軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

1226.ブライト北部の町で

フロートを賭けた艦隊戦は、敵旗艦のゲージを削り切ったメイたちの勝利となった。

しかし突然現れた巨大な空の魔物によって、どちらも損傷を受けて撤退。

互いに修理を急ぐ形となった。

「自由にしてくれていいよ」

そんなイスカの言葉で、メイたちに自由時間が到来。

「飛行艇で何か食べながら、のんびりするのもいいかもしれないわね」

レンがそう言った瞬間、まもりの目が輝いた。

「ととととても良いと思いますっ!」

「飛行艇の縁に座って、風景を見ながらというのは素敵ですね」

「おおーっ! それはいいかもっ!」

こうして四人は、再び飛行艇を動かし空へ出る。

「やっぱり空は気持ち良いわね!」

「本当だねーっ!」

「さて、どこに行きましょうか」

「ブ、ブライト王国の北部区画では、様々なスープを売っているみたいです。資材等の積み下ろしをする場所ということで、やはり手早く栄養が取れるものを主要にしているのかもしれませんっ」

「機工都市の倉庫的な役割の区画なのかしら……せっかくだし、行ってみましょうか」

「了解しました」

ツバメは慣れた感じで舵を取り、ブライト北部へ。

たどり着いた石造りの町には、そこかしこから煙が上がっている。

金属を叩くような音も、そこら中から聞こえてくる。

「カッコいい町だねぇ」

「はい。機工都市の倉庫街は同時に、工業区画なのですね」

町行く男たちの煤けた作業着などには、渋さを感じるほど。

腰に掛けたスパナ一つがまた、仕事人の雰囲気を醸し出している。

「おい、飛行艇だ!」

「飛行艇が来たぞ!」

少し離れた場所に、飛行艇を滞空状態で降ろしたメイたち。

その姿を見て、町にいたプレイヤーたちがざわめき出す。

「あっ、メイちゃんだ」

「メイですっ!」

「すげー……飛行艇で町にやってくるのは驚きだな」

「飛行艇、迫力ありすぎでしょ……」

皆がセフィロト丸に見惚れる中、メイたちは煙の町を進む。

そして、目当てのスープ屋の前へ。

「これはまた雰囲気あるわね」

スープ店の店頭に立つのは、工業の町の男たちを相手に商売をする40歳程の女店主。

大きな体に、大きな左右の三つ編み。

いくつも並んだ寸胴には、何種類ものスープ。

そこからは、おいしそうな匂いが漂っている。

「おいしそうっ!」

「はひっ」

思わず手を取り合って、目を輝かせるメイとまもり。

「お嬢ちゃんたち、何にするんだい?」

気風の良い声に、思わず元気に応える。

「で、では肉団子のスープで!」

「ポトフでお願いしますっ!」

「ミネストローネで」

「私は懐かしい感じのする、チリコンカンにします」

「はいよ!」

店主は豪快に一つずつスープを鉄器に注ぎ込んでいく。そして。

「まだまだ筋肉が足りないね、そんなんじゃ冒険者なんて続けらんないよ!」

そう言って、豪快に笑った。

「オマケしといたから、しっかり食べてまたおいで!」

「ありがとうございますっ!」

そう言って気丈に笑う店主に、メイは手を振りながら飛行艇へ戻る。

「楽しいところだねぇ……!」

「そうですね。店主さんの豪快さは気持ち良いです」

「こ、この鉄器に入ったスープは、他では見られませんっ。町の雰囲気も出ていていいですねっ」

「町の騒がしさも、ちょっと楽しいわ」

店の名前だけが刻印された鉄器の容れ物が武骨なのも、働く者たちの町という空気が出ていて、ワクワクしてしまう四人。

店主のキャラクターもあって、すっかり気に入ってしまったようだ。

「スープを買いに……飛行艇で来たのか?」

一方そんなメイたちの行為に、感嘆するプレイヤーたち。

それは現実ではもちろん、星屑内でも初めて見る光景だ。

四人は飛行艇に乗り、多くの視線が集まる中で離陸。

さっそく飛行艇の縁に腰かけて、煙の街を眺めながらスープを楽しむ。

「で、では、いただきますっ!」

もう我慢できないとばかりに、肉団子にかぶりつくまもり。

思ったより大きな肉団子が三つも入ったスープは、玉ねぎ人参の甘味に肉の油、コンソメが絡んでとてもおいしい。

「この歯ごたえがたまりません……っ」

もぐもぐと口を動かすまもりは、なんとも幸せそうな表情をする。

「ポトフも美味しいよ! じゃがいもとキャベツの柔らかさが最高だよーっ」

しっかりとした食感は、厚手のベーコンによるもの。

こちらも、歯ごたえが最高だ。

「こう見ると、やっぱり労働の町らしさを出しているのかしら。噛んで食べる感触を大事にしてる感じがありそうね」

「はひっ、そう思います……っ」

一方のレンは、トマトの実を程よく残したミネストローネ。

そこにはマカロニなどが入っていて、やはり食感が楽しい。そして。

「懐かしい感じがします」

ツバメのチリコンカンに、自然と集まる視線。

昔どこかで食べたことがある紅色の豆料理は、スープ用に少し改変あり。

わずかに感じるスパイシーさも、なんだか懐かしい。

「おいしそうだねぇ」

「…………よろしければ、食べてみますか?」

「いいのーっ?」

メイはうれしそうに駆け寄ってくると、行儀のよい犬のように「待て」状態。

「分けて食べる場合は、バフ等はなしということですが……」

「まあ、戦いの前段階ってわけでもないし、そういう効果は気にしなくていいんじゃない?」

「では……っ!?」

ツバメはスープ自体を渡そうとするが、メイは完全に『食べさせてもらう』ポジショニング。

一切飾り気のないスプーンにチリコンカンを乗せて、ツバメはそっと差し出す。

「あーんっ」

メイはパクッと一口。

「おいしい! なつかしいっ!」

すぐさま、うれしそうに尻尾をブンブンさせる。

「今度はわたしの番だね!」

「っ!!」

さっそくスプーンを差し出すメイに、ツバメは恥ずかしそうにする。

そんな二人を見て羨ましそうにするまもりと、笑うレン。

「そう言えばまもり、飛行艇に乗っている時にちょくちょく隙を見て、サンドイッチ食べてたでしょ」

「み、見つかってしまいましたかっ!」

「あはははっ、わたしも気づいたよ」

「私もです」

言われてまもりは、恥ずかしそうにする。

「じ、実は学校でも、お昼休憩の前にお弁当がなくなってしまうことも……」

「女子ではめずらしくない?」

「は、はひっ。お昼休みは学食をのぞいて新メニューなどがないかを確認しています」

「それはそれとして、昼休みは楽しんでるのね」

マイペースなまもりに、思わず笑う三人。

「まもりちゃんのお団子も、食べてみたいなぁ」

「えっ、あっ、も、もちろんです!」

そして始まる、食べさせ合い。

「あとは少し、辺りを流してみましょうか」

「そうしましょう」

夕景の美しい空。

四人はのんびりと、空のドライブを楽しむことにしたのだった。