作品タイトル不明
1181.帰還と合流!
「HPも、そこそこ持っていかれたわね」
「こ、後半の高火力攻撃は、喰らえば死に戻り、転がれば逮捕でした……っ」
今も残る、アーリィたちの攻勢による余韻。
やはりトップが立ちふさがった時の緊張感は、尋常ではない。
生き残れたことに感謝しながら、甲板の上に寝転がったまま海を戻っていくレンとまもり。
「でもこれで、私たちだけ脱落ってことにはならずに済んだわね」
「ほ、本当ですね」
整備士の操舵に任せて、船は進んでいく。
「レンちゃーん! まもりちゃーん!」
噂をすれば、聞こえてくる声。
元海賊バルディスの小舟に乗ってやってくるのは、メイとツバメの二人だ。
「どうだったーっ?」
「アーリィたちに追われて、危うく死に戻りかけたわ」
「ええっ! アーリィちゃんたちがいたの!?」
「それは大変でしたね……」
「メイたちは? ていうか、装備が変わってるけど」
「一つの出会いが、私たちを助けてくれました」
「レティちゃん、必ず返しに行くからね……!」
こうして四人は無事、【記録の宝石塊】と【魔法の鍵】を手に入れて戻ってきた。
甲板の上、ハイタッチで成功を喜び合う。
「ここからは、かつて王族が用意した地下通路を使ってモナココに潜入。【真実の宝珠】を使って、事実をカジノで発表する形ね」
「その通りだ。モナココ王家は企業と組んでカジノを経営している。オーナー室に行けばトップの者たちに会えるだろう」
「地下通路側からの侵入や、現地での行動をしやすくするためのオトリ。これはどのように行うのでしょうか」
「き、【記録の宝石塊】で私たちのスキルを再現して、船で来ているように見せるというのは分かりますが……」
無人の船をただ真っ直ぐ走らせるだけでは、仮に魔法を放ちながらでも、すぐに撃沈されてしまうだろう。
「オトリは、オレがやる」
名乗りを上げたのは、元海賊バルディス。
「……実はモナココの海軍船の中には、『オレの船』もあるんだ。長らく一緒に海を走り続けたオレの、オレたちの相棒。海賊団が解散する直前、あいつはモナココ軍に回収されちまったんだ。今じゃ自慢のドクロも塗り替えられ、恥を晒し続けてる。ケジメをつけたいとずっと思ってたんだ……元船長としてな」
「そういうことね。それなら……任せるわ」
レン、今も『自分は幽霊海賊船の船長だ』という自覚があるせいか、少し共感。
深くうなずきながら、オトリ役を任せる。
「レンさんもやはり、幽霊船が乗っ取られたら助けに行くのですか?」
「当然よ。敵が世界最大の海軍でも全て沈めるわ」
「おおーっ!」
メイ、そんな船長レンの言葉に思わず興奮する。
「私たちは地上から、地下通路を使ってモナココに潜入。カジノで真実を証明する」
「オレはこの船で港からモナココに特攻。かつての相棒を葬り、同時に時間を稼ぐ」
これからの流れが決まり、うなずき合う。
「いよいよ突入ね。」
「ドキドキしてきちゃうよーっ!」
「ここまでは逃げの一手でしたが、ついに攻める時が来たのですね」
「ほ、本当に緊張感があります……っ」
始まる、モナココへの侵入。
「いよいよだね。取りあえず【記録の宝石塊】にあれこれスキルや連携攻撃なんかを覚えさせておいて。私たちは一度陸に戻って、船を送り出す形になるからね」
整備士はそう言って、操舵に戻る。
「まず【記録の宝石塊】に覚えさせるのは、私の【魔砲術】での攻撃が良さそうね」
どんな形であれ、こちらの方が『有効射程』が長いというのは、間違いなく有利になるだろう。
そう踏んでレンは【魔砲術】【誘導弾】【フレアストライク】を選択。
最初にこの連携を覚えさせることを決めた。
「あと、前に海で出会った船持ちプレイヤーにも、【発煙筒】で呼びかけておきましょうか」
「来てくれるかなっ」
「「「お――――い!」」」
「は、早いです……っ!」
「今か今かと待っていたのかもね」
【発煙筒】を使うや否や、恐ろしい速さでやって来た船持ちプレイヤーたち。
レンは笑いながら、彼らに何をしてもらうかを指定。
「絶対に、容疑を晴らしましょう」
「敵の本拠地に乗り込むかのような気分です」
「がんばりましょうっ!」
「はひっ!」
四人は気合を入れて、海を進む。
いよいよ、モナココへの再侵入の始まりだ。
◆
「モナココにおいて、カジノでの不正は大きな罪となります。まして最高額スロットでの不正となれば、かなり重い罰を受けることになるでしょう」
カジノのオーナーNPCは、広い役員室でモナココの王女にそう告げた。
「犯人は現場に戻るともいいます。そこで皆様方には、カジノ付近の監視をお願いしたいのです。もちろん見つけ次第の確保も」
カジノでの不正事件。
これはその容疑を向けられたプレイヤーたちが、モナココを目指すことが決まったところで動き出す新たな展開だ。
「本当に、この手のヒントが見つかったな」
楽しそうに笑うのは、メイたちが逃げ延びた後もカジノに残っていたグラム。
「マリーカとローランの言ったとおりだったな!」
アルトリッテも、これにはうれしそうに飛び跳ねる。
「メイちゃんたちの現状を考えると、無実を証明しに来る形だろうね」
メイたちを指名手配犯として大々的に発表した、モナココの大型カジノ。
メイの側からクエストの目的になりうるものは、やはり逆転の無罪を勝ち取ること。
そうなれば、カジノに戻ってくる可能性が高いとローランは考えていた。
「……モナココでの戦いになると思われる」
そしてこれはマリーカも、同じように考えていたようだ。
「まだ、確実ってわけではないけどね」
「なるほどな。だが、一つだけ確実なことがある」
そう言って、グラムが笑う。
「その通りだな!」
アルトリッテも、これに続く。
「指名手配犯となったメイたちを迎え打ち、捕える。こんなに楽しいクエストは他にない」
「うむ!」
「モナココにはメイたちが指名手配犯になったことでまたプレイヤーが集まってきてるし、面白いことになりそうだよなぁ」
これには金糸雀も、身震いするほどワクワクする。
他の誰が犯人側でも、ここまで盛り上がることはないだろう。
グラムたち五人はよろこんでカジノ側の話を受け、メイたちの到着を待ち受ける。
「……ふむ」
すると様子をうかがっていたワインレッドの帽子をかぶった男が、一つ息をついた。
メイたちにルーレットの代役を頼んだこの人物は、静かに笑みを浮かべる。
「念のため、もう一つ手配をしておきましょうか。虫はどこからわくか分かりませんからね」