軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

1150.華鉱山へ!

メイたちと分かれたレンとツバメは、【クロニウム鉱石】を求めて『華鉱山』へと向かう。

「タヌキたちは、鉱石さえ持って来ればフライパンを作ってもらえるって言ってたわよね」

「はい、町に戻れば鍛冶師にお任せでいいとのことでした」

二人が山道を進んでいくと、これぞまさに採掘場といった感じの岩山にたどり着いた。

赤茶けた山には掘って作られた穴が空き、中には魔法珠の橙の輝き。

その奥へと続いているのが、トロッコ用の線路だ。

「ここね。考えてみるとダンジョンや洞窟には何度も入ったけど、鉱山っていうのはなかったわね」

「はい。ちょっとワクワクします」

鉱山前には採掘によって出た鉱石なんかと共に、道具を置くためのテントがあり、そこに採掘員たちが腰を降ろしている。

「冒険者か? こんなところに何の用だ?」

「【クロニウム鉱石】を求めてきたの」

「なるほど……それはタイミングが悪いな。実はクロニウムのある方のルートは、大きなヒビが入ってもう使ってないんだ」

「絶対に、崩れますね」

「間違いないわね」

「それに、奥の方ではガスが漏れ出てる場所もあってなぁ」

「爆発もしそうです」

「間違いないわね」

「そのせいで人が寄り付かなくなって、今じゃ魔物も出るみたいなんだ」

「もうただの地獄じゃない」

嫌な予感だけで作られた坑道。

それでも、行かないという選択は無し。

むしろ映画のような展開を想像して、ワクワクしながら高さ二メートルほどの坑道へと踏み込んでいく。

「ああそうだ。道は難しくはないけど、看板はしっかり見た方がいいぞ」

採掘員から使い古したピッケルを譲ってもらったレンとツバメは、静かな道を進む。

しばらく行くと、見えてきたのは下り坂。

そこにはもう一本の線路と、トロッコが置かれていた。

「この坂を、早く下るためのものかしら」

「これはぜひとも、乗ってみたいです」

普段はクールな印象すら感じさせるツバメが、いそいそとトロッコへ。

レンもこれには興味津々。

小走りでトロッコに向かい、二人並んで乗り込む。

「実は今でも、大きなスーパーのカートとか乗ってみたいと思う時があるのよね」

「とても分かります」

「いきましょうか!」

「はい!」

トロッコには、後部に大きなブレーキレバーがついている。

「カーブに合わせて身体を倒したり、座って乗るとわずかに速度アップ。なるほどねぇ」

クエストによってはタイムアタックなどもあるのかもと、うなずくレン。

レバーを外すと、トロッコが坂を下り始める。

「速いですね!」

「トロッコに乗って走るのって、結構楽しいかも! きゃあっ!!」

飛んできたコウモリに、めずらしくはしゃいでいたレンがあげる悲鳴。

思わず二人して、トロッコに隠れるようにしゃがむ込む。

「これは驚きの演出ですね」

「まったく……やってくれるわ」

思わず、ツバメの背に抱き着いていたレン。

突然のことにツバメが笑い出し、自分の上げた悲鳴にレン自身も笑う。

「今ヒヨコちゃんを取り出したら、ヒヨコちゃんが高速で走っていく感じになるのでしょうか」

「……やらないでよ?」

どんどん上がっていく速度に、同じように気分も盛り上がっていく二人。

再び立ち上がり、そのまま坂を下り切った後しばらく直進。

かなりの距離を進んだところで止まった。

「結構距離を稼げたわね」

「はい、ですが……」

トロッコが止まった先のルートは、壁にしっかりとヒビが入った危険区域。

二人は崩落に気を付けながら、足を進める。

いくつもの別れ道を、とりあえずで選択して奥地へ。

その際、魔法珠燈に照らされている方を決め手にしたのが良かったのか、早く異変に気づくことができた。

「空気の感じが変わった気がする」

「そうですね。おそらくこれが、もれ出しているというガスでしょう」

仕掛けが増えたということは、『目的地』に近づいていると考えるのが定石。

二人が注意しながら進むと、そこは行き止まりの空間。

しかしホールのように広がったその場所には、岩肌に青いマーブル模様。

【クロニウム鉱石】の層あり。

「それじゃ、さっそくいきましょうか」

「はい」

うなずき合い、ピッケルで鉱石を掘り始める。

長い黒髪に小さな身体のツバメもだが、レンがピッケルを振るう姿が本当に似合わない。

中二病の炭鉱少女といった感じの絵面に、ツバメは思わず笑みをこぼす。

「【スラッシュ】!」

「【スタッフストライク】!」

普通にぶつけるよりも、攻撃スキルの方が少しだけ採掘速度アップ。

ピッケルをぶつけると次々に鉱石がこぼれる感覚は気持ち良く、採掘は進む。

そしてすぐに、程よい量の採取に成功した。

「さて、そろそろかしら?」

「そのようです」

二人がピッケルを下ろしながら振り返ると、案の定そこには二体の魔物。

二体のアンデッドは、古びたヘルメットをかぶったアンデッド鉱夫だ。

落ちくぼんだ眼に怪しい光を輝かせた直後、ピッケルを手に突進してきた。

「思ったより速いです」

侮れない速度で迫って来て、豪快に振るう攻撃は意外な鋭さを誇る。

先行してきた個体のピッケル振り降ろしを、バックステップ一つでかわす。

すると二体目の個体は、振り上げで追撃してきた。

これもツバメは冷静に見て、二歩のバックアップで回避して反撃に入る。

「【投擲】!」

「【連続魔法】【フリーズボルト】!」

レンもツバメも、言葉を交わさずとも分かっている。

『崩落』のきっかけになりそうなスキルは、控えて反撃するのが良い。

単純な振り降ろしは隙も少なく、一体目は【氷ブレード】を防御で対応。

振り上げの二体目は、氷弾を喰らってわずかに下がる。

そして生まれた、わずかな空間。

手前のアンデッド鉱夫が、スキルエフェクトと共にピッケルを振り下ろす。

すると、砂が高く巻き上がった。

「……どういう事かしら」

この状況で単純な接近攻撃ではなく、砂煙をあげた意図。

違和感に導かれたレンの目が、捉える。

後方アンデッド鉱夫の空いた手にあった、ダイナマイトのような筒を。

「そうはいかないわ! 高速【誘導弾】【フリーズボルト】!」

自分たちだけではなく、敵が自爆気味の『崩落』を狙う可能性もある。

レンは即座に気づいて、氷弾で敵の腕を弾いた。

すると落ちたダイナマイトが跳ね転がって、炎が消えた。

やはり敵の狙いは、爆発を起こすことだったようだ。

「【低空高速飛行】!」

レンはすぐさま、追撃に飛ぶ。

【魔剣の御柄】に【フリーズストライク】を込めて、斬りつけ着地。

「開放!」

目の前で放たれた一撃は、二本目のダイナマイトを取り出していたアンデッド鉱夫を斬り飛ばした。

一方もう一体のアンデッド鉱夫は、高速の直進からピッケルを豪快に振り払う。

これをツバメは、しゃがみ一つで上手に回避。

すぐさま反撃に出ようとするが――。

「風ですか……っ!」

生まれた暴風に、吹き飛ばされる。

突き飛ばされるような形で転がっていくツバメを、高速移動で追いかけていくアンデッド鉱夫。しかし。

「【受け身】!」

ここで新スキル【受け身】を使用。

通常であればこのまま倒れ込み、追撃を受ける危機となる瞬間。だが。

「【反転】!」

このスキルで、好機に変わる。

ツバメは前回り受け身のような形で前転した後、そのままの流れで振り返った。

一連の流れは速く、そして華麗。

加速接近中のアンデッド鉱夫は、まさかの行動に反応が遅れた。

「【加速】【アサシンピアス】」

次の瞬間、突き刺さる【致命の葬刃】

振り下ろせずじまいのピッケルが背中側に落ち、アンデッド鉱夫は粒子になって消えていった。

美しい流れに、レンが感嘆する。

「良いスキルね。それなら対人でも、確実に敵を引き寄せてから攻撃を叩き込めるわ」

「はい。直後に【反転】を使える事が、とても大きいです」

ハイタッチしてから、もらってきたズタ袋に【クロニウム鉱石】を詰め込む。

敵の強さよりも、『崩落による死に戻り』を狙う鉱山ダンジョン。

二人は見事に目的アイテムを手に入れ、引き返すことになった。