作品タイトル不明
1230.魔導鎧
「もともとは、ウィンディアの基地みたいな飛行艇置き場だったのかな」
「そうかもしれないわね。そうなるとあそこにあるのは、開発室とか管制塔みたいな感じかしら」
灰色の広い空間。
そこに描かれた白く光る線は、おそらく飛行艇用のガイドライン。
この場所に飛行艇がないという事は、続く通路の先に置かれているのだろう。
二人並んで、進む。
すると並んだシャッターの一つが上がり、そこから出てきたのは一体の鎧。
魔力光を灯らせると、ホバー移動でこちらに接近してくる。
「魔導甲冑に似た感じね……でもこれは、量産型と言うべきかしら」
グリンデルのものより、意匠の少ない造りにちょっとワクワクしてしまうレン。
「これでグリンデルの機体が、試作機なんかだったりしたら最高ね! 【誘導弾】【連続魔法】【フリーズボルト】!」
放つ氷弾を、魔導鎧はかわしながら接近。
反撃とばかりに、出っ張った手の甲に付けられた魔力結晶から、光弾を放つ。
狙われたレンは、迫る光弾をとにかく右へ跳ぶことでかわす。
そして、距離が迫ったところで反撃。
「【フリーズストライク】!」
今度は直撃したが、広がる氷煙を割って出てきた魔導鎧の腕には――。
「魔力の盾!」
これ一つで、魔法攻撃をしっかりダメージ減。
そのまま接近し、腰に下げた片刃の斧に魔力光を灯らせ攻撃。
振り下ろしをかわすと、大きな払いでけん制して距離を取る。
続けて空いた手に取ったのは、背負った杖のような物。
その先端には、ひし形の魔力結晶。
それを、レンに向けて緩く下手投げで投擲。
「っ!! 【浮遊】!」
レンは自前のジャンプから【浮遊】で浮かぶ。
杖は接地した瞬間に結晶から閃光が瞬き、足元を雷撃が駆けめぐった。
「【ラビットジャンプ】!」
大きな跳躍で迫ってきたのはメイ。
「【フルスイング】!」
今度は色味の違う魔力盾で、メイの攻撃を防御する。
どうやら色の違いで、魔法と物理の耐性を変えてくるようだ。
それでも、防御スキルを使用したとは思えないほどの弾かれ方で、長い距離を以って制動をかける魔導鎧。
「レンちゃん、なにあれっ!?」
ここで魔力鎧が取り出したのは、魔力のムチ。
その先には、集結して膨張した魔力が、トゲ付き鉄球のような形になっている。
「振り回して戦う武器よ! 名づけるならマジックハンマーかしら」
魔力斧に、手投げの魔力結晶、さらにトゲ球の振り回し。
「量産機の戦い方、さすがに渋くない?」
その選択に、思わずこぼれる笑み。
「わあ!」
予想通り、魔力トゲ球をブンブンと高速で振り回す魔力鎧。
そのまま一気に、ホバー移動で距離を詰めてくる。
「うわっ! うわっ! うわわっ!」
「【フリーズストライク】!」
一応魔法で攻撃してみるも、魔力の鎖に弾かれ霧散する。
二人はその圧力に押されて、下がっていく。
すると魔力鎧はどんどん、二人を壁際に追い詰めてくる。
「ふふ、それじゃあ二手に分かれましょうか」
「りょうかいですっ!」
ここで二人は笑い合い、左右に分かれる。
すると魔力鎧は、狙いをメイに定めた。
「よっ、それっ! 【アクロバット】!」
メイは魔力鎧の接近に合わせて、トゲ球を下がりつつかわす。
「【低空高速飛行】【旋回飛行】!」
この隙にレンは、回り込むように移動。
「【誘導弾】【フリーズストライク】!」
放つ氷砲弾は、後方から回り込むように飛来して直撃。
「まだまだっ! 【誘導弾】【フレアアロー】! 【誘導弾】【フレアストライク】!」
連続ヒットによって、削れる敵HP。
さすがにこの状況のままでいるわけにはいかないと、魔力鎧は戦術を変更。
「うわわっ!」
魔力トゲ球を、メイに投じた。
「【装備変更】【フルスイング】!」
しかしメイ、これに普通に反応する。
豪速で迫る魔力トゲ球に、【魔断の棍棒】での打ち返しが見事にクリーンヒット。
魔力鎧にぶつかり弾け飛んだ。
大きく弾かれて転がった魔力鎧は体勢を立て直し、反撃の狙いをレンに変更。
速いホバー移動で、接近していく。
手甲の魔法結晶から連続で放たれる魔力光弾を、レンは【旋回飛行】で必死にかわす。
そこに接近してきての魔力斧の振り回しに、後退で対応。
「ッ!?」
しかし急加速で、突然の接近。
魔力鎧が手にした魔力斧を、大きく引いたところで――。
「【アクロバット】!」
メイがレンの頭上を回転跳躍で飛び越えてきて、そのまま剣を振り下ろす。
「【フルスイング】!」
豪快なエフェクト共に放たれた一撃を、再び魔力の盾で受け止める。
魔導鎧はその威力に、再び弾き飛ばされ転がった。
「【フリーズストライク】!」
「【バンビステップ】!」
ここでレンが先行して魔法を放ち、回避行動を取らせる。
その間に一気に距離を詰めたメイは、そのまま攻撃体勢に入った。
そして魔導鎧が再度、魔力盾を展開したところで――。
「【装備変更】!」
両手で【ダイナボーン】をつかんだ。
「そーれっ! 【ダイナブラスト】――っ!!」
「【誘導弾】【聖槍】!」
メイが魔力盾による防御を崩して、魔力鎧を吹き飛ばす。
発着場らしき石造りの空間を、バウンドして転がっていく魔力鎧。
その勢いはすさまじく、壁にめり込むほどの勢いで叩きつけられた。そして。
「【アクロバット】!」
メイの真後ろから放たれた聖なる光の槍を、バク転一つで回避。
薄暗い発着場を、光の槍は一直線に飛び直撃。
「おおっ! カッコいいー!」
キッチリと追撃して魔導鎧に突き刺さった【聖槍】は、光の粒子を巻き散らす。
その光景に、思わず声を上げたメイ。
一方レンはこういうのを特別カッコいいと思うセンスが育ち始めているメイに、苦笑い。
「レンちゃん」
「なに?」
「ツバメちゃんがいない時用に、今の魔法にも詠唱を――」
「要りませんっ!」
ハイタッチをしながら、レンは即座に申し出に首を振る。
「……本来は敵の防御に合わせて、攻撃手段を変えながら戦うことが前提の相手なんでしょうね」
今回の魔力鎧は、防御の入れ替えで時間を稼いできそうなスキル構成。
敵陣営との『競争中』ゆえに焦るだろうという、狙いのようだ。
しかしかなりの速度でここまで来ることができたため、二人にはまだまだ余裕あり。
「一応、管制塔みたいな建物の中も見ておきましょうか」
「りょうかいですっ!」
メイとレンは、この発着場らしき場所を見渡せる位置にある建物に、踏み込んでみることにした。