軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

1238.王都防衛戦

「各機、絶対に魔物たちをブライトに入らせるな! この空域は我らの王国を守るための最終防衛線となる」

「「「「おおおおおおおお―――っ!!」」」」

兵長の声にあがる声は、多くのプレイヤーを含めた飛行艇団兵たちのもの。

ブライト王国から1キロほどのところに展開した、40機に迫ろうかという数の飛行艇は、全てブライト王国飛行艇団・紅の翼のものだ。

「まさかこのような形で、二度目の大型クエストが始まるなんて……」

自機の舳先に立ち、戦いの時を待つのは九条院白夜。

淡い金色の髪を揺らし、飛行艇団の中心艦の一つを駆るエースとして、堂々とした姿を見せる。

「あのレーザーブレスの魔物が来るんなら、大変なことになりそうだな」

地下洞窟から大慌てで帰ってきたナギは、スティック菓子をくわえながら槍を揺らす。

「なんでも魔物の群れを招集しながらこっちに向かってるらしいっスね。あの巨竜は火力も高いし、果たしてどうなる事か」

ディアナが応えると、双眼鏡で様子をうかがっていた兵長が、静かに振り返る。

「来たぞ、ヤツらだ」

そして、その手を高く掲げる。

「総員戦闘配置! 巨竜は無数の仲間を連れてブライトへ向かって飛行中! 戦いは激しいものになるだろうが、意地でもこの空域をまもり抜け! 一匹たりとも逃すな!」

「「「「了解っ!」」」」

見えたのは、巨竜を中心にしてこちらに向かう飛行型魔物の集団。

巨竜は挨拶代わりとばかりに、頭部の結晶を輝かせ始めた。

「来るぞ! レーザーに気を付けろ!」

大きな輝きと共に走るレーザーが、兵長たちの艦の真横を通り過ぎていく。

直後、吹き抜ける激しい衝撃に飛行艇が揺れると、敵陣が一斉に接近を開始した。

「撃てぇぇぇぇ――――っ!!」

敵の中でも飛行速度に自信のある個体が、いち早く距離を詰めてくる。

これに対して紅の翼はまず、一斉砲撃で対応。

「そこぽよっ!」

スライムの上手な射撃が、グリフォン型の魔物を撃ち落とした。

「そこですわ! 【エーテルジャベリン】!」

対して白夜は砲台をクルーに任せ、隙間を抜けてきた敵に魔法攻撃をぶつけて落とす。

ここで一瞬でも、回避のために『飛行』を『滞空』に変えた個体をディアナは見逃さない。

「【スピリット・イーグル】!」

上方から落ちてくる大きな鷲の霊が、敵に直撃して打倒。

するとここで、そんな敵の背後から迫っていたプテラノドンのような魔物が一気に加速。

ナギたちの船目がけて、攻撃体勢に入る。

「そうはいかねえんだよなあっ! 【サザンクロス】!」

プテラノドンの背中に、落下してきたナギの一撃が突き刺さり爆発。

やっかいな中ボス級の魔物を、見事に撃ち落としてみせた。

「【グレートジャンプ】!」

さらにナギは空を行き、次の目標も同様に一撃での打倒に成功。

「さすがトップだな! 戦況がめちゃくちゃ楽になった!」

「一人で何匹もの魔物を狩る、さすがエースだ!」

白夜やナギたちの戦いに、あがる士気。

しかし魔物も止まらない。

飛行艇に接近してきた個体が、甲板に着地し始めた。

ここでは安定した四足移動に加えて翼を持つ、グリフォン型の魔物が活きてくる。

「うおっ! こいつ結構強いぞ!」

その動きは速く強靭。

思わぬ戦いの厳しさに、気圧されるクルーたち。しかし。

「【ジェット・ナックル】!」

迷子の一撃で吹き飛んだグリフォンが、仲間の個体を巻き込み甲板から落下。

敵数が減ったことで、この船の戦況は優位になった。

「ここですわ! 【ライトニングスラスト】!」

すでに自船にとどまらない戦いを始めていた白夜は、砲弾をかわして甲板近くにたどり着いた魔物を、狙う一撃を放つ。

「【極光乱舞】!」

するとその爆発に巻き込まれた個体も体勢を崩し、そこをすぐさま紅の翼プレイヤーが狙い討つ。

「そこっ! 【スピリット・ファルコン】!」

「今だ! 【サンダーアロー】!」

「【降雷】!」

「【白氷花】!」

無数の魔物たちが飛行艇の前方に集結し、張り付くような状況での戦い。

紅の翼の防衛線も強固で、正面からのぶつかり合いは激しくなっていく。

「見ろ! ブルードラゴンが三体も……っ!」

ここで優劣を決めてしまいそうな、中ボス級のモンスターの同時飛来。

「【クイックステップ】【回転跳躍Ⅱ】!」

一瞬で距離を詰めてきたナギが、そのまま十字槍を突き刺した。

「【グレートジャンプ】!」

さらにそのブルードラゴンを蹴って、跳躍。

「【サザンクロス】! 【回転跳躍Ⅱ】!」

二体目に光刃を灯した十字槍を突き刺したところで、またも跳躍。

「【ノーザンクロス】!」

魔力の十字を輝かせた槍で、三体目に爆破の刺突を叩き込む。

「【霊光砲】!」

ここで体勢を立て直した一体目のブルードラゴンは、ナギの着地を狙ったが、ディアナのフォローで再び体勢を崩す。

なんと紅の翼は、ボス級のドラゴン三匹を同時に相対しても戦いの流れを渡さず、戦いを優位に進めていく。

「さすがトップ勢だ! 頼れるな!」

あがる歓声。

だがここで、異変に気付いた白夜が叫ぶ。

「レーザーが来ますわ!」

「マジっスか!?」

舵に近かったディアナが、大慌てで船を回避行動に入らせる。

直後、魔物の頭部から一直線に放たれた魔力光。

「おおっ!?」

どうにかレーザーの射線から避難することに成功したディアナだが、ナギは急な展開に尻もちをつく。

そして二人がブルードラゴンとの戦闘から離れたことで、流れが変わり始めた。

「範囲攻撃かよ……っ!!」

三体のブルードラゴンが、同時に範囲ブレスで攻撃。

その効果範囲は異常なまでに大きく、ナギは焼かれて飛行艇の上をバウンドして転がった。

「うおおおおっ!?」

さらに勢いあまって、甲板から落ちそうになるナギ。

そこに迫るのは、二体の四翼の鳥型モンスター。

「【スピリット・ファルコン】!」

一体はディアナが攻撃して足止め。

「【ライトニングスラスト】!」

「悪ィ!」

残った一体を白夜が片付けて、どうにか事なきを得る。しかし。

白夜が動いたことで、一部の陣形が崩れたところに迫るのは、新たな中ボス級の怪鳥。

ロックバードの放つ【羽渦乱舞】で、数機の船員たちをまとめて攻撃。

体勢を崩したところに、全力の体当たりを叩き込む。

「うおおっ!!」

ついに飛行艇が一機落ち、紅の翼に離脱者が現れ始める。

白夜はブルードラゴンの打倒をナギとディアナに任せ、怪鳥のもとに向かうことを決断。

「【ラグナリオン】!」

従魔を呼び、放つ炎弾の連打でダメージを与える。

「【ライトニングスラスト】【極光乱舞】!」

そこから続く攻撃で、そのままロックバードを撃破した。

「「「うわあああああ――――っ!!」」」

しかしその間に下方から来たラージワイバーンの攻撃で、二機目が落ちる。

「あのレーザーから形勢が……どうにか立て直さなくては!」

怒涛の活躍を見せる白夜だが、さすがに全ての機体を守るには足りない。

「ここで、もう一度ですの!? 皆さんレーザーに気を付けて!」

輝く巨竜の頭部結晶。

やはりレーザーに合わせて一度全体が回避態勢に入るのは、厳しい。

このクエスト、かなりギリギリの戦いになりそうだ。

「あの一帯、退避が遅れていますわ!」

甲板に乗り付けた魔物との戦いによって、射線上からの退避が遅れる機体。

しかし今から駆けつけて飛行艇を動かすというのは、さすがに厳しい。

白夜が無念そうに目を閉じた、その瞬間。

真っ直ぐに飛んでいった長距離砲弾が魔物に直撃し、レーザー攻撃を食い止めた。

「あれは……」

戦場に駆けつけたのは、青のラインが美しい一機の飛行艇。

そして、ウィンディアの飛行艇たちだった。

「空賊どもだと……!? 何をしに来た!」

「ブライトは俺たちの故郷でもあるんでね。このまま黙っているわけにはいかなくてな」

長距離砲を放ったエアはそう言って、紅の翼の穴になり始めていた部分に布陣。

「ブライトを守るため、加勢する」

「……いいだろう」

「一、三、五番砲台は飛行する中型に対応。必ず近くに一人護衛のクルーを置くこと! 以外は船へ攻撃に来た個体を叩け」

エアは短く指示して、すぐさま戦闘を開始する。

「【ラピッドステップ】!」

船に乗り込んで来た、二体のグリフォン。

まずは一体目に高速接近からの斬撃を決め、トリガーを引いて雷撃まで叩き込む。

すぐさま折れるようなステップで二体目に接近し、斬り下ろしからの雷撃。

ガンブレードを使った見事な攻撃で、一発打倒。

「【ライトニングボルト】!」

そのまま宙に向けてトリガーを引けば、駆ける雷光が黒色の巨鳥を硬直させる。

「撃て!」

すかさずクルーによる砲撃が決まり、黒の巨鳥も続け様に撃墜。

「数は少ないですが、練度が高いですわね!」

「いいぞ! 戦況が安定してきた!」

「撃つぽよーっ!」

再び自由に動けるようになった白夜とナギたちが躍動し、掲示板組も見事な戦いを見せる。

「巨竜が、動きますわ!」

再度のレーザー攻撃を予想し、回避態勢に入る飛行艇団。

しかし放たれたのは意外にも、大型の風弾。

「ここで風かよ――っ!!」

吹き荒れる暴風が船を大きく揺らし、船員たちを転がす。

ここで距離を詰めてきたのは、尾がメイスのような形をした大型の恐竜ランフォリンクス。

急速落下から、風に揺れていた飛行艇の一機をつかむと、そのまま別の飛行艇に叩きつけた。

「「「うおおおおおお――――っ!?」」」

すでに傷の多かった飛行艇は、そのまま撃沈。

三機目が落ちたところに、四枚羽の灰巨鳥の体当たりが決まり、四機目が落ちる。

「耐えろ! 我らの後ろには、ブライトの町がある! なんとしても……なんとしてもここを守り抜くんだ!」

「絶対にあきらめるな! ここが勝負所だ!」

「「「「おおおおおおおお――――っ!!」」」」

立て直した態勢を、再び崩した巨竜の一撃。

兵長のあげた必死の声に、エアも続く。

「思った以上に、厳しい戦いですわね」

「ヤバいな、これ」

「ピンチ………スね」

口々につぶやくトップ三人。

ここで再び、巨竜の結晶に輝きが灯り始めた。