軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

131.お姫様を救出します!

「……なあ、例のパーティまあまあヤバくねえか?」

天軍城に帰ってきた金糸雀は、さっそくローランに声をかけた。

「中でも地軍将、マジで侮れねえぞ」

「あれ、もしかしてメイちゃんを見に行ったの?」

「いや、フラついてたら偶然って感じだったんだけどよ。まさかミョルニルを当てて落ちねえなんて……」

「……本当に? でもあの速さと攻撃力で耐久性もあるってなると……ちょっと怖いね」

直に戦った金糸雀が、逃げ帰って来るという事態。

常勝の天軍とはいえ、さすがに『何かがおかしい』と感じ始める。

『――――両軍に、新たなミッションです』

そこに聞こえて来たのは、新ミッションの報告。

『――――ヤマトの双子姫が、危険地域に迷い込んでしまったようです』

『――――各陣営は、ヤマトの大鳥居からつながる『裏ヤマト・妖気町』に出向き、姫を救出してください』

『――――なお制限時間内での帰還、姫の救出に失敗した場合は敗北となります』

「どうやら次のミッションのようだな、行くぞ」

すでにキツネ像を持ち帰り、暇を持て余していたグラムがさっそく動き出す。

「なんだ? どうした?」

「いや、そうだな……行くか」

「うん、そうだね」

とはいえグラムは、スキルにも装備にも恵まれたトップクラスのハイレベルプレイヤー。

さらに天軍には人数もいる。

イベントの結果までは変わらないはずと、金糸雀たちは結論付けたのだった。

「お姫様の救出だって! なんだかカッコイイね!」

新たなミッションに、メイはさっそくワクワクしていた。

「今回は『裏』が舞台の様ですね。大鳥居の数は決まっています。姫が倒されてしまう前に急ぎましょう!」

「りょうかいですっ!」

大鳥居の場所は地図にない。

よってここはどうしても、ヤマトの地理に詳しい方が有利になる部分だ。

「近場の大鳥居にあてはあるの?」

「はい」

「案内してもらってもいいかしら?」

「分かりました。では帰り際を攻撃されないよう、地軍の皆さんには大鳥居付近に待機しておいてもらいましょう」

マーちゃんは階段下に集まっている、数名の地軍選抜メンバーに伝言を残す。

「それじゃ行くわよ」

「……え?」

レンはマーちゃんの手を取ると、そのまま欄干へ引き上げた。

「えっえっ?」

そしてそのまま、空へと飛び出していく。

「わあああああ――――っ!」

「大鳥居はどの辺りにあるの?」

分かっていても、うっかり驚いてしまうマーちゃん。

レンと二人、【浮遊】でゆっくりと滑空していく。

「お、お城から見て右斜め前。商店と商店の間に、目立たない大鳥居がありますっ」

その言葉を聞いて、レンは【銀閃の杖】を向ける。

するとメイたちは一度大きく手を振って、その方向に走り出した。

「すごい……」

下を見れば、建物を難なく跳び越えていくメイと、そのあとに続くツバメの姿。

「今年は本当に……初めて地軍が勝利できるかもしれません」

これまでメイたちがもたらした驚異的な成果を思い返して、マーちゃんは思わずこぼす。

「去年まで本当にひどい負け方をしていたので、さすがになかなか信じられなかったのですが……少しずつ感覚が変わってきています」

メイは空中で華麗に一回転、ツバメと楽しそうに会話しながら街を駆けていく。

「8年のイベント史上、最高のお手柄かもしれません。皆さんに声をかけたことは」

7年連続の完全敗北がよほど身に染みているのか、しみじみと言うマーちゃん。

「まあ私はオマケみたいなものだけど、どうせなら勝ってそれを証明したいわね」

「はいっ!」

空をゆく二人。

たどり着いたのは、商店街の一角に混ざるようにして建っている大鳥居。

「ここの鳥居は他と違って色が塗られていないんです。だから目立ちにくいんですよ」

「なるほどねぇ」

「さっそく行ってみよう!」

裏ヤマトも、すでに見知った世界。

メイは遊びにでも行くかのような軽い足取りで、大鳥居を抜ける。

すると、風景が一変した。

裏ヤマトは常に夜。怪しい雰囲気が立ち込めている。

「やっぱりこっちは不思議な感じだねぇ」

妙に大きな月が照らす静寂の世界に、人影はない。

メイとツバメは建物の屋根に上がり、迷い込んだお姫様を探してみる。

すると早くも、【猫耳】がピクリと動いた。

【聴覚向上】が、異常を捉える。

「向こうから女の子の悲鳴が聞こえるよ!」

「なるほど、救出ってことは悲鳴が付き物。メイには持ってこいのミッションね」

先行するメイとツバメ。

その先には、蛇の尾にトラの四肢を持つ妖怪、ヌエに追われる姫の姿。

「いたっ!」

HPゲージがあることから、これも防衛クエストで間違いない。

「【電光石火】!」

ツバメが先行して一撃。

そして振り返り様に放つ二連撃で、HPは半減。

これで敵のおおよその体力を計ることに成功。

「【ソードバッシュ】!」

とどめはメイ。

駆け抜ける衝撃波の一撃と共に、ヌエは粒子になって消えた。

「良かった、無事だった」

「冒険者さん、ありがとうございます!」

そう言って頭を下げた姫はしかし、その目を怪しく光る二つの灯篭に向けた。

「あれはなんでしょう」

そう言って走り出すと、灯篭を「えいっ」と蹴り飛ばす。

すると雷光が走り、新たなヌエの姿が。

「わあ! 大変だ—!」

メイは大慌てで姫のもとに走り、ヌエを再び【ソードバッシュ】で消し飛ばす。しかし。

「あれはなんでしょう! 不思議な感じがします!」

お姫様は、すでに走り出していた。

「……これ、面倒なことになるかもしれないわね」

遅れて到着したレンは確信する。

これは姫が危険に猛ダッシュしていくタイプのミッションなのだと。