軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

1326.アンブラの王

アンブラ国の端には、荒野へとつながる格納庫と滑走路がある。

出入り口をふさぐように、並ぶ警備の魔導鎧たち。

崩れた市街地を駆けてくるメイたちを見つけるや否や、即座に飛来する。

「【フルスイング】!」

しかしこちらの勢いは、もう止まらない。

メイの振り上げた剣が、一撃で魔導鎧を消し飛ばす。

さらにその後方から飛来した二体目の剣をかわしつつ、払いの一撃を放つ。

「【フルスイング】!」

強烈な一撃が炸裂し、魔導鎧が地面を跳ね転がる。

「【地壁の盾】!」

続く三体目が持っていた槍の刺突攻撃を、まもりが盾一つで受け止める。

「【誘導弾】【フリーズストライク】!」

弾かれた魔導鎧に、頭上から落ちる軌道の氷砲弾が直撃。

大きく体勢を崩すと、その視界に映ったのはツバメ。

「【空襲】」

空中から突き刺す一撃で、勝負あり。

五人はそのまま、滑走路への入口へと直進。

そこには壁のように居並ぶ、警備の魔導鎧たち。

「いきますっ! 【ソードバッシュ】だああああ――っ!!」

放つ衝撃波であっさりと消し飛ばし、さらに背後の石壁を吹き飛ばす。

五人は勢いのままに、滑走路へと踏み込んだ。

「セレーネッ!!」

大きな滑走路に響き渡る、ムーナの声。

そこには起動準備を始め、鈍い光を灯した闇色の大型船。

威圧感すら感じさせる造りは、神話に登場する悪の王が搭乗するのにふさわしい姿をしている。

「……存外、しぶといようだな」

今まさに、セレーネと共に大型船へ乗り込もうとしていたアンブラの王が、まとった魔導鎧のマントを払いながら振り返った。

「ムーナ、どうして追いかけてきたの……?」

妹を守るために全てを捨てたセレーネは、困ったようにつぶやく。

「セレーネ一人に、全部を背負わせないためだよ!」

向かい合う、両陣営。

ムーナの叫びを聞いたアンブラの王が、静かに語り出す。

「運命というのは奇特なものだな。月の終焉を目前にした我らが、長い時を経てこうして相まみえようとは」

見上げる、大型の飛行艇。

鯨の骨格を闇色に塗ったかのようなその機体は、月の崩壊後にアンブラの王が行った準備の一つ。

ルアリアに残された素体を元にして、完成させたものだ。

各所に灯る赤い光は、この月の船が起動し始めたことを示している。

「だが私には僥倖だった。月の獣の最強種……デラヴォロス。その目ざめはすでに目前だ。栄華を誇っていた月をたった一体で崩壊にまで追い込んだ驚異の個体。かつてはその狡猾さによって先手を打たれたが、今回は違う。そして我が新たな計画が正しかったことも、お前たちが証明してくれた」

そう言ってアンブラの王は、兜越しにメイたちを見る。

「青き星には、程よい文明があるのだろう? そしてそれは、我らの持つ力には及ばない。ならばすでに獣たちの棲み処となった月など放棄して、新たな星を奪うのみ。月から新たな盟主が降り立つのだ」

「月の獣を生み出して、文明を破滅に追い込んだ上に、まだ戦いを続けようと言うのですか」

ツバメが、アンブラの王に問う。

「ルアリアの血があれば、セレーネがいるのなら、それもできる」

「違うわ。この子たちがいないとできないという時点で、貴方の手には余る野望なのよ」

「な、長い時間を越えてきた二人にはもう、親交のある人たちは残っていないんです」

それは、他の誰でもないアンブラ王によって生まれた悲劇。

「二人は、絶対に守りますっ」

メイの宣言を受けて、最後にムーナが続く。

「セレーネは、返してもらうから……っ!」

向けられる五人の視線に、しかしアンブラの王は動じない。

「そうか、ならば構わない」

「「「「っ?」」」」

まさかの言葉に、驚きを見せるメイたち。

「姉妹のどちらでもいい。私にとっては道具に過ぎないのだからな。選ばせてやろう……どちらが月の獣の制動装置となり、我が従者となる?」

「これ以上二人を利用するような真似は、させません」

姉妹を騙し、月の獣の最強種デラヴォロスを生み出した、崩壊の元凶。

「二人とも、返してもらいますっ!」

ツバメに続く形でメイがはっきり言うと、ムーナも大きくうなずく。

「わきまえろ、身の程を知らぬ者どもよ。新たに青き星の支配者となるこのレクス・オブスクルスの厚情を捨て、あろうことか立ち塞がろうというのか?」

「そうなるわね。悪いけどもう、全員生還以外は見えてないの」

両者の間に、明確に生まれた対立。

走る緊張に、始まる戦いの気配。

「下がれ、ルアリアの娘」

そしてセレーネを部下の魔導鎧に退避させると、あらためてこちらに向き直る。

「やはり、この白き荒野が貴様たちの墓標となるようだ。及ばぬ星の者たちよ、すでに獣の世界へと堕ちたこの星から、我が覇道を望むがよい」

オブスクルスがそう告げると、大型飛行艇の起動準備が終わり、滑走路に等間隔で設置された魔法珠に光が灯った。

その先に続く広大な月の砂漠と、黒い星空。

そして半壊のビル群を残すだけとなった、かつての大国の姿。

自らの野望の果てに滅んだ古の王国を前に、オブスクルスは魔導鎧に魔力を走らせる。

「久しぶりかも、絶対負けたくない感じっ!」

「そうね。月を滅ぼした原因となった悪の元凶、そのうえ姉妹の力を悪用して千年以上も振り回した罪は、軽くないわ」

「必ず勝ちましょう」

「は、はひっ」

四人は自然と陣を組み、ムーナとラビを後方に置く形で構える。

「くく。下等な存在とは言え、人間と戦うのは久しぶりだ。血がわき立つぞ……!」

魔導鎧から噴き出す大量の魔力光が、夜の滑走路にまばゆく輝く。

「さあ、かかってくるがいい及ばぬ星の者たちよ! 貴様たちに戦いというものを教えてやろう!」

平和を望む姉妹を騙し、月を滅ぼした元凶。

アンブラ王、オブスクルスとの戦いが始まった。