軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

1300.光と音

「すごーい!」

大きな格納庫に、メイが尻尾をブンブンさせながら歓声を上げる。

ブライトの飛行艇格納庫。

駐機場には屋根があり、直に続くレーンはそのまま空に続いている形だ。

今では、40機に迫るほどの飛行艇を所持する紅の翼。

飛行艇が並ぶ光景は、壮観だ。

「こんなに大きな格納庫ができていたのですね」

「こ、これは何かあるかもしれませんっ」

「周りも見てみましょう」

まずは外観から。

格納庫はグレーのブロック積みで、灯る明かりの点滅は現実の飛行場を思わせる。

「夜の飛行場のようですね」

「本当ね。これはこれで、ただこの光景を眺めるために人が集まりそう」

時々飛行艇がブライト近辺の見回りのために発着しているのは、観客も大喜びだろう。

「あっ!」

歩き進めていくと、突然メイが声をあげた。

指さした先には、塔のような作りの管制塔。

そこに、ウィンディアで見たものと同じ光の紋様が映し出されていた。

夜の格納庫を見に来たのであろうプレイヤーたちも、気にしているようだ。

「これが一部で話題になってる、ブライトの紋様……ウィンディアのと同じよね?」

「同じだと思うよ」

「せっかくだし、話を聞きに行ってみましょうか」

レンはそう言って、格納庫の中へ。

時間は夜。

もちろんこの時間に格納庫の内部へ侵入しようとすれば、兵士たちが許さない。しかし。

「ウィンディアのエース……!」

四人を見るなり、敬礼で見送る。

すでに紅の翼とウィンディアは、協力関係にある。

エアや一部エース級のプレイヤーは、扱いも特別だ。

「あっ、兵長さん!」

紅の翼の兵長は、自機の手入れをしている最中だった。

「ちょっといいかしら?」

レンはさっそく声をかけてみる。

「ウィンディアのエースたちか。こんな時間にどうした?」

「管制塔の紋様について聞きたいんだけど」

「あれなら先日急に現れたんだ。部下に調べさせているが、何なのかは分かっていない」

「何か変わったことは?」

「ないな。異変の類も見つかっていない」

「そう」

「確かウィンディアにも現れたと聞いたな。気になるなら調べてみるといい。格納庫内も、お前たちなら好きに歩いていい」

そう言って兵長は工具を取り出すと、飛行艇の中へと入って行った。

メイたちは言われるまま、格納庫の中を見て回ることにする。

この場に入れる者は、ごくわずか。

木製の飛行艇が数多く並ぶ光景はそれだけで楽しく、広い格納庫でも足が弾む。

「ったく、毎晩毎晩……うるせえなあ」

「ん?」

そんな中、聞こえてきたのは不満げな声。

メイが見に行ってみると、一人の技師が文句を言っていた。

「どうしたんですかー?」

「オレは飛行艇の技師をやってんだけどよ、今は飛行艇同士の連絡をもっと密にするために、最近見つかった特殊な石を使って音を飛ばす実験をしてんだ」

「無線みたいなものでしょうか」

「そうかもしれないわね。考えてみると、飛行艇から飛行艇に声を届ける道具ってなかったし」

「ただよ、ここ数日うるさくて困ってんだ」

「うるさいってどういうこと?」

「実験に使ってる石を起動すると、何かが聞こえてくるんだよ。ちょっと前までこんなことなかったのによ」

「何かとはなんでしょうか?」

「石が何かと共鳴して、音を出してるとか?」

首と尻尾を傾げるメイ。

「ちょうど今夜も今から実験をやるところだ。お前さんたちも聞いていきゃいい」

技師はそう言って、さっそく石を使ったラジオのような物を取り出した。

そしてスイッチを入れると、まずは周波数がズレたラジオの様に、砂嵐のような音が鳴り出した。

「何かに反応してるのかと思ったけど、そういうわけでもなさそうなんだ」

技師がそう言った瞬間、新たに聞こえ出したのは、甲高い妙な音。

「……これって」

「少なくとも、自然現象的な音ではないように聞こえます」

「そ、そうですね。意図を感じます」

「これ……ドキドキするわね」

「本当だね!」

どこかから、何かの意志を持って送られているかもしれない音。

思わずレンが、顔を上げる。

「これはどこから聞こえてるの?」

「さあな、さっぱり分からねえ。ただこいつが鳴り続けている以上、連絡手段としては使えなくなっちまうんだよ」

そう言って技師は、「やれやれ」とため息をつく。

「これが何かを伝えるための音なら、その出どころが知りたいわね。完全に不規則ではないから、誰かが話してる声が乱れて聞こえてるわけではない。そうなると……何かを伝えているって考えるのが普通でしょう」

「定番はやはり、『SOS』でしょうか」

「その可能性もあるわね。世界のどこかにいる誰かが、発信しているメッセージ。それを偶然か必然か、この特別な石が傍受してるのかも」

「わあ、面白そうっ!」

もしかすると、どこかの誰かが送っているのかもしれない音。

だとすれば、それは何のためなのか。

まだ見ぬ展開に、メイたちは目を輝かせるのだった。