軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

1246.お出かけです!

「皆さん、本日はこちらでのご宿泊になります!」

「「「「おおおおーっ」」」」

運営の担当者に連れられて来たのは、なんと大手幹線駅から徒歩で行ける距離にある、一軒の旅館。

和風でありながらもモダンな造りの宿は、屋根に瓦。

明るい色味の木材で作られた小さな門には、淡いブルーの暖簾が降りる。

「綺麗な旅館ねぇ」

「は、はひっ」

松や笹が並んで緑を飾っている石畳には、等間隔に置かれた小型の灯篭。

「五月晴れの皆さんにはお世話になっておりますので、今回はイベントの運営に当たって、こういった場所からのご参加という形を考えさせていただきました」

広告を打って始める、星屑の新イベント。

また多くの人が集まりそうなこの企画は、メイがそのイメージキャラになっている。

様々な召喚獣や使い魔と楽しそうにしている瞬間を捉えたポスターは、早くも好評だ。

「こちらがお部屋のカギになります。テーブルにイベントの進行表と、旅館での食事の時間などが記載されているので、ご確認をお願いします。あとはインタビューなんかもありますので、そちらもぜひ!」

「はいっ!」

「それではまた後ほど。まずはイベント開始のセレモニーからになりますので、よろしくお願いします」

「りょうかいですっ!」

さつきたちを部屋の前に案内した運営担当は、ここ最近の好調がうれしいのだろう、笑顔のまま去って行った。

「部屋、見てみましょうか」

「そうですね」

「楽しみっ!」

「はひっ!」

「さすがに旅館のドアの先にあるのは、部屋だけよ?」

ここでもしっかりと可憐を先頭にして、その背に隠れるさつきたちに苦笑い。

静かに、ドアを開ける。

するとさっそく目を輝かせながら、三人は部屋の内装を確認する。

「ええええええええ――――っ!?」

さつき、その広さと綺麗さに驚愕。

「四人一緒がいいって言ったけど……この広さってもうスイート級じゃない?」

「本当ですね。正方形の畳を色違いで交互において市松模様にするなんて、とてもお洒落です」

部屋の端に置かれたベッドは大きいが何より低く、厚い布団を三枚ほど重ねたような感じだ。

それが、不思議と高級感を出している。

絹のような素材で作られたカバーも、柔らかな光沢を持っていて美しい。

部屋の壁は落ち着いた枯草色で、木製テーブルの上には、渋い焦げ茶色の茶器が置かれている。

「なんか少し、緊張しちゃうね……!」

「は、はひっ!」

「大丈夫よ、ベッドで飛び跳ねたりしなければ」

「ダイブまでにしておきましょう」

深くうなずくつばめの返答に、思わず笑みがこぼれる可憐。

「せっかくだし、私は着替えちゃうわね。このままじゃ落ち着かないし」

見れば部屋には、こちらも生地感の良い浴衣に羽織が用意されている。

可憐は早々に着替えを始めるが、落ち着かないのも当然だ。

「レンさん、間に合わなかったのですね」

「間に合いはしたんだけど、香菜に今度は『神の使い』になったの? って言われたから、制服に着替えてきたのよ」

実は可憐、さすがに今回は私服を用意しようとネットで服を注文した。

黒を徹底的に排除すれば、好きなものを選んで問題ないだろうという、思い切った感覚での選択。

その結果『白夜側』みたいになってしまい、妹の香菜に冷静なツッコミを入れられてしまったのだった。

それが、つい昨日のことだ。

可憐に残されたのはもう、制服しかなかった。

「お茶をどうぞ」

「あ、ありがとうございますっ」

つばめが用意した緑茶を一口。

四人、テーブル備え付けのソファ座椅子のようなものに腰を下ろして息をつく。

「こうして同じ部屋に一緒だと、修学旅行みたいだねぇ」

「本当ねぇ」

「夜中にこっそりヘッドギアかぶったの、懐かしいなぁ……」

「それもう、京都とジャングルが混ざって記憶していたりしない?」

「今でも夢の中で、法隆寺とゴールデンリザードが一緒に出てきたりするよ!」

「やっぱり……」

「レンさんは、何かよく思い出すことはありますか?」

「一言だけ言えることは、真っ黒なレースの日傘を差していたわ。学年で……私だけが」

そして鬼門がどうだの、陰陽がどうだのと同じ班のメンバーにクールかつ得意げに語って、とてもやさしい笑みを向けられた。

さらに「星城さんは物知りだね」と言われて、調子に乗っていたことを思い出す。

「メイ、今すぐ私を【ソードバッシュ】で消し飛ばして。過去ごと」

「ええっ!?」

歴史ごと消せという無理難題に、さすがにさつきも驚愕する。

「今も思い出すと、胸が嫌な高鳴りを始めるわ……」

そう言ってお茶を飲み、鼓動を落ちつける。

一方のまもりは、旅館等のテーブルに置かれていがちな『お試しの土産菓子』がなくて、ショックを受けていた。

「あらためてスケジュールを確認すると、空いている時間とイベントのための仕事の時間は、明確に分かれていますね」

つばめはテーブルに用意された運営の予定表を見ながら、流れを再確認。

「オープニングまでは、まだ結構余裕があるね」

「き、緊張しますっ」

「大丈夫よ。メインはメイだし、期待されてるのはいつも通りの私たちなんだから」

「少しのんびりしたら、先に報酬の受け取りにでも行きましょう。いきなりイベントに向かうより、余裕が持てると思います」

そんなつばめの言葉に、まもりもこくりとうなずく。

こうしてさつきたちは、お茶を飲みつつ一息。

多くの人が期待している星屑の新イベントを前に、まずは報酬の受け取りに向かうことにした。