作品タイトル不明
1148.金鶏を求めて
メイたちは『巨大オムレツ』の材料を求めて、鳳にやって来た。
【金鶏の卵】は『黄山』に、【クロニウム鉱石】は『華鉱山』にあるようだ。
「ここは、手分けの形かしら」
「仕事も控えていますし、その形が良さそうですね」
二つの山は、そんなに離れていない。
ここはパーティを二つに分けて、それぞれ取りに行くという形も良いだろう。
「金鶏は色んなクエストが考えられるからメイ、鉱石は山の中だろうからツバメがメインかしら」
そうなると、いざという時に『なんでも運べる』メイとまもりが組むのが定番。
必然的に、レンとツバメが組んで動くという形になりそうだ。
「それじゃ、また後でね」
「はーい!」
「【クロニウム鉱石】必ず持ち返ります」
「が、がんばりますっ」
手を振り合って、別れた四人。
メイとまもりは、黄山という岩山に入り込んでいく。
長い坂道は、よく見る灰色の岩石ではなく黄色がかった色味をしている。
木々もそこそこ多く、古い中華の仙郷を思わせる雰囲気だ。
「洞穴があるよ」
メイが山頂付近で見つけたのは、ドラゴンの住処を思わせる大きな洞穴。
ぽっかりと空いた穴の中に、木の枝で作られた巣。
そこには、黄金色の大鶏が眠っている。
そしてその背後には、高さ2メートル半ほどになる大きな卵が一つ。
「わあ、大きな卵……」
「や、やはり、こういう場所の主は眠っているんですね」
RPGあるあるを口にしながら眺める金鶏は、体長が二階建ての家よりも高い。
「そういうものなの?」
「はひっ。大抵留守にしているか寝ているのかのどちらかです。そしてお宝に手を伸ばした瞬間……ガオーッときます」
「なるほどぉ」
「この枝の伸び方、踏んで音を鳴らしたら目が覚める形ではないでしょうか」
この状況で、踏まないのはさすがに不可能。
だとすると卵を持ち上げた時に覚醒ではなく、一度対面する形になりそうだ。
「あ、あの、メイさん。もしかするとここで、一緒にいない方がいいかもしれません」
そう言って辺りを見回した後、天井を指さした。
何かあった時のために、メイを隠しておく。
まもりは、そんなやり方を提案した。
「りょうかいですっ! 【装備変更】【ラビットジャンプ】!」
メイは【肉球グローブ】を装備して、高く跳躍。
そのまま天井に爪を立てて張り付くと、うんていの様に進んで金鶏の真上で待つ。
そしてメイが「だいじょうぶだよー」と尻尾を振ったのを確認して、まもりが足を踏み出した。
すると予想通り、木枝がパキッと乾いた音を鳴らした、
「……なんだ、貴様は」
目を覚ました金鶏は、やや高い声で話し出した。
「あ、あの、突然申し訳ないんですが……その卵を、頂けないでしょうか」
想いっきり盾に隠れた状態で、まもりが話す。
「卵など、伸びてきた爪のようなもの。後生大事に備えておくようなものでもない」
「そ、それでしたら――」
「だが、ただでやるというのは面白くない。汝は冒険者だな。ならばこの卵、実力で奪い去ってみろ」
そう言って立ち上がった金鶏は、歩を進める。
「っ!?」
黄金の身体をした巨鳥の圧に、思わず下がっていくまもり。
「どうした? ここまでやってきて挑まずに帰ることもあるまい。さあ、汝の力で卵を持ち帰ってみせよ!」
そう言って金鶏が、その派手な翼を広げてみせたその瞬間。
「【バンビステップ】!」
『ぶら下がり状態』を解除して着地。
卵を抱えたメイが、金鶏の真横を通り過ぎる。
「あ、ありがとうございましたーっ!」
まもりはブンッと頭を下げて、耳に尻尾に肉球の手足で、卵を抱える野生児少女の後を追う。
「なんだと!? だが、勝負はここからだ。割れやすい卵を無傷で持ち帰るのは、容易ではないぞ!」
すると金鶏はそう言って、スキルを発動。
「【チキンダッシュ】!」
砂煙をあげて駆け出すと、一気にメイとの距離を詰めてきた。
そしてそのまま、翼を広げて体当たり。
「メイさんっ!」
「うわっと!」
猛スピードで駆けてくる巨大ニワトリの思わぬ迫力を前に、いつも通りの回避を図ったメイ。
しかし卵は大きく、広げた翼が卵にかすめて転がり落ちた。
ここでクエストの場所が、坂だった理由が判明する。
メイの手を離れて転がり出した卵は、その速度をあげていく。
「うわわわわわわーっ!」
ゴロンゴロンと、坂を転がり落ちていく卵。
メイとまもりは、すぐさま後を追う。
どのくらいの衝撃で割れてしまうのか分からないため、とにかく緊張感が圧倒的だ。
「「あっ」」
思わず二人の声が重なる。
なんと坂の途中にあった段差によって、卵が大きく跳ね上がった。
地面までは、高さ数メートル。
さすがにこのまま地に落ちれば、割れてしまう可能性が高い。
「【装備変更】【バンビステップ】!」
メイは【鹿角】装備に変えて、一気にダッシュ。
下から卵を追い抜いたところで反転。
「よいしょっ!」
落ちてきた卵を、どうにか抱え上げた。
「【チキンダッシュ】」
本来なら、数人がかりで神輿のように掲げる卵。
キャッチしたメイがバランスを取ろうとしたところに、再び金鶏が駆け込んでくる。
「【鶏足蹴り】!」
低い跳躍から放つのは、卵を狙った強烈な前蹴りだ。
「大きなオムレツのため……負けられませんっ!」
こちらもフレキに負けないくらい、『オムレツの口』になっているまもり。
「【かばう】! 【シールドバッシュ】!」
素晴らしい集中力を発揮して、真横から跳躍特攻。
そのまま突き出す衝撃波で、金鶏を吹き飛ばした。
「まもりちゃん、ありがとう! 一緒にオムレツ食べようねっ!」
「はいっ!」
メイの笑顔の誘いに、思わず満面の笑みで返すまもり。
ここでオムレツの口は、『メイと一緒にオムレツの口』へと変化した。
「こ、この隙に山を降りてしまいましょう!」
「りょうかいですっ!」
こうなってしまったらもう、メイと一緒にオムレツを食べること以外は敗北だ。
転がった金鶏が体勢を立て直す前に、駆け出すメイとまもり。
だがもちろん金鶏が、このまま二人を見逃すはずがない。
「コケェェェェェェェ――――ッ!!」
朝を迎えたニワトリのように、あげる大きな鳴き声。
ここからさらに、卵を狙った攻勢が始まる。