作品タイトル不明
1233.三対二
「まだまだ勝負はここからだ! 行くぞ!」
ナギは、気合の雄叫びと共に槍を構える。
大型飛行艇に搭載された飛行珠の奪い合いは、魔導鎧・改を振り回してぶん投げたメイの一撃で、仕切り直しとなった。
「この有利な状況を、無為にするわけにはいかないっスよね!」
三対二のという状況のまま、再び始まる戦い。
「【グレートジャンプ】!」
「「っ!?」」
艦隊戦では高いジャンプからの攻撃を見せたナギは今度、高速の長距離跳躍を『横』の移動に使用。
「【避雷針】【草薙】!」
雷光を自らの槍に宿らせると、そのまま独楽のような高速回転斬りで迫り来る。
「そんな戦い方もあるの!?」
「【ラビットジャンプ】!」
メイはこれを、縦の跳躍で回避。
するとその隙を狙って接近してきた魔導鎧・改が、【ヒートハルバード】による振り払いを仕掛けに来る。
「うわっと!」
メイは着地と同時に床に伏せて、この一撃を回避。
「【スピリット・イーグル】!」
「はいっ!」
聞こえた声に、すぐさまゴロゴロと横に転がる。
するとディアナの放った鷲の霊が、上方から落下。
地面にぶつかり、霊光をまき散らした。
「【降雷】!」
「あっぶな!」
ここですぐさまナギが雷を落として、レンによるフォローを先んじて食い止めた。
「【バンビステップ】!」
メイは魔導鎧・改がバズーカで放った【結晶砲弾】を左右にかわして、ディアナを狙う。
「【霊光砲】!」
すぐさま霊力を放つ一撃でけん制し、視界が光に遮られたところで、トリッキーな一撃を使用。
「【背後霊】!」
「っ!! 【裸足の女神】!」
真後ろから音もなく来る攻撃を思い出したメイは、消えていく【霊光砲】の中を超加速で駆けて回避。
「っ!?」
光が消えると同時に目前に現れたのは、剣を手にしたメイ。
「【守護霊】!」
敵の攻撃から身を守るスキルを、どうにか間に合わせて難を逃れる。
「うっわあ! マジっスか!」
スキルによってダメージこそ3割に抑えられたが、砂煙を上げる勢いで後退。
そのまま尻もちをつくというという、これまで一度もなかった事態に息を飲む。
「ドラゴンの一撃でも、転んだりしなかったんスけどね……!」
ナギとの連携に魔導鎧の攻撃も加わって、なかなかの攻勢を見せていたディアナ。
ここで早めの火力上げを試みる。
「【大狼降霊】!」
迫りくるメイを見て、近接戦闘能力を大きく上げるスキルを開放。
「【フラッシュステップ】」
「っ!?」
ごく短い距離だが、超高速。
迫るメイの前に自ら踏み込み、放つ掌底。
メイはこれを、急ブレーキからの上体そらしで回避する。
「この速度で、当たらないんスか!?」
掌から、噴き上がる衝撃波。
トッププレイヤーと戦っても、初撃なら避けられたことのない連携がかわされて、ディアナが目を見開く。
「でもっ!」
それでもすぐに気を取り直し、スケートのジャンプのような跳躍から、放つ回転蹴り。
「【アクロバット】!」
メイは上体そらしから腕を突き、鋭い斬撃のようなエフェクトを放たれたディアナの蹴りを、バク転で回避する。
するとその直後に飛び込んできたのは、魔導鎧・改。
背に背負っていたボックスから引き出したのは、タイルのような厚さのひし形結晶を鎖状につなげたもの。
そのままムチのように振り下ろせば、連結した結晶が部分が次々に爆発していく。
メイは【結晶連鎖】を横へのステップでかわすが、地面にたたきつけられた結晶の誘爆で、一気に攻撃範囲を拡大。
「うわっと!」
わずかに火炎がかすめて、足をフラつかせた。
「メイ!」
「【グレートジャンプ】!」
レンはすぐさまフォローに入ろうとするが、そこをナギが防ぎに迫る。
「【ノーザンクロス】!」
十字側の刃から伸びる光の刃を、そのままレンに叩きつけにきた。
「くっ!」
かわし切ることはできないと踏み、レンは防御を選択。
後方に大きく弾かれた。
「ええっ!? 何これっ!?」
一方メイは、魔導鎧・改が突然各所のパーツを『開いた』ことに驚く。
腕、肩、腹、脚。
開かれた鎧の各部には、ぎっしり詰められた結晶弾。
全ての武装を開放して放つ【一斉発射】に、驚きの表情を見せる。
「うわわわわわーっ! すごーい!」
体勢を悪くしていたメイは、初めて見る攻撃に思わず目を奪われてしまったこともあり、これに防御で対応。
「うわ、すっご……!」
派手な全弾攻撃には、ディアナも感嘆する。
「いいぞいいぞ! 鎧のやつもやるじゃねえか! 悪いけどこのまま押し切らせてもらうぜー!」
ナギは【クイックステップ】による連続攻撃で、レンを追い詰めにかかる。
「【草薙】【草薙】「草薙】ィィィィ!」
「【低空高速飛行】【旋回飛行】!」
レンは速く弧を描く軌道の飛行で、逃げ回る。
するとここで、ナギは趣向を変更。
「うめえ回避だけど、こいつは避けらんねえだろ!」
勝ち誇るように笑って、左手を掲げる。
「【轟散雷】!」
自身を中心に、広範囲に大量の雷を落とす範囲攻撃。
ここでレンは回避を諦めて、再びの防御姿勢を取る。
「よっしゃー!」
いよいよ、ナギの攻勢に捕まってしまったレン。
思わず歓喜の声を上げたナギだが――――。
「……あっ」
その顔が引きつる。
レンの足を止めて、ダメージを与えることにも成功。
これが普通の戦いであれば良い一手だが、範囲攻撃は魔導鎧・改を巻き込んだ。
「やっばああああ――――っ!!」
魔導鎧・改はナギたちの味方ではなく、あくまでこの場の守護者。
メイが回避を続けていたこともあり、雷の一撃はターゲットをナギに変更させてしまった。
レンが反撃をせずに逃げ回っていたのは、これが狙いだ。
こうして二対三の戦いが、三対二になった。
すぐさま装備を【ヘクセンナハト】に変えたレンは、ディアナを攻撃。
「【フレアバースト】!」
範囲を広げた爆炎に、ディアナは防御で対応。
するとそこで動いたのは、魔導鎧・改。
再び鎧のパーツが、一斉に開く。
そこには、きっちり再装填された結晶弾。
「ちょっと待てよ! なんで【一斉発射】が二回できるんだよ! 装填速すぎだろ!」
放たれる【一斉発射】に、大慌てで逃げるナギ。
その先には、今まさに爆炎を防御したばかりのディアナの姿。
そしてプレイヤー二人が近づけば、メイはチャンスを逃さない。
「いきますっ! 必殺の【ソードバッシュ】だああああ――――っ!!」
「うおおおおおおおお――――っ!」
「なああああああああ――――っ!」
巻き起こる衝撃を慌てて防御するも、吹き飛ばされて転がるナギとディアナ。
どちらも一瞬で、HPが危険領域に突入。
さらにその後を、魔導鎧・改が追いかけていく。
「今のうちに、飛行艇に乗り込んじゃいましょう!」
「りょうかいですっ!」
このクエストの目的は飛行艇にある飛行珠であり、敵やライバルの打倒ではない。
さらにこの場を離れてしまえば、魔導鎧のターゲットがこちらに移ることもない。
流れが変わったところで、メイとレンは戦いを放棄して飛行艇へと急ぐ。
「うわー待てよーっ! 置いていくなって!!」
「考えてみればここは、飛行珠の持ち出しの勝負だったっスね!」
「やられたああああ――っ!!」
メイたちとの間に生まれた、長い距離。
そこに立ち塞がるのは、魔導鎧・改。
この隙を利用しない手はない。
メイたちはうなずき合うと、飛行艇に駆け込んでいくのだった。