軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

129.彫像のもとに向かいます!

僧兵の罠をやりすごしたメイたちは、そのまま板張りの廊下を進んでいく。

本堂の外周を回るようにして進んだ先には、年季を感じるお堂が建っていた。

メイが扉を開くと、そこは暗闇の中。

「レンちゃん、そっちの方向に灯篭があるよ」

しかし【暗視】の効果で、内部の全てが見える。

魔法で火をつけるパターンだろうと予想して、メイが指を差す。

「待って、その灯篭って近くに何もない?」

「……あれ、何か水みたいなのがこぼれてる」

「それって延焼する仕掛けとかじゃないかしら。社が燃えて敵に気づかれるっていう形の」

「おおー、レンちゃんすごい……」

レンは見事に、運営の罠を見抜いた。

「完全に将軍を討たせるための仕掛けね。横着せずに松明でも使えってことかしら」

見れば脇には、かがり火と木製の火かき棒。

レンはそれを松明代わりに取ると、お堂の中へ進む。

「あっちこっちに穴が開いてるから、気をつけてね」

「そういうことなら」

「はい」

二人はそのまま、メイの裾をつかんで身を寄せる。

「ストップ!」

メイが急にその足を止めた。

すると、飛んできた長針が足元に突き刺さった。

「なるほどね。床の穴と飛んで来る針。これに慌てたところで灯篭が見えて、思わず火をつけたくなっちゃうって感じかしら」

穴の開いた暗い部屋。

そのうえ針による攻撃まで飛んで来るとなれば、どうしたって灯篭に火をつけたくなる。

何ともやっかいで、嫌らしい仕掛けだ。

「では、ここはわたしにおまかせくださいっ」

しかしメイに困る様子はない。

剣をしまうと、これまで通りのテンポで歩き出す。そして。

「【キャットパンチ】!」

飛んできた長針をあっさりと弾き飛ばした。

「【キャットパンチ】!」

松明の明かりでは目の前まで飛んで来ないと気付けないような攻撃も、メイにはその『発射』の瞬間が見えている。

続けて飛んできた長針も弾き飛ばし、そこからは早い動きで猫パンチを連打する。

「そこっ! 次はそこっ! パンチパンチ!」

面倒な仕掛けも支障なし。

「次はそっち! パンチパンチパンチからの――――やあっ!」

猫の尻尾で、長針を弾き飛ばしてみせた。

「…………」

「メイの動きに夢中ね」

「……なんだか猫じゃらし相手にたわむれる猫の様で、かわいいです」

尻尾がビクッとなった後に猫パンチを出す流れがよほど好きなのか、ツバメは目を奪われっぱなしだ。

「もうお終いかな?」

通常のプレイヤーなら泣くほどいやらしい仕掛けを、無傷でクリア。

「それでは先に進みましょう!」

メイは尻尾をフリフリ、至福の表情のツバメと苦笑いのレンを連れて進む。

お堂の最奥にあったのは、紋様の入った鉄扉。

「ここは将軍にしか開けられない仕掛けみたいね」

「おねがいします」

「はいっ」

右手を上げて、いい返事。

メイが鉄扉を押し開けると、そこは螺旋階段の続く吹き抜けになっていた。

「ここ、外から見えた五重塔の中ね」

五階は部屋になっているらしく、その床部分に空いた穴が見える。

「ここもおそらく、将軍が来てることを外に知らせちゃう仕掛けがあるんでしょうね」

壊れかけの提灯がつられていたり、崩れかけてる柱があったりと、見れば見るほど面倒なことが起こりそうだ。

「ですが、この感じなら問題ありませんね」

「はい! ここもわたしにおまかせくださいっ!」

メイは胸をドンと叩く。

「行くよー! 大きくなーれっ!」

まいた種は、シンプルに樹木が生えるもの。

伸びる樹の枝に立つメイ、座るレン。

「っ」

そんな中ツバメだけが乗り遅れた。

するとメイが、そんなツバメの手をつかんだ。

「よいしょっ」

そのままツバメをギュッと抱きしめて、にっこりほほ笑んでみせるメイ。

「あ、ありがとうございます……」

メイの胸元に抱かれて、ツバメは顔を赤くする。

「いえいえ」

そのまま三人は、伸びる樹に乗って罠を置き去りに。

五階まで一気にたどり着いた。

「……メイに抱きしめられてるツバメも、負けじとかわいかったわよ」

「っ!」

ほほ笑むレンのささやきに、ツバメはさらに顔を赤くしたのだった。

「結構大きいわね」

たどり着いた最上階。

そこには木製のキツネ像が安置されていた。

両手で抱えるほどの像はやはり、『将軍』の存在を見つけさせるため。

そして『彫像への攻撃』を、当てやすくするためだろう。

メイはこれを軽々持ち上げると、踵を返した。

「今回は、待ち伏せはいないわね」

来た道をそのまま戻っていく三人。

『将軍の居場所を知らせる』仕掛けを全て潜り抜けたため、寺社付近は静かなものだった。

メイたちは小走りで地軍城への道を進む。しかし。

「へへっ、出て来てみるもんだなぁ」

聞こえて来た言葉に、足を止める。

「誰か強いプレイヤーと戦えたら面白い。そんな感じで外回りに出てきたんだが……まさか将軍本人と会えるとはなぁ」

レンが息を飲む。

現れたのは、天軍グラム・クインロードの右腕。

背負った大きなハンマーと雑に結んだ金髪が特徴の少女、金糸雀だった。