軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

1203.ブライト王国の出会い

「すっごーい!」

「迫力が段違いですね!」

工廠ということで、付近にはブライト王国の紋様入りタペストリーもかけられている。

それらが一斉に飛行艇の起こした風で巻き上がる光景は、見事な演出だ。

ブライト王国飛行艇、紅の翼はさらに上昇し大空を行く。

「やっぱり、空を飛ぶ船となるとワクワクするわね」

「はひっ。現実では見られないからこその迫力がありますっ」

大きくうなずいて、去っていく大臣たち。

それを見た付近のプレイヤーたちも、一斉に賑わい出す。

「何かクエストが動いてる可能性が高そうだな!」

「ブライト付近で、見慣れない兵士NPCなんかは要注意だぞ!」

そんな声が、各所が聞こえてくる。

「王国のクエストを見つけると、飛行艇に乗れるかもしれないわね」

「ええっ! 本当っ!?」

「でもこういうのは、意外と見つかるまで時間がかかったりするものだから」

「そうですね。このまま見つからずに数年という事態もあり得ます」

「す、数年は長いですねっ」

飛行艇関係のクエストはないかと、さっそく慌ただしくなるブライト工廠前。

「わたしたちも、色々歩いてみようよ!」

「そうしましょう」

飛行艇関係のクエストを求めるプレイヤー陣が、近くのNPCに話しかけたり、ぶつかってみたりと試行錯誤を開始。

メイたちも、のんびりと付近の散策を続ける。

倉庫と工場が一体のレンガ地帯、大きな鉄鋼業を受け持つ配管のお化け地帯。

そして王国も関わる工廠と、めずらしい光景を見ながら歩くだけでも十分楽しめる。

「この辺りで働いている人たちは、どのような食事をとっているのでしょうか……」

まもりは、仕事の合間を縫って食べられるものが多いのではないかと予想。

すると予想通り街行くNPCが、フランスパンに横から切り込みを入れて、具材を挟むタイプのサンドイッチを持っていて目を輝かせる。

「お店は、あれかな?」

メイが指さした先にあるのは、テイクアウト型のサンドイッチ店。

「い、行ってみましょうっ!」

天然の【チャリオット】を炸裂なさせながら進むまもりに続いて、皆で店へ。

「す、すごいです……っ」

現実の惣菜店のように、大きなガラスケース越しに注文する形の店舗。

多くの食材が並び、様々なサンドイッチを選べるようになっている。

「飲食システムは、本当にドンドン進化してるわね」

「ビ、BLTだけでなくツナ、サラダチキン、エビアボカド、ホットチリ、タマゴ、クラブハウス、照り焼きチキンに、ローストビーフですか!?」

その充実ぶりに、まもりは驚きと共に歓喜する。

「せっかくだし、何か食べてみましょうか」

「あ、あのっ! ――――全部くださいっ! めずらしい照り焼きチキンは5つでお願いしますっ!」

「「「…………」」」

いつもは盾の後ろにいるまもりが見せる積極的な攻めの姿勢に、感嘆するメイたち。

できあがったものをさっそく一口食べて、歓喜する。

「おいしいーっ」

「これは素晴らしいですね」

「少しとはいえバフありで、持ち出しも可能。そう考えると優秀ね」

両手に盾のまもりも、今は右にBLT、左に照り焼きチキンという状態だ。

四人並んで、サンドイッチを頬張りながら進む工廠地帯。

その一角にたどり着いた、その瞬間だった。

「待てッ!! 賊ども!」

慌ただしい足音と共に聞こえてきたのは、軽鎧の男女。

そして後を追ってくる、ブライト王国の兵士たち。

「ふえふとかな?」

「ふぉのようえ」

「間に、挟まれました……!」

「ふぁ、ふぁひっ」

後方に軽鎧の男女、前方には兵士たち。

「冒険者か。ちょっと手助けしてくれないか? 兵士どもがうるさくてな」

そう言って依頼を出してきたのは、謎の男女。

「おい冒険者たち、そいつらの逮捕に力を貸すんだ!」

続けて声をかけてきたのはブライト王国の兵士たち。

メイたちを挟んで始まった、勧誘合戦。

これはどちらにつくかで、クエストの内容が変わってきそうだ。

「どちらをお手伝いしましょうか」

ツバメが持ち掛ける問い。

「多勢に無勢の状況だし、逃げてる方を助けてみる? 先に声をかけてきたのもこっちだし」

ようやくサンドイッチを食べ終えたレンが、提案。

「ひーとおもふぃますっ」

「ふぁひっ」

こうしてメイたちは、ブライト王国の兵士たちとの戦いを選択。

「ならば――――ここでまとめて逮捕してくれる!」

「ガンブレード……!」

先頭の兵士が取りだしたのは、機工都市で売られる『らしい』装備品の一つだ。

『ガン』と付いているがトリガーはなく、柄はショットガンの握りを思わせる形状。

刃部分にはステンレスのような表面の武骨なブレードを二枚作り、その間に薄造りにした魔法石を挟む。

通常時は刃として振り、近中距離ではその切っ先から放つ魔力弾などで戦うという形式の武器。

物理攻撃も魔法攻撃も可能だが、どちらも優れたものを求めると異常に価格が上がるという、ブルジョア武器の筆頭だ。

「やっぱりカッコいいわね、でも! 【フレアバースト】!」

挨拶代わりの一発。

爆炎に、八人の兵士が吹き飛ばされた。

しかし打倒とまではいかず、なかなかの強さが見て取れる。

さらに防御を選んだ兵士の一人は、反撃体勢。

「【アイスフレーク】!」

通常の剣よりも太さのあるガンブレードを、脇に挟んだブライト兵が放つ氷弾。

一直線に進んでレンに直撃すると、氷雪の小さな嵐が巻き起こった。

ガンブレードからの魔法攻撃は、やはりなかなか便利そうだ。

しかし、ダメージは僅少。

「食べたばかりのホットチリが効いてるわね! 【低空高速飛行】!」

レンは銀の刃に挟まれた魔法石が青白く輝いたことで、あえて回避を放棄。

初めて対戦する武器の火力を、確かめることを選んだ。

氷結ダメージ軽減、のけ反りの減少。

この二つが活きたため、早い反撃が可能だ。

「はっ! それっ!」

レンは【魔剣の御柄】で手前二人の兵士を斬った後、そのまま、魔力を解放。

【フリーズブラスト】で一部の兵士を打倒し、残った兵士にもダメージを与える。

「【速歩】!」

上手な移動でレンの魔法をかわした兵士は、ガンブレードを手に高速移動。

狙いをメイに絞って接近。

強い踏み込みから放つ振り降ろしをかわし、続く払いをバックステップでかわすと――。

「【ファイアスラスト】!」

剣に炎をまとわせての斬撃へとつないだ。

「うわっと!」

メイはこれを、バク転で回避。

するとガンブレードを、流れのまま脇に挟んで照準を合わせる。

「【ファイアシェル】!」

「うわわっとーっ!」

下がるメイを、追いかけるような炎弾での攻撃。

これを慌ててしゃがんでかわしたところで、ツバメが援護に入る。

「【電光石火】!」

斬り抜けで兵士の体勢を崩しつつ、残る兵士のもとへ。

「【アクアエッジ】【瞬剣殺】!」

水刃の乱舞で、まとめて斬り飛ばす。

「ありがとうツバメちゃんっ! それではさっそく【装備変更】!」

メイは両手で【ダイナボーン】を抱えて、そのまま豪快に振り回しにいく。

残った兵士は狙い通り、踏み込んできたメイに対して防御で対応。

「【ダイナブラスト】ーっ!」

しかしこの一撃に防御は無意味。

残った兵士は、強烈な一撃に吹き飛ばされた。

「うおおおおおおぉぉぉぉぉぉ……ぉぉぉぉ……ぉぉぉ……ぉぉ……ぉ……」

遠くなっていく悲鳴。

しばらくして、だいぶ離れた町外れの方から砂煙が上がるのが見えた。

「「…………」」

「そ、それっ」

そしてギリギリで生き残った最後の兵士の頭に、まもりが盾を振り下ろして勝利となった。

「「…………」」

逃げて来た男女も、倒れている兵士たちも、転がっていった彼の帰還を待つ。

「し、しばらく、待ちましょうか」

「そうですね」

「この予想外が生む不思議な時間、結構好きなのよね。シュールで」

始まる静かな時間。

やがて3Dのゲームで、『プレイヤーに押されて持ち場を離れさせられたNPCが結構強引な歩き方で戻っていく』感じの歩調で、兵士が戻ってくるのをしっかり待ってから――。

「「「……くっ、覚えていろ!」」」

ブライト兵たちは、思い出したかのように逃げ去っていった。

「これだけの兵士たちを、あっさりと……」

「すごいじゃん!」

逃げて来た男のNPCは30歳ほど、女子の方は20歳ほどか。

恐ろしいほどの無言でじっと待っていた二人も、ここでようやく会話を再開。

「ありがとう、助かった」

メイたちの前に来て頭を下げると、二人は続けて提案を持ち出す。

「その戦闘能力、我々に貸してもらえないだろうか」

「貴方たちは何者なの?」

たずねると、長めのハチマキに裾の短い青のフライトジャケットを着た少女が、二ッと笑みを浮かべた。

「私たちは『ウィンディア』――――ブライト王国『紅の翼』に対抗する空賊さ!」