軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

1368.vs闇の使徒

「ゆくぞ……っ!」

ベリアルの言葉に、気合を入れた闇の使徒たちが動き出す。

魔法陣の発動のため、先へ進んだ刹那を止めるためにはこの包囲網を破る必要がある。

よってここは、正面からのぶつかり合いだ。

「なんだ、これ?」

たった六人のパーティが、街中で数百人の黒づくめに囲まれている。

偶然近くを通りかかったプレイヤーが、恐ろしい光景に息を飲む。

「撃て!」

そんな中、華麗な回転跳躍で屋根から降りてきたのはワイルド。

「【速射】【烈炎弾】!」

「【ファイアランス】!」

「【ウィンドカッター】!」

即座に放たれる無数の魔法の中を駆け抜けて、振るう剣がいきなり黒の剣士を四人まとめて斬り飛ばした。

「一撃で、前衛戦士が即死か……っ!」

この瞬間に放った魔法も、まるで背中に目があるかのように回避された。

広い視野と鋭い聴覚が攻撃の瞬間を捉え、隠して放った魔法も、予期せぬ方向からの攻撃にもいち早く気づく。よって。

「ここだっ!」

そんなワイルドの死角を突いて、運よく届いたかのように見える魔法は――――実はあえて引き寄せておいたもの。

「【片足跳び】!」

そうとは気づかず空中から迫るアサシンに対し、ワイルドは装備を【魔断の棍棒】に交換。

「甘い……」

「なっ!? ぐああああっ!」

即座に打ち返して、空中のアサシンを撃つ武器に変える。

燃え上がる炎に包まれたアサシンはそのまま落下して、倒れ伏した。

「「……今だ!」」

この時距離を置き、離れたところからワイルドを狙う二人の弓術師。

それぞれが、違う角度から放つ矢。

一発目を避けながら、その手に取り出す『石』

「【投石】」

さらに速く、さらに飛行距離を伸ばした石が直撃して倒れる。さらに。

「せーのっ! それーっ!」

投じた【王樹のブーメラン】を見て、弓術師は慌てて隠れるが――。

建物の最上階にある煙突を、弾き飛ばして直撃。

「わああああああ――――っ!」

そのまま落下して消えた。

「分かってはいたが……強すぎる! 【フレイムストライク】!」

「っ!!」

ここで黒づくめ魔導士は、あえてワイルドの手前に火炎弾をぶつけて炎を巻き上げた。

その隙に前衛組の一部が、八人がかりでの包囲に成功。

空中から同時に、跳躍攻撃を展開する。

さすがにこの状況から全員に対処するのは難しいだろう。だが。

ワイルドは慌てず、クールに仁王立ち。

そこから剣を、なんと天に向けて力強く振り上げてみせた。

「【ソードバッシュ】」

「「「っ!?」」」

まさかの攻撃。

真上に向けて放った衝撃波は、暴風となって天へと突き抜ける。

「「「うああああああああ――――っ!!」」」

付近への影響を考え、大技を『横向き』に使わずにまとめて打倒。

動画などで見ると、「こうすれば戦えるのでは?」という楽観的な想像が働くものだ。

しかし実際目前にしたワイルドは、そんなレベルを超えている。

「なんだこの戦い……! 闇の者同士が戦ってるぞ!?」

「降臨祭の背後で一体何が!?」

そんなワイルドたちの戦いに気づいた通行人が、いよいよ集まってくる。

「相手は近接型のアサシンだ。一発当てれば態勢を崩して高ダメージまで取れるはず……!」

舞台は屋根の上。

大きな建物の上に集まった闇の使徒たちが、スワローを取り囲む。

前衛の一団はうなずき合い、一斉に攻撃に入る。

「【加速】【リブースト】」

「っ!?」

その速度はまさに稲光の様で、虚を突かれる闇の使徒たち。だが。

「潰せ!」

当然こうなれば、全方位からの攻撃が容赦なく迫り来ることになる。

使徒たちはそれぞれの武器を手に、攻撃体勢に入るが――。

「【紫電】」

駆ける雷光で、まずは前面の敵をまとめて止める。

「【チェーンキル】! 【アサシンピアス】【アサシンピアス】【アサシンピアス】!」

いきなり目前の前衛を、三人続けて打倒。

「【電光石火】【反転】【チェーンキル】! 【アサシンピアス】【アサシンピアス】【アサシンピアス】!」

「【妖魔斬り】!」

「【スライディング】【アサシンピアス】【アサシンピアス】【アサシンピアス】!」

止められない。

次々に短剣を突き刺し敵を仕留める、疾風のごときアサシンがまるで捕らえられない。

「えっ……?」

倒れる者の中には、自分がどのタイミングで刺されたのか把握しきれない者までいたほどだ。だが。

「……今だ」

そんなスワローたちの一角を狙っていた、一人の魔導士。

【上級連続魔法の珠】は、一度使えば割れてしまうレアアイテム。

杖を構え、使徒たちが倒れ伏したばかりの屋根の上。

残るスワローに向けて放つ、五連続の紅蓮砲弾。

「【フレイムキャノン】!」

「【六連剣舞】【斬り捨て】――――御免!」

思わず通行人が声をあげてしまうような派手な炎の連撃に、スワローは短剣二本で向かい合うと、剣舞で対応。

なんと全ての炎弾を、大量の火花に変えてみせた。

見事な剣技に、息を飲む闇の使徒たち。だが。

「この瞬間を待ってたんだよォォォォォ!!」

この瞬間を狙い、猛スピードで屋根を駆けてきた一人の使徒が、三体に分身。

それは火力低下の代わりに、全てが実体を持つというタイプの強力なスキルだ。

「【貫通殺】ゥゥゥゥ!」

正面、そして左右からの三体同時攻撃が見事に直撃。

「ヒヤッハァァァァ――――ッ!!」

必殺の一撃を決めたことに、歓喜の雄叫びを上げながら顔を上げると――。

「ヒ……ヒヨコォォォォ!?」

【スライディング】の前に残していったヒヨコが、弾かれ転がっていく。

「【反転】」

「っ!?」

後ろから聞こえてきた声に、慌てて振り返る使徒。

スワローはすでに、スキルを繰り出していた。

「【ヴェノムバスター】【八連剣舞】」

「【貫通殺】!」

両者は向かい合い、技を出し合うような形になったが、刃が届かせていたのはスワローのみ。

「……バ、カな」

『毒』を仕掛けられた闇の使徒は、これでもかという足のふらつかせ方をして屋根から落ちていった。

この状況にものすごく、気持ち良く酔った顔つきで。

地上と屋根の上。

猛威を振るうワイルドとスワローの戦いに、冒険者たちは息を飲むばかりだった。