作品タイトル不明
126.勝負をかけますっ!
「よ、ようやく抜けられました」
巨大黒ウサギの下から抜け出したツバメが、安堵の表情でサイコロをふる。
出た目は4。
『――――サイコロで『3』が出るまで、このマスを抜けられません』
そして、白目。
「……確率物ね。ツバメが絶対止まっちゃダメなマスじゃない」
「どうやら私は、ここを出られず生涯を終えるようです……あとはお願いします」
虚無状態のツバメの肩を、レンはポンと優しく叩く。
6回目のサイコロが出した目は2。
『――――現れた怪鳥を、スキルで打倒してください』
「それ倒しても結局5マス戻されて『酔う』やつじゃない!」
前回とまるで同じ展開。
それでも一応【連続魔法】で怪鳥を倒し、案の定酔い直し。
「やああああ――――っ!」
メイも変わらず、酔いであさっての方向に駆けて行き――。
「ひゃああああ!」
マーちゃんもキッチリ一本橋から落下して、HPを三割減らす。
誰も前に進めないまま、7ターン目。
ツバメは『3』が出なければ抜けられないマスで、途方に暮れていた。
「私の番ですか……あっ」
『酔い』で揺れる視界のせいで、サイコロから手が放れてしまった。
転がっていくサイコロに、思わずうなだれる。
「踏んだり蹴ったりです……」
ため息とともに顔を上げる。
出た目は3。
「こ、こんなところで普段の【スティール】失敗分を収束させないでください……っ!」
「ツバメちゃん、おめでとー!」
「あははははっ! 次の【スティール】はまた地獄を見そうね」
まさかの一発打開に、腹を抱えて笑うレン。
ゆっくりサイコロを手に取ると、ここで大きく息をつく。
「……さすがにそろそろ、この泥沼を乗り越えないとマズいわね」
ターンの消費具合は、まさにゲーム側の狙い通りだろう。
転がすサイコロの目は5。
ここで、流れが変わる。
『――――酔い覚ましの冷水を、二本手に入れました』
「ちょっと待って。これ、大きな分岐点になりそう」
そして少し考えた後、その視線をメイに向ける。
「ここはメイにお願いしてもいい?」
「わたし……?」
メイは首と尻尾を傾ける。
「このままだと全員『酔い』でターンを使い尽くす可能性があるわ。だから誰かにクリアを託すのであれば、全体的にステータスの高いメイと、唯一【幸運】の高いマーちゃんがいいと思って」
「私も賛成です」
「……うんっ!」
奮い立つメイ。
猫の尻尾がピンと立つ。
「分かりました、がんばりましょう!」
「酔い覚ましは、メイとマーちゃんに」
レンがそう告げると、ライトエフェクトと共に二人から『酔い』の効果が消える。
うなずき合う、メイとマーちゃん。
ここから二人は、勝負をかけにいく。
「それじゃあいくよーっ!」
メイは【バンビステップ】からの【ソードバッシュ】であっさりマンモスを吹き飛ばし、戦線に復帰。
サイコロも6を出し、同じく一本橋を渡り終えたマーちゃんと共にゴールを目指す。
8ターン目。
残りのマスを考えると、距離的には厳しい状態だ。
『――――暴走する猪をスキルで止めてください』
『――――襲い来る怪鳥を落としてください』
ここでツバメとレンは『また全体が酔ってしまう』可能性を考慮して、あえて攻撃を外しマスにとどまる。
「次はわたしだね! てーいっ!」
転がるサイコロが出した目は5。
『――――逃げ出したトラをつかまえて、檻に戻してください』
「りょうかいですっ!」
メイは真っすぐトラに前に進むと、その【敏捷】で暴れるトラの攻撃をかわして尾をつかむ。
あとはそのまま【腕力】に任せて檻に押し込んだ。
「次はマーちゃん! おねがいしますっ!」
「お任せください!」
『――――運試し。神社にてクジを引き『中吉』以上を手にして先に進みましょう』
「そういう勝負なら、望むところです!」
舞台は神社に早変わり。
マーちゃんは迷うことなくクジを引き、からくり少女に突き付ける。
「『大吉』です」
一発で勝負を決め、9ターン目へ。
レンとツバメは、ここでも静観モード。
動かないことで、メイたちに余計な状態異常を起こさないようにする。
「やあっ」
メイがふるサイコロ。出た目は6。
『――――続く雨で鉄砲水が起きました、流されないよう注意してください』
求められるのは【耐久】値。
「このくらいなら……負けないよっ!」
メイは腰をグッと落として、荒れ狂う水流も難なく切り抜ける。
「さすがメイさん! このままいきましょう!」
勢いのままに、マーちゃんがサイコロをふる。
出た目は5。
『――――ヤマトに妖気があふれ出しました。生贄を差し出して、鈍足の呪いを止めてください』
「それは……どういうことでしょうか」
『――――生贄が今いるマスから動くと、サイコロの目が1~3しか出なくなります』
「最後の最後に、こんな形で足止めしてくるの?」
「本当に恐ろしいすごろくです」
息を飲む、レンとツバメ。
緊張感の中、マーちゃんはゆっくりと顔を上げる。
「……分かりました。クリアはメイさんに、地軍将に託します。ここは私に任せて先に行ってください!」
「マーちゃん!!」
9ターン目での足止めは、実質的なゲームオーバー。
マーちゃんはクリアをメイに託し、生贄になることを選んだ。
そして、10ターン目。
ゴールまでのマスは、残り――『6』
「6以外ダメなんだね……」
メイは6の目を正面に向け、高く掲げた。
「……よろしくお願いします! ……勝負っ!」
天高く放り投げたサイコロは、大きくバウンドして転がる。
クリアは目前。
誰もがその行く末を、固唾を飲んで見守る。
そんな中、出た目は……5。
ゴールには、あと一歩届かない。
進む駒。肩を落とす四人。
『――――猛烈なスコール襲来』
たどり着いたマスは、よりによって大雨だった。
……しかし。
『――――迫る雨雲から逃げ切り、1マス進め』
たどり着いたマスで、最高の指示が出た。
すぐさま、降り出す雨。
「メイ!」
「メイさんっ!」
「地軍将っ!」
「まかせてっ! 【裸足の女神】! 【バンビステップ】!」
猛スピードで走り出したメイは、全力で駆け抜けていく。
迫り来る雨雲を置き去りにして。
するとその動きに合わせて、メイの駒もゴールへ到着。
テープと紙吹雪が、一斉に放たれた。
「やったわ!」
「はい! やりました!」
「さすがメイさんですよ!」
「みんなが道を作ってくれたおかげだよーっ!」
メイはぴょんぴょん飛び跳ねて大はしゃぎ。
すぐさま三人のもとに駆け付けると、勢いのままに飛びついた。
見事、ミニゲームをクリア。
「ふふ、いい息抜きになったわね」
「とても楽しい時間でした」
「うんっ! すっごく楽しかったよ!」
そんな三人を前に、マーちゃんは思わず拳を突き上げる。
「最高の展開でしたね! この勢いで、後半戦もがんばりましょうっ!」
「「「おおー!」」」