軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

1267.ミッションです!

「ありがとう、助かったよ!」

ウェーデンの片隅で畜産業を営むNPCが、白毛猿の打倒を見て駆け寄って来る。

メイはリザードを抱き上げて、そのまま胴上げ。

初戦の勝利を祝う。

「これで白毛猿に、うちの豚たちが狙われることもなくなるだろう」

モンスターによる、魔物の討伐。

完全に『指示』だけでの勝利は、普段と違う形式の戦い。

育成型のクエストならではの息を飲む感じは、なかなか新鮮だ。

「そうそう、これはお礼の本だ。ぜひ君のモンスターに読ませてあげてくれ」

【雄叫び砲】:一定の距離を駆けて硬直を奪う、指向性のある雄叫び。【筋力】次第で無形攻撃を霧散させる。

「メイさんの【雄叫び】の範囲を、前方に向けた感じでしょうか」

「トーナメントの間にいきなり覚えさせて、裏をかくのにはもってこいね」

そんなことを、四人で話していると――。

「……ん?」

メイがいち早く、異変に気づく。

それから少し遅れて、NPCが顔を上げた。

「この音は……まさか」

するとこちらに向けて一直線に飛んでくる、大型の鳥が見えた。

翼を見れば、その大きさは4メートルになろうかという大きさ。

一気に滑降して、倒れたままの白毛猿のもとへ。

「……あれは、フロルアグイラか!」

黒の翼に白の紋様のような羽を持つ、巨大なワシの魔物は雪を舞いあげ着地。

付近を見渡した後、白毛猿をつかんで空へと帰って行く。

「ここはもう、捨てた方がいいかもしれないな。あの巨鳥に見つかってしまったら、もう家畜たちも見逃してはもらえないだろう」

一転、肩を落とすNPCは逃走の準備を開始。

「君たちもさすがに今回は逃げた方がいい。あれは白毛猿よりもやっかいだからね」

「ミッションみたいね。ここで逃げ延びてもクエスト自体は達成扱いになるわ」

「そ、そのようです」

「そういうことなら、私たちが守りますっ!」

「……本当かい? だがヤツは直接畜舎を攻撃に来るはずだ。それを防ぐにはオトリが必要になる」

「モンスターをオトリにしろっていうことね。あと他に注意点は?」

「ヤツも戦況が不利なら、無理はせず機を見るだろう……ここはコンビでの戦いで、ヤツを討つ。それがいいだろう……!」

「トレーナーとモンスターのコンビネーションってことね」

「おまかせくださいっ!」

メイが一緒に戦っていい。

これを聞いた時点で、レンたちは観戦モードに変更。

NPCが恐怖と覚悟で真剣な面持ちをする中、横並びで雪の上に座る。

「こ、こちらどうぞっ」

「あら、ありがとう」

「とてもおいしそうです」

ウェーデン到着と同時に買っておいたホットチョコレートを飲んで、一息。

いよいよ神に祈り出すNPCとの表情の寒暖差が、とんでもないことになる。

「きたっ!」

白毛猿を巣に運び終えたのか、フロルアグイラが豚を襲いに戻ってきた。

それを見たメイが距離を取ると、残ったリザードに向けて巨鳥が襲い掛かってくる。

滑空から、そのまま鋭く大きな爪による【つかみかかり】を放つ。

「右に避けて!」

メイに指示に合わせて、サイドステップで移動。

正面からの飛来に早すぎる回避行動を取ると、攻撃の軌道を修正される可能性がある。

そのため少し遅れての指示で、しっかり回避。

ここでメイがリザードの横に駆けつけて、共闘が開始される。

フロルアグイラは円を描くような形で飛び、戻ってくる。

「直線じゃなくて、曲がりながらの接近だね」

それは飛行機なら、翼の先を擦っていくような形での攻撃だ。

「ジャンプします! せーのっ!」

分かりやすくしゃがんで、メイはリザードに合図を出す。

「【ラビットジャンプ】!」

そして大縄跳びのように、一緒に跳躍。

リザードは通常のジャンプでも、なかなかの高さを誇る。

こうして、通り過ぎていく形での攻撃は問題なく回避。

するとフロルアグイラはわずかに上昇しながらこちらに向き直ると、両の翼を広げた。

「走りますっ!」

この瞬間、メイはリザードと一緒に左側に走る。

すると巨鳥は翼を背中側に反り、力強く前方へ振ってきた。

「この動きはほとんど、『風』か『羽』攻撃だからねっ」

メイの言う通り、フロルアグイラは大きな羽矢を飛ばして攻撃。

しかしすでに走り出していたリザードとメイには当たらない。

「なるほどねぇ」

「参考になりますね」

「はひっ」

これには、ホットチョコレート飲み部隊の三人も感心。

吐き出す甘い息が、白く煙る。

脚を斜めに重ねて座るレン、女の子特有の座り方のまもり、もちろんツバメは正座だ。

「【ウィンドクロー】!」

メイの指示に、リザードはすぐさま攻撃。

二連の空刃で狙うが、これを飛行でかわしたフロルアグイラは反撃に入る。

魔力をまとい、流星のような角度の突進でリザードを狙う。

「いくよっ」

しかしメイは、ここまで予想して【ウィンドクロー】を放たせていた。

鳥型の魔物の必殺技は、羽乱舞や暴風でなければ『特攻』になりがちだ。

正面から喰らえばさすがに、リザードも高いダメージを受けるだろう攻撃。

しかしメイは、慌てることもない。

しっかり敵の接近を待ったところで――。

「いまだよっ! 【マグマ・スプラッシュ】!」

リザードが地面に腕を突くと、自身を中心に吹き上がる溶岩の飛沫。

量はそこそこだが、飛来する大鷲には完全なカウンターだ。

燃え上がる炎に、体勢を崩したフロルアグイラ。

翼の端をリザードの腕にかすめさせながら墜落し、そのまま地面を転がる。

雪飛沫を上げて転がったフロルアグイラは、そのまま上手に身体を起こし、振り返るが――。

「【猛ダッシュ】!」

そこにはすでに、リザードの姿。

「そのまま【鉄拳】だーっ!」

拳を掲げて応援するメイ。

直撃したリザードの拳は、巨鳥すら弾き飛ばす。

再び白煙を上げ、フロルアグイラが高く跳ね上がった。

「【バンビステップ】!」

そしてこれはトレーナーと、一緒に戦えるクエスト。

すでにメイは、1ドット程度でHPを残した巨鳥のもとに駆けていた。

「【ラビットジャンプ】からの――――ジャンピング【ソードバッシュ】だああああ――――っ!!」

放たれる豪快な振り降ろしの一撃が生み出す衝撃波。

雪を猛烈に巻き上げ、駆け抜ける。

「……あっ」

そのまま粒子になって消えいていくフロルアグイラ。

そして盛大に巻き上がった雪が、まとめて降り注ぐ。

主に、手に汗を握っていたNPCに。

「まさか、フロルアグイラまで倒してしまうとは……」

ホットチョコレート部隊の数メートル前で、雪像のようになったNPCが感嘆の声をあげる。

そして戻ってきたメイに、もう一冊の本を差し出した。

「これでこの付近は平和になるでしょう。ありがとうございました……こちらもどうぞ」

【水拳】:水で作られた拳を上から叩きつける。【知力】で大きさが変わる。

「いいわね、二つ目のスキルも良さそう」

そう言いながら、NPCに積もった雪を払う四人と一匹。

こうしてミッションも見事に達成して、メイたちは二つ目のスキル書を入手した。

「りーちゃん、ないすだよーっ!」

「恐縮です」

「わあーっ!? りーちゃんがしゃべった!?」

「ツバメね」

「あ、あまりに自然で、本当にリザードが話していたかのようでした」

「ツバメちゃん、ドンドン技術が上がってる……」

「恐縮です」

メイはまもりの差し出したホットチョコレートを受け取ると、うれしそうに一口。

妙に言葉使いが渋いツバメリザードに、笑うのだった。