軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

1441.秘かに進む地底人の野望

アイアスラントの地下深くにあったのは、遺跡のような作りの街。

その中心には、儀式場のような空間があった。

「絶対良からぬことをしてるぽよ……」

「そうですね。豊穣を祈るお祭りの可能性は、良くて2パーセントと言ったところでしょうか」

「レンさん、この儀式はどうですか?」

「人を闇の儀式専門家みたいに言うのは止めて?」

「あはは」

暗闇の世界を照らすのは、儀式空間の中心に刺さった高さ2メートルに届くほどの魔宝石。

そしてその前にズラリと並んでいるのは、人間ほどの大きさをしたモグラの魔物。

黒い毛並みにのぞき見える白眼には、感情を覚えさせない恐ろしさがある。

長い腕の先には大きな手と、短剣のように鋭い長爪。

二足歩行なのは間違いなく、その鋭利な爪を使った攻撃をするためだろう。

途中で出会ったアング族のような愛嬌はなく、恐ろしさが前面に出ている形だ。

「――――ここに、たどり着く人間がいたか」

儀式場に並ぶモグラたちの中にいた、族長らしき者は頭に骨の飾りを付けている。

「出てくるがいい」

確実にこちらを見ている族長に、メイたちはうなずき合う。

真紅の魔宝石が放つ妖しく鈍い輝きの中、地底人たちが一斉に振り返る。

「すごい迫力ぽよ……」

思わずつぶやくスライム。

族長らしきモグラは、よく響く低音で問いかける。

「人間よ、こんなところに何をしに来た?」

「ダグラン族が、噴火を使って地上を攻撃するのを止めに来ました」

「ほう……ただ迷い込んだだけの冒険者かと思っていたが、ここしばらくの地震や噴火で異変に気づく程度には鋭い者がいたようだ。ところで、アリ共には出会わなかったか?」

「倒させてもらったわ」

「まるでプログラムされているかのように、ただ勢力拡大だけを狙う生き物である侵略アリ、ラーヴァアント。その女王さえ操れば、領地を広げるための兵士作りにちょうど良いと考えていたのだが……しょせんアリはアリか」

族長は、バカにするかのように吐き捨てる。

「メイが気づいた魔宝石でクイーンを操っていたのは、もう間違いなさそうね」

「お前たちの言う通り、この大型魔法石を起動させれば噴火が起きる。そしてこれまでの噴火は、その規模やパワーを調整するための実験だった」

それは人気のバザールブンガ火山の溶岩クエストの背景に、隠されていた野望。

「アイアスラントが噴火に沈み、地上の人間を抹消した後は我らがその地を継いで、世界にアリを派遣する。クイーンには人間を先兵に変えてしまう力がある。複数の女王を用意し、狂わせた人間たちを戦わせるのが狙いだ。人間同士の戦いなど日常だからな。その勢力争いに誰も疑問を持ったりはしないだろう」

「火山の噴火で島を乗っ取り領地にする。さらにアリを使って人間たちも兵に変えて支配を広げていく。しかもそれは地下で秘かに進められていた……恐ろしいクエストね」

「……街で見た、突然狂って暴れ出す住人を止めるというクエストは、それが原因ですか」

「地下でアリに洗脳された者が地上に帰った後、暴れるわけね」

「ちょっと待て。俺クイーンの部屋の繭の中に人型が見えておかしいと思ってたんだけど……」

「何それ、急に怖くなってきたぞ!」

「単なる洗脳よりも、恐ろしい兵士の作り方もあるわけか……」

「……でも人間の形ではあるんだよな? それなら人間をやめてるスライムちゃんの方がヤバくない?」

「「「……確かに」」」

「なんてことを言うぽよ!」

以前トカゲたちが変身を使って成り代わり、地上の一部を支配した時のようなとんでもない危機。

そんな事態が地下でこっそりと進行していたと考えると、やはりドキドキしてしまう。

「これから始まる最大級の噴火は、アイアスラントをたった一度で飲み込むほどのものになる」

「「「っ!!」」」

「思った以上に、大きな効果を持つ魔法石なのね」

「当然だ。そして我らダグラン族のもとにたどり着いてしまった以上、お前たちには……ここで死んでもらう」

そう言うや否や、一斉に立ち上がる地底人たち。

「少女に聞いたおかしな言動のNPCを止めるクエストはクイーンの仕業、協会で聞いた怪しい影の話は地底人。遅効性のクエストがずっと動いていたのね」

「だ、誰がどこで気づいて戦うかで、状況や進行度が違うんですね……」

「大噴火後ならもっと敵勢力が増えてたんでしょうね。気づかずに進んでいた脅威であるアリとの戦いを制すると、さらに地底人が操っていたことに気づいて戦慄するみたいな形かしら。そういう意味では、まだ早い発見と言えるのかも」

「……絶対に止めようね」

「そうですね。このままでは約束が果たせません」

「あの子の作った温泉に、オーロラを見にいくっていう話ね」

「……はい!」

好きな町が変わってしまうクエストには、覚えのあるまもり。

思い出すのはアイアスラントが大好きなのだろう少女が作ったという、オーロラの見える温泉だ。

完成したものの誰も来ていないと言っていた少女は、メイたちを今や遅しと待っているだろう。

「行き場を失くした動物たちの姿なんて、見たくないぽよっ」

そしてアイアスラントは島だ。

NPCや動物などは、『逃げられなかった』という判定になるだろう。

それはある意味、他のクエストの街崩壊などよりも恐ろしい事態だ。

「これよりガイアクリスタルを用いて、大噴火へのカウントダウンを始める。アイアスラントを飲み込む大噴火を止めるには、この私を討つしかない」

そう言って族長は、大型魔法石の後方にある下り階段を降りていく。

後を追いたいが、居並ぶダグラン族が立ち塞がってそれを許さない。

「雪渓も温泉も、無残に飲み込まれて崩壊……」

「そんなの、許しませんっ!」

「この暗き地下世界で、人間に我らが倒せるかな? お前たち、容赦は要らない。ここで確実に殺せ」

そう言い残して、族長は去って行った。

「というわけで、時間がないの」

レンは杖を握り直してつぶやく。

「悪いけどどんどん行かせてもらうわ! 【フレアバースト】!」

「「「っ!?」」」

いきなり放った爆炎は、敵ではなく街を焼くもの。

最初は意味の分からなかった掲示板組。

しかし燃え盛る炎が広がることで視界が大きく広がり、後衛が『松明』を持つ必要がなくなる。

そのことに気づいて、思わず目を見開いた。

「五月晴れと掲示板組が一緒で、負けた事って一度もないんだけど……何か聞きたいことある?」

「ならばこの勝負も、勝率は100%でしょう」

「全力で、行かせてもらうぽよ……っ!」

「使徒長と私が共にいて、敗北などありえない」

気合を入れる掲示板組。

アイアスラントを賭けた戦いが、深い地下の底で始まった。