軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

1273.ツバメとまもりのデモンストレーション

いよいよ明日、モンスター・ワールドグランプリ本戦が開始される。

しかしまだ時間は、夜になったばかり。

それでもメイたちが、早めにリザードの調整を引き上げたのには意味がある。

「次は私たちの番ですね」

「は、はひっ」

「いつもまもりさんが受け止めている攻撃に比べれば、難易度はイージーです。いつも通りいきましょう」

「はひっ」

「メイさんだったら「ドキドキしちゃうね!」と言いながら、笑っていると思います」

「し、尻尾がブンブンしている状態ですね……っ」

ここにメイがいたら間違いなくしている会話が、容易に想像できる。

穏やかに笑うツバメに、まもりは大きくうなずいてみせた。

運営はここでもう一つ、突発的な宣伝バトルを仕掛けるつもりでいる。

場所は、人通りの多い王都ロマリア。

その大通りの先に置かれたポータルの前なら、人通りの量も間違いなし。

モンスター連れのプレイヤーも多い、ロマリア広場。

人員が持ち場についたところで、パフォーマンス開始だ。

「ずっと欲しかったモンスタースキル、やっと手に入ったよ!」

「良かったね! これで明日のモンスター・ワールドグランプリでも活躍できそう!」

スターダスト団の女性二人が、大きなアクションで大通りを進めば、集まる人の視線。

「おいおい、そいつは俺が探してたスキル【フロストナックル】じゃねえか!」

「ちょうど良かった、そいつを寄こしな」

「い、嫌ですっ!」

現れた二人組の男に、スターダスト団の女性は首を振る。

しかし男たちは、さらに詰め寄っていく。

「ああ? テメーの弱っちいペンギンなんか、何覚えたって一緒だろ?」

「俺のライノウォリアーが使った方が有効なんだよ! とっとと寄こせ! ライノ、【タックル】だ!」

「ああっ! ペンギンちゃん!」

二メートルの体高に、重厚な筋肉。

迫力のあるサイのモンスターが、ペンギンのモンスターを弾き飛ばした。

突然の凶行に、ざわつく大通り。

そしてスターダスト団の女性が、悲しそうにスキル書を差し出したところで――。

「渡す必要はありません」

現れたのはツバメ。

「あ、ありませんっ」

隣り合うまもりも、声を振り絞る。

「おいおい、見てなかったのか? 雑魚にスキル書は要らねえんだよ!」

「その理屈で言えば、私たちが貴方たちに勝てばスキル書は要らないという事になります」

「……ああ? 上等だよ、やってみな。できるもんならよぉ!」

激昂する男に対し、ツバメとまもりは【トレーナーグローブ】を装着。

ツバメは右手だけを、真横に伸ばす格好。

まもりは同じく右手を、胸元で「ファイト!」といった感じで握る格好。

異なる召喚ポーズで呼び出した魔法陣から、二体のモンスターがゆっくりと登場する。

「……ハハッ! ハハハハハハハッ! なんだそのふざけたモンスターは!」

「そんなんで、俺たちのライノウォリアーに勝てると思ってんのかよ!」

男たちは、二人の呼び出したモンスターを見て笑う。

現れたのは、1メートル強ほどの体躯をしたヒヨコと、丸々としたハムスター。

「見ろよ! モンスター同士で戦うみたいだぞ!」

「ていうかあれ、五月晴れの子たちだろ! 本物を見るのは初めてだ!」

「あんなモンスターで、勝てるのか……?」

付近にいたプレイヤーたちが、自然と集まってくる。

にらみ合う両者、高まる緊張感。

「やれライノ! 力の違いを教えてやれ!」

「俺たちに逆らったことを、泣いて後悔するんだなぁ!」

そして、バトルが始まった。

「やれライノ! 【轟腕打ち】だ!」

大きく激しい踏み込みから、振り下ろされる鉄槌。

「ヒヨコちゃん! 右へステップです!」

ツバメの指示に応えて、ヒヨコは素早く右へ。

すると地面を揺らすほどの一撃が、地面にめり込んだ。

「今です! 【つつく】!」

そして即座の反撃。

ヒヨコの【つつく】攻撃は、ツバメが選んだもの。

キツツキ並みの乱打は頭部がブレて見えるほどで、観客たちがいきなり噴き出しそうになる。

その勢いにバランスを崩したライノウォリアーを見て、仲間がすぐにフォローに入る。

「そのヒヨコを討て!」

怒涛の勢いで駆けつける二体目のライノウォリアーは、手にした石斧をヒヨコに叩きつけにいく。しかし。

「ヒヨコちゃん! 【鳴き声】!」

「ビィィィィィィィィ――――ッ!!」

「ッ!?」

ぶつけられた【鳴き声】は、朝を告げるニワトリのように豪快。

石斧のサイ戦士が、硬直に追い込まれた。

「ハムちゃん! 【首狩り前歯】ですっ!」

その隙を逃さず、まもりのハムスターが鉄より硬い前歯でライノウォリアーの脚に噛みつき、こちらは転倒を奪い取った。

「ヒヨコちゃん、【羽ばたき】で続いてください!」

ヒヨコが小さな翼で不器用に羽ばたくと、意外な強風が吹き荒れる。

体勢を崩していた方のサイは、そのまま転倒。

すでに転んでいた方のサイは、転がり倒れ込む。

「いきますっ! 【蓄食】!」

この隙にまもりのハムスターは、床にべったり座って『ヒマワリの種』を食べ始めた。

凄まじい勢いで、その頬袋をパンパンにしながら食べ続ける。

「「「かわいい」」」

その光景に、見惚れる観客たち。

「くっ! やれライノ! とにかく攻撃を当てるんだ!」

先んじて体勢を立て直したライノウォリアーは、突撃を仕掛けてくる。

その初撃は、蹴り上げだ。

「ヒヨコちゃん、下がって」

かわすと上げた足をそのまま踏み込み、サイは鉄槌の振り降ろしへと続ける。

「そのまま右へ」

「ぶちかませ!」

「さらに右へ迂回しつつ、距離を取ってください」

ツバメはあくまで冷静。

驚異的な速度を誇る敵との戦いに慣れているため、指示は的確だ。

「もう一度【羽ばたき】を!」

再び放たれた風に、ライノウォリアー二体は下がって距離を取る。

しかし、この距離間こそがツバメの狙い。

「行きましょう! 【チキン・マッハキック】!」

走り出すヒヨコは、予想外の速さ。

砂煙をあげながらの加速で一気にスピードに乗ると、そのまま低空跳躍。

ライノウォリアーの頭部に、蹴りを叩き込む。

電車にでもぶつかったのかという凄まじい勢いで跳ね飛ばされたサイ戦士は、激しく回転しながらバウンドして、近くの店の建物にめり込み倒れ込んだ。

「くっ! まだ終わったわけじゃねえ――っ!」

とんでもない勢いで弾き飛ばされた相棒のモンスターを見て、気合の咆哮と共に振り返る男。

前歯で倒され転がったライノウォリアーを起こし、反撃を狙う。

「……ん?」

そして自分にかかっている影に気づいて、顔を上げた。

「ハ、ハムスターがなんか……デカくなってるぅぅぅぅ――っ!?」

【成長の種】を食べたハムスターは、その体躯を10メートルほどの巨体に変えていた。

「ハムちゃん! 【圧し掛かり】ですっ!」

「……えっ?」

それは4階建ての建物が、倒れ込んでくるような状態。

倒れ込んで来たハムスターはライノウォリアーを巻き込み、ズズンと無慈悲な音を立てた。

それからポンッと冗談みたいな音を立てて、元の大きさに戻る。

するとそこには、大きなへこみと共に倒れ伏したライノウォリアーの姿が。

「「「「おおおおおおおお――――っ!!」」」」

決着の瞬間、わき上がるロマリア広場。

気付けば、驚くほどの人だかりができていた。

「チッ、引くぞ!」

「覚えてろ……! 次はこうはいかねえぞ!」

男たちはライノウォリアーを魔法陣に引き下げると、人ごみの中に逃げ去っていった。

「迫力ある戦いだったなぁ……」

「こんな戦いが見られるんだったら、明日は見に行ってみようかな」

さっそく盛り上がり出す、ロマリア広場の観客たち。

「あ、ありがとうございましたっ!」

「いえ、無事でよかったです」

戦いが終わると、駆け寄って来るスターダスト団の女性二人。

ここでツバメとまもりを中心に、四人一列に並ぶ。

「いよいよ明日、モンスター・ワールドグランプリが開催されます! 皆さんぜひ、遊びに来てください!」

「「よろしくお願いします」」

スターダスト団の言葉に続けて言うと、わき上がる拍手。

ツバメとまもりのデモンストレーションも無事、大盛り上がりのまま終了した。

「完璧でした!」

「さすが五月晴れですね! 皆さん動物値が高いので、指示も的確。私たちもうっかり見惚れちゃいました!」

メイの突出した動物値に隠れがちだが、実は『ソロ時には猫などだけが友達だった』二人も、数値は十二分に高い。

その上、普段から驚異的な強さを誇る魔物と戦っている二人は、戦闘の組み立てや指示も見事。

まさに完璧な流れで、明日のイベントにつなぐことに成功した。

「き、緊張しましたあ……っ」

これで、本日のお仕事も完了。

「お疲れさまでした。この後は少しだけ打ち合わせを入れて……お待ちかねの、夕食タイムです」

「はひっ!」

まもりはその目を、キラキラと輝かせた。