軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

1174.海を進みます!

ハンターたちの追跡をかわし、海に飛び込んだメイたち。

陽光に照らされた海を、潜って進む。

「【ドルフィンスイム】!」

その泳ぎは、一気にスムーズで速いものに。

ツバメの手を引き進めば、後続が来てもメイたちを見つけることはできないだろう。

陽光が特に強く入り込んできているのか、明るく美しい海の中を進む二人。

やがて視界の先に見えて来たのは岩場。

さらにその先には、日の光が柱のように入り込んできている箇所がある。

続く岩場の道を進むと、一人の少女プレイヤーが泳いでいた。

この洞くつから海を進んだ先にはいくつか離島があり、魔物の発生が早いレベル上げスポットになっている。

しかし彼女は、仲間たちから遅れてしまったようだ。

「あっ」

メイは一度岩場の陰に隠れようとしたが、長い山脈のようになっている岩山の陰に『動き』を発見。

次の瞬間、現れた紫色の大ダコ。

「っ!?」

その姿を見た少女は驚き、大慌てで逃げ出すがここは海中。

伸びる触手の方が、圧倒的に早い。

実はレベル上げの孤島に向かうこのルートには、門番のようなボスが待ち構えている。

海中はとにかく不利。

この場所は『隠れて進む』のが常識なのだが、彼女はそれを知らなかったようだ。

振り返るメイ。

ツバメは少し悩んだ後、うなずく。

するとメイはツバメを残して、少女のもとへ。

「っ!?」

長い触手が、少女をつかむ。

近接型は圧倒的に不利な水中戦。

その強烈な力で引かれたらもう、ひとたまりもない。

「【装備変更】! それええええ――――っ!」

しかしメイはその速い泳ぎで、一気に特攻。

【海皇の槍】を、伸びてきた触手に突き刺した。

ダメージは高く一撃でHPゲージが吹き飛ぶ。

しかしこれは触手のHPであり、本体のものではない。

「メイさんっ!?」

「しつれいしますっ!」

驚きを見せる少女の手を引き、メイは泳ぎ出す。

すると残った七本の触手が一斉に攻撃体勢に入った。

本来であれば数人で分散させる触手を、一人で避け切ることは相当難しい。しかし。

「すごい……」

メイは人魚を思わせる華麗な泳ぎで、迫る触手を隙間をすり抜ける。

そんな中、軌道が違う一本は振り降ろし。

刀で斬り下ろすかのような流れで、高速接近。

「きゃああああっ!」

気付いた少女が、思わず悲鳴をあげるが――。

視野の広いメイは、もちろん気づいていた。

突き出した【海皇の槍】は、先んじて触手の『通行路』の先に刃を向ける形で設置。

勝手に突き刺さって、また一本触手が粒子となって消える。

ここでメイは大きく泳いで、触手の攻撃を一身に集める。

「それっ!」

そして一気に加速して回避、『道』が見えたところで構えを取る。

「せええええのっ! 飛んでけええええ――――っ!!」

投擲された【海皇の槍】は、水中であることがプラスに働く変わり種の武器。

全てが遅くなる海の中で、水を割っているとは思えない速度で飛来。

そのまま大ダコに突き刺さった。

それでも止まらない。

敵の身体を貫いて、海面から大きな飛沫を上げると、空へと飛んでいった。

メイが手を伸ばすと、戻ってきて収まる【海皇の槍】

三人は岩場の一角にできていた、酸素ポイントへ。

「あ、ありがとうございましたっ」

とても海中の戦いとは思えない見事な勝利と、突然現れたメイという状況に、驚きふためく少女。

「いえいえー」

「実は、一緒に来ていたパーティとはぐれしまいまして。私たちはこの洞窟は初見だったので……」

「そういうことだったのですね」

「メイさん、ツバメさん」

一息つくと、少女は一歩下がって真面目な顔をした。

「……実は私、ハンターなんです」

そう言って、宝珠を手に取った。

一瞬で走る緊張。

大ダコとの戦いの前に、メイがツバメと一度目を合わせたのはこの可能性を踏まえて。

それでも助けようというメイの姿勢に、ツバメが答えたという形だ。

狭いこの場所では、【リジッドタッチ】と【捕縛の宝珠】だけでも十分武器になる。

息を飲む、メイとツバメ。

「……できない」

少女はそう言って、ガクリとヒザをつく。

「こんな風に命を助けてもらって、その恩を仇で返すなんて……私には、できませんっ!」

クエストのノリとしては、ここでいきなり宝珠を使う方が楽しい。

しかしこれだけの助けられ方をした後に、「バカめ!」というのは気が引けるらしい。

とはいえ、大げさにヒザを突いて「自分にはできない」と叫ぶことも、十分『役』を楽しんでいるのだが。

「メイさんたちは、どうしてここへ?」

「海中で、陽の光が差してるところを目指してますっ」

「それでしたら、さっきのタコがいた場所の背後に狭い洞窟があるみたいです。陽光はそっちに差しているので、案内します」

「ありがとうございますっ」

「こういう出会いは、このクエストの醍醐味かもしれませんね」

こうしてメイたちは、宝珠をしまった少女と共に先を行く。

そこは大ダコをかなり上手に引き寄せ、かわさないと入れない海中洞窟。

メイたちが進むと、陽光が差し込む洞窟の中に、淡い紫の宝石塊が輝いていた。

それは海を照らす陽光が、宝石に当り続けることによって生まれたものだ。

「あれですね」

メイとツバメはうなずき合い、両手で抱えるほどの大きさを誇る【記録の宝石塊】を入手。

見事に目的を果たした。

ツバメが抱え、そのまま三人で洞窟の奥へ。

するとそこには、朽ちかけた旧型のポータル。

触れると、やや弱々しい光と共に起動した。

「素直に洞窟を戻るか、ポータルを使って進むかですね」

目的を完了した際、外への移動を一瞬で終わらせるダンジョンは少なくない。

ここでも、そういう形が使えるのだろう。

ただし、その先にまたやっかいが待っていないとも限らない。

ツバメは少し悩むが、宝石塊は持って歩くには邪魔になる。

戻った洞窟内で戦うことになれば、アイテム欄に入らず、手が塞がるタイプの物品は邪魔になるのみだ。

少し悩んで、ツバメは「行きましょう」とうなずく。

少女も完全にはぐれてしまったパーティを探すのではなく、陸に戻っての再会を選択した。

そして三人はそのまま、旧型ポータルを使用。

広がる光と共に、海中から離脱した。

「ここは、街ですか」

たどり着いたのは、古い海の町。

メイは身体を、濡れた犬のようにブルブルして水気を飛ばす。

「ここからまた、元海賊さんのところに戻らないといけないね」

「私も、お手伝いしますっ!」

名乗りを上げる少女。

こうして見知らぬ街にたどり着いた三人は、元海賊のもとに戻るために動き出した。

「いないなぁ……」

「どこに行ったんだ?」

そこにやって来たのは、少女の仲間のパーティ。

途中で分かれてしまった少女を探して、付近を泳ぎ回っていたようだ。

やがてメイたちが進んだ洞くつを進み、そこに旧型のポータルを発見。

それを見て、うなずき合った。