軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

1365.聖水を作ります!

二つの【スティール】を成功させ、見事二種類の呪具を封じたメイたち。

残りはあと一つだけだ。

ここでパレードの隊列に変更あり。

貴族馬車の司祭の一部が、降臨準備のため別動となった。

「今回は、ずいぶんと見つけやすいな」

「本当ね」

入れ替わりにやってきた馬車の屋根には、見ればすぐに『呪具』と分かる飾りの十字架。

そこには呪いを発症するための、『逆さの五芒星』が刻まれている。

「あとはもう、アイテムを使うだけですか?」

「そのはずだが……なるほど」

ツバメの問いに、スキアが「理解した」とばかりに息をついた。

「……聖水のビンが割れて、空になっている」

本部から受け取った【聖水】が、いつの間にか【空の聖水ビン】に変更。

その中身が、なくなってしまっている。

「自ら作って使えという事だな」

「【聖水】の生成法は分かる?」

「【純水】と【天然塩】を教会に持ち込み、司教に依頼する形だ」

「【純水】と【天然塩】ですか……?」

「聖教都市のマップをある程度知らないと、難しいわね」

レンの言う通り、聖教都市に明るくないと、『探す』のが少し難しいこのクエスト。

少なくともこの二つのアイテムに、思い浮かぶ節はまるでない。

そんな中。

「わ、私、たぶんですが【天然塩】は分かりますっ」

ここで最近はクエスト用の食材にも目を向けている、まもりの知識が活きる。

「それじゃあ塩はまもりに任せるわ。クルデリスは援護をお願い」

「了解ィ」

さっそく駆け出すまもりとクルデリスを見送り、レンは住人NPCに声をかける。

「【純水】がどこにあるか、知らない?」

「ああ、それなら街の中にあるんじゃないかな? 司教さんが汲みに行ってるのを見かけるし」

これで捜索範囲は、絞ることができた。

だが、広い聖教都市の中というだけではまだまだ難しい。

それでも『街の中』なのであれば、突破は不可能ではない。なぜなら。

「みんなーっ!」

メイが【呼び寄せの号令】を発動すれば、聖教都市の動物たちが一斉に集まってくる。

やはり猫と犬が多いが、一番は白い鳩だろう。

「「「おお……」」」

修道服のメイが鳥を集めると、急に聖女っぽい雰囲気が出て、集まる視線。

メイはさっそくたずねてみる。

「綺麗な水が湧き出ている場所、分かりますかー?」

すると一匹の猫が走り出し、犬や鳩が追走を開始。

「いってきます!」

メイも軽快な足の運びで、その後を追っていく。

「これなら間違いなさそうね。私たちは教会に向かって、司教を捕まえておきましょう」

「そうですね」

こうしてレンたちは近くの教会目指して走り出し、高い十字架の建物を見つけて踏み込んだ。

「メイとまもりのおかげで、すんなりいきそうだわ」

礼拝所にいた司教に、そのまま声をかける。

「【聖水】の作成って、お願いできる?」

たずねると、司教はなぜかビクリと肩を震わせた。

「た、たぶん……」

「たぶん? もちろん素材は用意するわ」

レンが言うと、司教はフードを取ってわずかに幼さの残る顔を見せる。

「あ、あの、実は私まだ見習いで。降臨祭で出払っている司教さんの代役なんですっ」

「……なるほど、そうくるのね」

どうやら【聖水】の作成には、もう一山ありそうだ。

「【天然塩】、用意できました……っ」

まず駆け込んできたのは、まもり。

その手にはしっかり、マーケットの片隅で買った【天然塩】がある。

「水も用意できたよーっ!」

続けてメイも難なく、聖教都市端の森で取れる【純水】を手に入れて到着。

「で、では始めましょう」

絵に描いたような緊張の面持ちで、【天然塩】を振りまき付近を清める見習い司教。

【純水】を魔法結晶製のビンに入れて、深呼吸。

「【ピュリファイ】の奇跡を発動し、一定時間『輝き』を安定させ続ければ成功ですなのですが、それが下手で……お力をお貸しください」

「それは魔力でいいの?」

「呼び方の違い……とも言えるので」

「なるほどね」

どうやら一般的には『魔法』、聖教徒は『奇跡』といった感じで呼び方を変えているようだ。

「それでは、は、始めます……【ピュリファイ】!」

司教が円筒形のビンの下部を握って奇跡を発動すると、光が立ち昇り、中央付近まで白く輝く。

続いてレンが上部を握って魔力を発動。

上から降りていく魔力光が、『残り半分』を埋めて安定させる。

「この輝きを、魔力を上げたり下げたりで均衡させ続けるのね」

内部の魔力が足りなければ輝きが灯のように消え、行きすぎればビンが割れてしまう。

このクエストのシステムを、レンは即座に理解した。

見習い司教の奇跡は確かに力の強弱に揺れがあり、光が上下している。

しかしレンの【知力】と【技量】は、その分を見事にカバー。

常に程よく満ちている状態を作り出す。

「いい調子ですね」

そしてツバメが、そう言った瞬間だった。

「司教さーん! パンが焼けたから食べておくれーっ!」

「「ええっ!?」」

突然入ってきたお祭り気分の信者が、焼き立てのパンを持って突入。

司教とまもりの目が、同時に奪われる。

「ちょっとちょっと!」

その瞬間、完全にオフになる奇跡。

ビンの下部から、凄まじい速度で光が消えていく。

レンは大慌てで魔力を増すが、その増え方はなかなかに『急』

一気に限界を超えてしまえばビンが割れてしまうので、握りを『慌てず急ぐ』形で強めて、必死に調整。

これまでの調理クエストで火加減を担当した経験で、どうにか程よい魔力供給に成功した。

「……あ、あぶなかった」

「あっ、すみません」

すると自らのミスに気づいた司教が、慌てて奇跡の供給に復帰。

基本的には【ピュリファイ】の使用者である司教がいなければ、浄化は進まない。

パンを待たせて、互いの配分を再調整。

安堵の息をついた、その瞬間。

「おい見習い司教ーっ! 遊びに来てやったぞ!」

駆け込んできたのは、イタズラそうな子供。

【聖水】を作る司教を見て、何かを思いついたかのように手を打ち鳴らした。

子供は女神像を、ペチペチ叩いて遊び出す。

「今はダメよ」

「はい」

レン、先に注意することで急な離脱をけん制。

こうして先ほどのように、奇跡が突然ゼロになるという危険を未然に防いだ。しかし。

「あっはははは!」

子供は止まらない。

女神像の顔に木炭でひげをつけ、額に目を描き出したところで――。

「もうっ! ダメですよ!」

「ちょっとーっ!」

今度は怒りで手に力が入り、注がれる奇跡が急激に増加。

レンは大慌てで握りを弱くして、魔力の注入を減らす。

ここで手を放さなかったのは見事だ。

奇跡の注入は8割ほどで、手を放してしまうと『不足』からの失敗へと真っ逆さま。

レンはギリギリのところで2割だけ注入し、粉砕の危機を乗り切ることに成功した。

「……お願いだから、今はこっちに集中して!」

「す、すみませんっ」

自分を追いかけてこない見習い司教に、つまらなさそうにイタズラを止める子供。

レンは再び、大きなため息をつく。

二人はもう一度、力の均衡をさせる。

「……他に、集中が途切れそうなものはないの?」

二度あることは、三度ある。

一応次に来そうな展開が聞けないかと、司教にたずねてみる。

「私、猫がどうしようもないくらいに大好きで……いつもつい餌付けを」

そう司教が、口にした瞬間。

出入り口から、腹をすかせた猫たちが駆け込んできた。

「はい、確保ォォォォ――――っ!!」

「【投擲】!」

即座にツバメが【風ブレイド】を投じて猫たちを外に転がす。

その隙間を縫ってきた個体を、スキアとクルデリスがキャッチ。

それでも止まらず飛び掛かってきた一匹は、まもりが顔で止めた。

続く第二波猫は、もちろん。

「メイ! ブレーメンの感じでお願いっ!」

「りょうかいですっ! みんなこっちだよーっ!」

走り出したメイは、そのまま教会の外へ。

すると【自然の友達】で、猫たちがまとめて後に続いていった。

「これでなんとか……なっ!?」

しかしその全てを、偶然かいくぐった一匹の猫。

トコトコと司教のもとに歩いてきて、その視界に入り込もうとする。

そして今手が空いているのは、レンだけ。

だが、魔法攻撃の類はさすがに駄目だろう。

レンは悩んだ挙句――。

「……見たらダメ」

最後は目の前にいる司教の目を、片手で隠す。すると。

「で、できましたーっ!」

ビンが大きく輝き、どうにか【聖水】の生成に成功。

おっちょこちょい司教に振り回されたレンは、今度こそ大きく息をついたのだった。