軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

1284.決勝戦です!

「全力じゃなきゃ勝てないって……あのクローナが」

「しかも、楽しそうだ……」

メイのリザードとぶつかり合ったクローナは、笑いながらそう言った。

「行くよ! レギアーラ!」

クローナは皆が初めて聞くような大きな声で、相棒に指示を出す。

「まずは打撃からだ!」

低空飛行で一気にリザードの元に飛び込んできた白竜レギアーラは、爪を振り下ろす。

「りーちゃん! 回避でおねがいしますっ!」

斜め後方へのステップでかわしたリザードに対し、続けて放たれる反対の爪の振り上げ。

リザードは『く』の字を描くような形で下がり、これも回避。

「【翼撃】!」

するとすぐさま、光る翼による拳が続く。

右、左と放たれる大きな拳打を、リザードは必死に下がって避ける。

翼による攻撃は、リザードの肩をかすめて体勢をわずかに崩した。

「ここだ! 【光翼乱舞】!」

広げた翼に浮き上がる紋様から放たれた、ビームのような閃光は散弾みたいに広がる。

「これは防御するしか……!」

「こんなの避けられるはずねぇ!」

あがる悲鳴に、しかしリザードは動きを止めない。

右斜め前に一歩進んで、一つ目の光線を避ける。

そこから左に跳んで、空中でプロペラ回転。

二発目の光線を避けたところで、腕立ての姿勢で着地。

するとその頭上を、三つ目の光線が通り過ぎていった。

「「「おおおおおーっ!」」」

メイを思わせるような回避に、あがる歓声。

これにはクローナも驚いたが、それでも集中は途切れなかった。

「【テールウィップ】!」

即座に放った高速の尾撃は、光線を避けた直後のリザードでは避けれない。

叩きつけが直撃して、地面を転がった。

「レギアーラ! 【メガエーテルキャノン】!」

その口から放たれたのは、まばゆい光弾。

烈風を起こして飛ぶ、閃光の一撃だ。

「りーちゃん! 左に!」

メイの指示に転がると、直撃をギリギリで回避。

しかしすぐ後方で巻き起こった爆発にあおられ、コート上を転がった。

クローナは攻勢を続ける。

「詰めよう! このリザードは伝説と呼ばれるモンスターに全く引けを取っていないどころか、その枠すら踏み出すほどに動きがいい!」

スキル使用の硬直が解けた瞬間、すぐさまレギアーラに追撃を指示。

低空飛行で一気に距離を詰めると、起き上がったばかりのリザードの前に。

そのままタックルを仕掛ける。

「ここは防御で大丈夫だよっ!」

リザードは防御で直撃を避け、代わりに大きく後退。

するとレギアーラはさらに距離を詰め、再び爪の振り降ろしで攻撃。

続く振り上げまで、連続で回避したところで翼を握る。

「【翼撃】!」

そして左右の光拳で連撃を放つと、一撃目を回避したところで――。

「もう一回防御!」

二発目は無理せず防御。

「ここだ! 【光翼閃乱】!」

その言葉に合わせて、レギアーラが大きく翼を広げる。

先ほどの流れをなぞれば、もう一度【テールウィップ】につなぐことが可能。

ここで防御をさせても、ダメージを取った上で仕切り直しになるだけで損はない。

そう誰もが思ったところで、メイが直前の攻撃を防御をさせた意味が明らかになる。

「りーちゃん! 【水拳】!」

「「「っ!?」」」

リザードがその拳を地面に突くようにすると、レギアーラの頭上に『水で作られた大きな拳』が現れる。

ここまで誰も、リザードが【知力】を兼ね備えていることを予想していなかった。

【知力】によって威力を変える【水拳】は、怪獣の腕のような大きさ。

今まさに、広げた翼から光線を放つ瞬間のレギアーラに打ち込まれた。

盛大に弾け散った飛沫が、陽光を受けてキラキラと輝く。

体勢を大きく崩したレギアーラから放たれた無数の光線は、空に放たれ炸裂する。

「りーちゃん! 【超雷光蹴り】!」

弧を描く跳躍から放つのは、足に雷をまとわせての一撃。

蹴りが直撃した瞬間にまばゆい雷光を散らし、レギアーラを強く弾き飛ばした。

「「「うおおおおおおおお――――っ!!」」」

「リザードはまた、スキルを乗せ換えてたのか!」

「それをこんな『コンボの隙間』みたいなところに合わせてくるとか……っ!」

「りーちゃん、前進!」

地を転がって跳ねたレギアーラは、それでも態勢を整えリザードの追撃に対応。

放つ拳撃を、二枚の翼を扉のように閉じることで防御。

そこから跳び蹴りまで、しっかり受け止めたところで翼を開く。

「っ!?」

「翼による防御後、その中の本体は即時の攻撃ができるのか!」

開いた翼の中に見えたのは、唐突な反撃の光。

「【メガエーテルキャノン】!」

その口から放たれる光弾は、直撃すれば大ダメージ必須の必殺技。

翼で隠れていたため、前提モーションをほとんど見られなかったメイとリザードは驚きに硬直。

超高速で迫る光弾は今回、回避しても巻き起こす爆発がリザードに直撃する。

これはレギアーラの真正面にいたことが引き起こした、最高の危機だ。しかし。

「【雄叫び砲】だーっ!」

メイは慌てることなく指示を出す。

「「がおおおおおおおお――――っ!!」」

一緒に叫ぶその攻撃は、特に正面に強い判定を持つ。

そして【筋力】が大きく反映されるスキルだ。

ぶつかりあった光弾と衝撃波は、弾けて大きな爆発を巻き起こす。

しかしその範囲内にリザードの姿はなく、光弾を打ち破った衝撃波は真正面にいたレギアーラを硬直させる。

「そのまま【鉄拳】!」

リザードは駆け込み、放つ拳でレギアーラを弾き飛ばした。

「これでHPも危険域か……それならここで、勝負を賭けよう!」

伝説のモンスターが、追い込まれた危機。

クローナが選んだのは、奥義の使用。

右手を掲げると、体勢を立て直したレギアーラが翼を開き滞空。

その表面に描かれる紋様の輝きが、翼全体に行き渡る。

「行こうレギアーラ――――【閃光翔翼撃】」

天に飛び上がったレギアーラは、後方に大きく一回転してリザードに照準を合わせた。

高速の低速飛行で直進し、その身をプロペラのように回転させる。

これぞ、奥義級スキル。

輝きの尾を引いて迫る光の渦に、目を奪われる観客たち。

「……この攻撃」

しかしメイは、気づいた。

「空の王様と、同じ動きだ」

異世界からの侵攻に対する守護者である、三体の王と同じ形式のスキルを持つ。

それはレギアーラが、特別なモンスターということだ。

だがそんな特別をいくつも乗り越えてきたメイは、じっとその時を待つ。

「メイちゃん! 何か指示しないと!」

「あんなの、防御しても戦いの流れが変わっちまうぞ!」

「避けるのか、防御するのか、それとも攻撃をぶつけて相討ちを狙うのかの指示を!」

慌てふためく観客を前に、しかしメイは動かない。

そのためリザードも、目の前の脅威に対して動じず指示を待つ。

そして、その時は来た。

「――――今だよっ! 【猛ダッシュ】!」

指示から一瞬も遅れることなく、全力で駆け出すリザード。

迫るレギアーラに対して、真正面から特攻。

輝く翼による回転攻撃に、恐れることなく一直線に突っ走っていく。

そしてそのまま、プロペラの隙間を駆け抜けた。

「「「かわしたぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!」」」

すれ違った両者。

振り返ったリザードが、拳を握る。

そして制動をかけながらこちらを向いたレギアーラに向けて、走り出す。

「レギアーラ! 【光翼閃乱】!」

「【猛ダッシュ】!」

振り返ったレギアーラは翼を開き、紋様を輝かせる。

広がる閃光のライン。

しかしすでに駆け出していたリザードは、光線が唯一届かない翼の隙間。

胴体の前に踏み込んでいた。

「りーちゃんっ! そのまま【鉄拳】だああああ――――っ!!」

その腹部に叩き込まれた拳打。

吹き荒れる衝撃。

レギアーラは空に閃光を放ちながら地面を転がり、そのまま倒れ込んだ。

そして、魔法陣に消えていく。

「勝負あり! 勝者メイ・リザード組!」

「「「わああああああああああ――――っ!!」」」

勝敗が着いた瞬間、会場の全員が立ち上がってあげる歓声。

「リザードはちゃんと伸びるんだな……! しかもスキルの幅も広い。だからその分、必要動物値が重かったわけか!」

「ずっとクローナが余裕を見せなかったのは、その可能性に気づいてたんだ」

「そしてメイちゃんには、その可能性を活かせる素養があった!」

前評判最悪のモンスターの対決にもかかわらず、ずっとクローナがリザードを警戒していた意図に気づき、感嘆する観客たち。

そんな中、クローナがゆっくりとやってくる。

「まったく、大したものだね。リザードの評価を一変させるような戦いだったよ」

「ありがとうございますっ」

メイは嬉しそうに笑う。

そしてクローナが視線を向けると、リザードは――。

「――――光栄です」

「しゃべった――っ!?」

まさかの事態に、ひっくり返るクローナ。

「……ツバメ」

こんな大舞台の後でも、しれっとリザードに声を当てに行ったツバメに、レンとまもりは苦笑いするのだった。