演出……いいわね」

「そ、速度と火力……どちらも圧倒的です……!」

こうしてツバメの新スキルは、見事に『同時打倒』が求められる魔物を打ち破った。

「でもこの世界の魔物は、本当に癖がある個体が多いわ……」

「ほ、本当ですね」

「大変な戦いでした……ですが【重鎮石】の回収もできましたし、サツキタウンに戻りましょう」

「はいっ!」

こうして四人はあらためて荷車に進み、今度こそ銀の湖を後にするのだった。