作品タイトル不明
1350.悪霊退散!
いよいよ出来上がった五月神社。
その出来栄えは見事なもので、メイたちはもちろん職人プレイヤーたちも驚きの声を上げるほど。
「とても良い神社ですね!」
やってきたクエスト主、子狐もその光景に歓喜する。
「これだけの神具をそろえた神社であれば、きっと怨念が荒れ狂っても耐えられるでしょう……!」
子狐はそう言って、社の戸を開く。
その内部には囲炉裏の様に地面につながった部分があり、そこに怨念を抑えるための岩がある。
しかし以前よりもさらに、ヒビが大きくなっている。
「待たせたな」
そこに現れたのは、【依り代の剣】を持ってきた職人NPCたち。
子狐はそれを受け取ると、背後の神棚の前に捧げた。
「雰囲気のある剣ねぇ」
「こういう時に、武器として使ってみたら攻撃力はどれくらいになるのかを考えてしまいますね」
そんなことを言っていると、ピシッと乾いた音が鳴った。
「いよいよ、ですね」
見ればそれは、岩にさらなるヒビが走る音。そして。
「……来ます!」
子狐が振り返る。
ギリギリで保っていたついに岩が不吉な音を鳴らし、風が吹き始める。
渦巻く風は黒い雲のようなものを含み出し、そこから紫色の雷光が走り出した。
「これは、思った以上に大きな力を秘めています……っ! 想定以上です!」
その光景を見て、息を飲む子狐。
「ちなみに怨念に負けた場合、どうなるの?」
「神社の全てが破壊され、消し飛んでしまいます!」
「ええっ!?」
「せっかく集めたオブジェクトも、まとめて吹き飛んじゃうわけね……」
不吉な風は止まらない。
吹き荒れ、社を揺らし、提灯をがたがた鳴らして光を明滅させる。
駆ける紫電はバチバチと恐ろしい音を鳴らし、恐怖を掻き立てる。
「剣が光り出しました!」
すると奉納した【依り代の剣】が神の力を宿し、激しくなる風や雷光を抑え出した。
「がんばってーっ!」
「負けないでください!」
祈るメイとツバメ、まもりも盾に隠れたまま様子をうかがう。
一進一退、激しい力のぶつかり。
暗い力が、一瞬大きく弾けて広がった。
神社が、怨念に飲み込まれる。
「ちょっとちょっと! なんでこの構成で追い込まれるのよ!」
「も、もう社内が真っ暗です!」
さらにレンとまもりが、悲鳴じみた声をあげた。
「「「「っ!?」」」」
直後、弾ける盛大な光。
輝きが落ち着くと、黒雲のような怨念を光が一気に吸収。
最後に一陣の風が、木枯らしのように消えていった。
「子狐ちゃん?」
メイが呼びかけると、子狐がゆっくりと振り返る。
「……やりました。怨念を再び封じることに成功しましたっ!」
「やったー!」
子狐を抱きかかえて、ぴょんぴょん飛び跳ねるメイ。
その姿にツバメも目を輝かせる。
「ど、どうやら一度追い込まれるのは演出のようですね」
「やめてよ、心臓に悪い」
苦笑いする、まもりとレン。
最高の素材で作った基礎と、職人たちが持ち込んだ見事なアイテムたち。
それによって生まれた神社の効能は、最高峰。
何一つ壊れることなく、失うことなく、五月神社は無傷で怨念を抑えることに成功した。
こうして、見事にクエストを達成したメイたち。
「ありがとうございました! あんな怨念が町に放たれたら……大変なことになっていました!」
子狐は歓喜に、尻尾をブンブンさせている。
「……お、おい。なんだこれ」
するとそこに、聞こえてきた声。
「なんか、すごい神社建てられてるぞ!」
「可愛いのに……箱庭みたいに詰まってるな……」
「すごい! 京の町中にはないタイプの神社だ!」
聞こえてきた声に、メイたちはさっそくお社を出る。
「メイちゃん!?」
「メイですっ!」
「この神社、五月神社ってなってるけど……もしかして五月晴れで建てたの?」
「はいっ」
「すげー! こんなにこだわれるのか……!」
「こういう小さな空間に、しっかり造りの良いものを詰めてるの良いな!」
「こんなレベルのアイテムとオブジェクトがあるんだったら、俺も和風で作ってみたい!」
「私も作りたいです!」
わき立つプレイヤーたちの声に、さらに集まってくる観客たち。
五月神社の見事な構成は、通りがかったプレイヤーたちにも効果覿面だ。
「和風ハウジングは、かなりレベル高いみたいよ」
「はい、間違いありません」
「はひっ」
レンたちがそう告げると、観客たちは大きな感嘆の息をつく。
次々に集まってくるプレイヤーたちは、メイがいるというだけでなく、神社の造りの良さにも惹かれている。
これだけの物を造れば、それも当然だ。
「メイちゃん、ありがとう!」
「五月晴れのおかげで、和風の時代が来るぞ……!」
「みんなの見る目も、変わってくるね!」
「いえいえー。こちらこそ、ありがとうございましたっ」
注目が集まり、歓喜の声を上げる和風ハウジング勢。
どうやら陰ながら頑張っていた者たちに、光が当たることになりそうだ。
だが盛り上がりは、これだけで終わらなかった。
「……なあ、この神社を囲む形で祭を開こうぜ」
「いいね! 五月神社の建立を祝して、盆踊りしよう!」
「あはははは! 盆踊りいいね!」
「俺、商人連中と食べ物売るわ!」
「私、花火の用意するよ!」
さらに盛り上がるのは、五月神社の話を見つけて駆けつけた掲示板組の一団だ。
「なんか、新しい名所になりそうなんだけど」
「本当に掲示板の方たちは、アイデアが無限ですね」
「お祭り、楽しそうっ!」
「わ、私も屋台をめぐりたいです……っ!」
提灯の光る五月神社は、雰囲気も良し。
こうして始まる祭は後々、運営も乗っかって大きな祭となっていく。
早くも盛り上がりは最高潮だ。しかし。
「じゃあ俺、メイちゃん音頭作ってくるわ! みんなでバナナ持って踊ろうぜ!」
「ええっ!?」
聞こえてきたまさかの言葉に、慌てて駆け出すメイ。
「浴衣代わりに魔物の毛皮を着て、頭に獣骨が正装だな!」
「それはダメですーっ! こちらの神社では、野生的な行動は慎んでくださーい!」
「「「あはははははっ!」」」
さっそく止めにかかるメイに、レンたちは笑うのだった。