作品タイトル不明
1216.最終コーナーですっ!
「いい勝負だねっ!」
「はひっ、熱いレースですっ」
飛行艇レースは、いよいよ三つ目の中継地点へと向かう。
この中継点を越え、最後の直線を一番で駆け抜けたものが勝者だ。
魔物たちの襲撃を乗り越えた六機は、そのまま左右を岸壁に囲まれた谷へと突き進む。
「ここからはこういう形で来るのね。ツバメ、落ち着いていきましょう」
「はいっ」
岸壁に挟まれた道を突き進んだ先に見えたのは、一気に広くなる道と無数の岩塔。
鍾乳洞をひっくり返したような光景が、そこには続いていた。
衝突すれば当然、飛行艇に大きなダメージを受けることになる。
そのため速度を落とし、岩塔を右に左に避けながらの飛行が必要だ。
「思ったよりも、難しいですわね」
「ナギ、ここは慎重にいくっスよ」
「当然だろっ」
ここでは白夜やナギたちも速度落とす。そんな中。
「細かい操舵なら、アンタになんか負けないんだから!」
「ハッ、それはどうかな?」
火花を散らす兵長とイスカが、細かく丁寧な操縦で並んできた。
「ここはっ……!」
ツバメの選んだルートは不運にも岩塔の距離が狭く、かなりの減速が求められる箇所が存在。
船をぶつけないためには、徐行レベルまでの低速操縦が求められそうだ。
「それなら! 【フレアバースト】!」
「っ!?」
レンは容赦なく爆炎を撃ち込む。
すると岩塔の上部が吹き飛び、減速の必要がなくなった。
「ありがとうございます!」
「飛行艇でなければ攻撃可能っていうのは、パーティメンバーにこういうことをさせるためかしらね」
理解の早いレンは、そう言って息をつく。
「うおおっ!?」
「ムズすぎじゃんここーっ!」
一方ナギたちは、爆炎の余波に船が揺られて驚きの声をあげた。
操舵がわずかに乱れ、流れた船が岩柱を擦って激しい音を鳴らす。
「あぶないっ!」
しかし危機は、メイたちの元にも訪れる。
先行するジャルルが砲台で吹き飛ばした岩塔から飛んできた岩塊が、こちらに向かって落ちてくる。
「【エクスプロードランス】!」
これをまもりは、爆破の一撃で弾き飛ばした。
「助かりました!」
さすがに操舵一つで回避できる状況ではなかった。
ツバメは安堵の息をつく。しかし。
並んで先行するジャルルと白夜が、目前の大きな岩塔を避けようとして舵を切ったことで、船が激突しそうになった。
「やってくれますわね!」
これを外に広がることでかわすはめになった白夜は、メイたちの前の航路へ。
衝突を避けるため、セフィロト丸はさらに外へ流れることになってしまった。
「今だ!」
この隙にナギたちが少ない回避で進み、ジャルルの横へ並ぶ。
二機の前に、迫る岩塔。
右側に避けたいナギをジャルルがブロックし、軽くぶつかって火花を上げる。
結局ギリギリまでルートの取り合いを演じた二機は、左右に分かれた。
そのためどちらも船の側部が、岩塔にかすめて擦過音を響かせる。
それによって、白夜との距離が詰まる。
一方ここでわずかに遅れたメイたちを、飲み込まんとする兵長とイスカの二艇。
丁寧な飛行で、距離を数メートルのところまで縮めてきた。
「岩塔エリアが終わんぞ!」
ナギの声が上がった。
混戦のまま岩塔区域を抜けると、その先に三つ目の中継点。
混戦の先頭を、ジャルル、白夜、ナギという順で通過していく。
ここで谷は、右へ大きく折れ曲がっている。
そしてゴールは、この急なコーナーを曲がった先だ。
もちろん、折り返すことが必要になる。
角度のキツイ、『く』の字型のコース。
その角になる部分には、ジャルルの用意した巨大な岩ゴーレムが、目印として立っている。
「レースゲームでは、進行するべき方向に迷って順位が落ちることもあるので、助かりますね。ですが……このままでは……っ」
何かもう一波乱、起きなければトップに立つのは難しい。
「……ねえ、レンちゃん」
現状は、僅差で四位。
目前に迫る急コーナーを見て、メイがつぶやく。
「それ、いける?」
まさかの提案に、思わず笑みがこぼれるレン。
「ですが、面白いです」
「こ、ここから抜きにかかるのなら、見てみたいです……っ!」
「そうよねぇ。私も正直ドキドキしてるもの」
笑って、うなずき合う四人。
ツバメは速度を下げず、むしろ加速。
最大船速のまま、コーナーへ突っ込んでいく。
「その速度では、曲がり切れませんわ……!」
あくまでここは、大きな谷の中。
止まれなければ、その先に待つのは岸壁だ。
速度を大きく下げながら、曲がり始めた白夜が叫ぶ。
「いきますっ!」
「し、失礼しますっ」
そんな中メイは船首に立ち、まもりも「少しでも」とメイの腰にしがみつく。
そして先頭に躍り出たセフィロト丸が、無謀な速度でコーナーに突っ込んだところで――。
「【ターザンロープ】!」
投じた縄を、道順指示ゴーレムの頭部に引っ掛けた。
「……【ゴリラアーム】!」
そしてメイは全力で縄を引き、ツバメは舵を最大まで右に回転。
「それええええええええ――――っ!!」
そのまま遠心力でコーナーをノーブレーキで曲がり切り、なんと先頭に躍り出た。
「おいおい、マジかよ――っ!!」
「ヤバッ!? どんなパワーしてんスかそれぇぇぇぇーっ!?」
ナギとディアナが、思わず抱き合いながら驚嘆する。
「とんでもないコーナーの抜け方ですわね!」
「わあ! 寝違えたみたいになっちゃった! ごめんなさーいっ!」
衝撃で首の角度がズレたゴーレムに、両手を合わせて謝るメイ。
この首傾げゴーレムは、以降このクエストの名物となる。
「ゴール、見えました!」
ここで見えたのは、光で描かれたゴールライン。
最後は直線を、全力で進むのみ。
しかしこうなれば当然、直線最速のジャルルが一気に上がってくる。
「全開でいきます!」
ツバメは全体重をペダルにかけて、ひたすらに直進。
「いっけええええ――――っ!!」
メイが拳を振り上げ叫ぶ。
レンがジャルル船をのぞき、まもりが祈り出す。
迫るジャルル船の速度は、やはり驚異的。
その距離を、ドンドン縮めてくる。
しかし、届かない。
猛追を振り切ったメイたちは、そのまま一位でゴールした。
「やったー!」
「やりました!」
そのままゆっくりと、ウィニングランを見せるセフィロト丸。
花火が盛大に上がり、レースの勝者を讃える。
飛行艇を浮遊モードにして、そのまま四人でハイタッチ。
「やられたぁ!」
「やっばー……」
「最後のコーナーは、痺れましたわね……!」
ジャルルの直後、ナギたちと白夜がほぼ同時に到着。
続いて、最後までぶつかり合っていたイスカと兵長が、順にゴール。
「こりゃ本当に、ウィンディアのエースパイロットだな……!」
ジャルルも、興奮した面持ちで一言。
飛行艇レースは見事、メイたちセフィロト丸の勝利で幕を閉じた。