軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

1379.ドールを止めろ!

「あの町だね!」

闇を継ぐ者の情報を得て、ケツァールでやって来たのは、中央大陸の端にある広い町。

住居が多く、都市というよりやや地味なベッドタウンのような構成をしている。

「ありがとーっ!」

全員で屋根に降りると、ケツァールに手を振って見送る。

「目的は魔神の『腹心』召喚を止める事。この腹心を呼び出すためにドールが動いているみたい」

「ドールですか?」

「以前にも魔神を呼び出そうとした者がいて、その時は失敗したけど部下としてドールをいくつも動かしてたんだって。それを再起動させてる形ね」

どうやら『仕掛ける側』の人数が少ないと、このドールが動くようになっているようだ。

「腹心が動き出して、魔力が十分に溜まると魔神のもとに転送されてしまう。この転送がなった時点で任務失敗になるわ」

「ドール打倒で腹心が出てこられないのが最速、最終ラインは魔力の充填完了までに腹心を打倒するという形ですね」

「ま、まずはそのドールを探すところからですねっ」

「みなさーんっ! 力を貸して下さいっ!」

さっそくメイが、付近の動物たちを集めて問いかける。

「怪しい人形を探してしますっ! 何か心当たりはありますかっ?」

すると一匹のネズミが立ち上がり、着いて来いとばかりに走り出した。

ここは石造りの家々が並ぶ、普通の町。

追従すると、そんな町並みには少し違和感のある濃紫のコートを発見。

紋様入りの鉄仮面の中に、怪しい一つの光が灯っている。

ネズミが指差しているのはかつて、魔神を呼び出そうとした者が遺したドールで間違いない。

「ありがとーっ!」

発見が遅くなれば当然、制限時間に間に合わなくなる可能性が増す。

これで最初の関門はクリアだ。

とても早い発見だが、相対した時点でドール側は召喚に動き出す。

第二の制限時間をあらたに設置する形だ。そして。

「さあ、いきましょうか」

四人が、ドールの前に立ち塞がったところで――。

「「「「っ!?」」」」

戦いの始まりを確信していたメイたちの前に投じられた、魔法珠と金属を組み合わせたオブジェクト。

飾り付けられた手榴弾のようなアイテムが、強烈な閃光と破裂音を放出した。

「……ああっ、いなくなってるよ!」

いきなりの閃光音爆弾で、逃走。

どうやら召喚を優先するドールは、戦いよりも逃げて目的を成す方を選んだようだ。

「【バンビステップ】!」

「【疾風迅雷】【加速】!」

「【低空高速飛行】!」

先行するメイとツバメを追う形で、レンが続く。

まもりは最後尾からレンを追いつつ、付近にも視線を向けておく。

ドールが進んだ先は、やや狭く人通りの多い裏通り。

商店があるため、込み合うその道。

メイの回避しながらの疾走も見事だが、ツバメには得意なスキルがある。

「【壁走り】!」

これで一気に距離を詰める。

「【壁蹴り】!」

そしてドールを射程範囲に収めたところで大きく壁を蹴った。

「【空襲】!」

アサシンならではの見事な距離の詰め方と、暗殺を狙う者にしては派手な挙動で攻撃を仕掛ける。

短剣で放つ一撃をドールは下がってかわし、そのまま人ごみの中へ逃げ込んでいく。

そしてその場にしゃがみ込みでもしたのか、頭が見えなくなった後。

「消えました……!?」

決して地味ではなかったドールの姿を、見失ってしまった。

「ツバメちゃん!」

後を追ってきたメイにも、突然消えてしまったように見えていたらしく困惑。

遅れて来たレンにはもちろん、その姿は見えていなかった。

「メイとツバメがまかれるなんて、めずらしい展開ね」

このNPCの優秀さを考えると、魔神復活は日傘少女一人で動いている可能性がある。

レンはそんなことを考えながら辺りを注意深く見回すが、やはりドールは見つからない。

「ここは一度分かれましょう。まもりにはこの一帯に隠れていないかの調査をお願いしておくわ」

「りょうかいですっ!」

謎の消失を見せたドールを探すため、ここでメイたちは手分けしての行動を決定。

各々が別方向に進み、探索を開始する。

「どこへ行ってしまったのでしょうか」

目の前で忽然と消えてしまったドールを探して、駆けるツバメ。

怪しい点は……見当たらない。

付近の通行人の顔を見て、進み、今度は全体を見渡す。

だがやはり、違和感は感じられない。

「――――五月晴れのツバメさんと、お見受けします」

「あなたは?」

するとそこに現れたのは、マフラーで鼻まで隠した一人の女性プレイヤー。

さらに仮面まで付けた少女は、素性がうかがえない。

「腹心打倒のクエストを別口で受けた者です。ドールはこちらになります」

短く伝えて駆け出す、マフラーの少女。

今回のクエストは、降臨祭に関わっていた者であれば協力も可能だ。

刻々と過ぎていった時間を思い、ツバメは後に続き、町の北部にある裏通りの一角へ。

並ぶ民家の裏手にやってきたところで、少女が再び走り出した。

そのままツバメの方へ高速で接近すると、魔力をみなぎらせた拳を振り抜いた。

「っ!?」

地面を転がり、そのまま民家の壁に激突。

ツバメは混乱する。

なんと少女に殴り飛ばされた『町の住人』が、その姿をドールに変えた。

「どういうことですか?」

「人通りの多い町の中で、目に映った人物と同じ姿を取るというスキルを使ったのでしょう」

「そういうことですか! 【疾風迅雷】【加速】【加速】!」

すぐさま起き上がり、走り出したドール。

途中で再びを姿を消すが、今度は『突然現れた双子』を見逃すことはない。

双子の片割れの『離れていく方』を追っていく。

するとドールはすぐさま姿を戻し、再び北上する形で逃走。

「【壁走り】【壁蹴り】!」

高速移動で一気にドールの上方へ。

「【連続投擲】!」

投じる炎と風の【ブレード】が、高々と炎を上げる。

そして生まれた突風に、ドールが足をフラつかせたところに――。

「【雷走破】」

稲光を残して迫る掌底を直撃させて、駆ける雷光がドールを跳ね転がした。

見事な連携が決まったが、それでも逃げの姿勢は変わらない。

ドールの足はそのまま、人の多い中央通りへと向かう。

「「っ!!」」

だがそんなドールの目前に、深々と突き刺さったのは【王樹のブーメラン】

「……さすが」

謎の少女が声をあげる。

一気に距離を詰め、大通りへの道を塞ぐと、ドールは逃げ道を変更。

直線で駆け抜けた先には、町はずれの草原へと続く境界線がある。

こうしてドールは、町の外に出る形になった。

これでもう、町人に変身しての逃走は不可能だ。

ドールは、覚悟を決めたように振り返る。

そしてその手に、紋様入りの宝珠を取り出した。

「「っ!」」

すると足元に魔脈が顕現し、目に見える光の流れが生み出された。