軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

1134.シャッフル

「楽しいねえ。こういうトリッキーな戦いも悪くない」

ルナティックは、嗜虐的な笑みを作ってみせた。

全て実体を持つため、判別が難しい4体のアスモデウス。

本体以外にはダメージが通らず、また本体以外の攻撃は喰らってもダメージにならないという事実を、レンが見抜いた。

しかし背後に控えていた72柱悪魔のスキルは、なんと各自の持つスキルの効果をランダムに入れ替えるもの。

まさかの事態に慌てるツバメやまもりを前に、ルナティック本人が動き出す。

「さあ行くよ、ナイトメア! 【飛び影】!」

「【フレアストライク】!」

レンは【低空高速飛行】を狙いつつも、攻撃魔法が出た場合はけん制になると、杖をルナティックに向けて魔法を発動。

放たれたのは、わずかな輝き。

それは【吸魔】が不成立の際に生まれるエフェクトだ。

もちろんこの位置では意味なし。

「そういうところだよねぇ、君の優秀さはぁ。ナイトメアは攻撃魔法が多い。だからあくまで照準はボクに向けておく」

目的の魔法が出なくても無為になりにくい選択をしているベリアルに、感心しながら接近。

「でも残念、ハズレだ」

「【ブリザード】!」

飛んできた【フレアアロー】をかわし、ルナティックはそのままベリアルの足元に手をついた。

「【レビティア】」

対象を空中に吹き飛ばすスキルを決めると、そのままバングル付きの手をベリアルに向ける。

「【ブレイズキャノン】! 続け、アスモデウス【灼火弾】!」

ルナティックの闇の炎と、アスモデウスの火炎弾が混ざり合い、炸裂。

「きゃあああああ――――っ!!」

空中のレンに直撃して、吹き飛ばした。

「まだまだ、ここからだナイトメア! 【飛び影】!」

地を転がったベリアルを追いかけて、駆けるルナティック。

「そうはさせぬ! それーっ!」

「っ!!」

メイ、追撃に駆けるルナティックに【王樹のブーメラン】を投擲。

「ちっ!」

スキルなしでも十分に速く、強力なブーメランを【飛び影】で回避すると、そこにメイが駆けつけてきた。

単純な剣による攻撃。

しかし通常攻撃でも十二分に威力の高いメイの攻撃は、しっかりとした回避が必要だ。

「【連続魔Ⅲ】【ブレイズバレット】!」

闇属性の弾丸魔法を五連発。

これを目の前で撃たれて、それでも当たらない。

「はあっ!」

「っ!」

反撃の剣の振り上げが、大きく足を引いたルナティックの胸元をかすめていく。

スキルがなくとも、近接に持ち込まれた時点で不利になる。

それがワイルドだ。

「たいしたものだねワイルド、でも! 【アイアン・メイデン】!」

「っ!」

そのことをあらためて思い知ったルナティックは、広範囲に矢じり付き鎖が大量に突き上がるスキルで。メイをけん制。

まちまちの角度で突き上がった鎖をそれでも回避するメイだが、さすがにルナティックを追うことはできず停止。

「【灼火弾】!」

「うっ!」

即座にアスモデウスの騎竜が炎弾を吐き、メイは防御を選ばされた。

「今っ!」

下がるルナティックに、ここで仕掛けるのはベリアル。

「イチかバチかじゃ当たらないよナイトメア! 特に君の魔法は、全て把握済みだからねぇ!」

「――――【堕天彗星】」

「なにっ!?」

聞き覚えのないスキルに、驚きを見せるルナティック。

次の瞬間、夜空に見えた白い輝きに慌てて顔を上げる。

そこには、今まさに落下してくる光の尾。

「【飛び影】っ!」

ギリギリで直撃を回避するが、【堕天彗星】の効果はここから。

天から落ちた天使が、その身を染めた魔の力を解き放つかのようなその魔法。

暗紫色の爆破を巻き起こし、ルナティックを吹き飛ばす。

ダメージは2割ほど。

「く、ああああっ! その魔法は、なんだ……? これだけの規模の魔法を、いつの間に増やしていたんだ!?」

「所持スキルのランダム化は確かにやっかいだけど、アイテムの効果までは別みたいね。メイがブーメランを投げたことで、『もしや』と思ったのよ」

そう言ってレンが取りだしたのは、【魔導経典】

「ランダムな魔法が飛び出るこのアイテムには、【栞】を挟んでおくことで『再現』が可能になるの。まあ200回ほど、この魔法が出るまでやり直したけどね」

メイの投擲から思いついた作戦は、見事成功。

ようやくルナティックの攻勢が止まった。

この隙にメイたちは、シャッフルされたスキルの内容確認を進める。

「先に打倒すべきは【シャッフル】を使い、おそらくアスモデウスの『幻覚』も生み出してる――――ダンタリオン!」

「っ!」

敵72柱悪魔の正体を見抜くレンに、驚くルナティック。

「なるほど、即座にアイテムを選んだのはワイルドだったね。野生の勘ってやつかな」

「け、計算づくだ……っ!」

慌てるメイに、薄く笑いを浮かべるルナティック。

「【ブリザード】!」

レンは先ほどの攻撃で把握した【フレアアロー】で、先行して攻撃を開始。

「くっ!」

ルナティックに回避させることで、ツバメのために時間を稼ぐ。

この間にアスモデウスのもとに駆け込んだツバメは、短剣で攻撃。

「【アクアエッジ】【連続投擲】」

【アクアエッジ】は短剣【グランブルー】によるもので改変なし。

そして【連続投擲】は、【スラッシュ】になっていることを確認。

最もシンプルな短剣の振り上げから放たれる水刃で、偽者のアスモデウスを斬り飛ばす。

ここでメイが前に出た。

即座に迫る、二体のアスモデウス。

メイが確認できたスキルの一つは――。

「【カンガルーキック】!」

槍の攻撃をかわして、騎竜の脚をつかむ。

【カンガルーキック】のシャッフル先は【ゴリラアーム】だ。

「せーのっ! それええええええ――――っ!」

豪快なぶん回しからそのまま、もう一体のアスモデウスに叩きつけた。

「【裂空槍】」

しかし本体はその隙に、レンのもとへ。

空中から迫る突撃は、喰らえば大ダメージ必須だが――。

「【水球の守り】!」

スキル自体が多くないまもりは、見事に物理防御スキルを見つけ出していた。

シャッフル先の【地壁の盾】を使用。

アスモデウス本体の槍を受け止める。そして。

「発動!」

レンの言葉に合わせて、『戦闘前』に刻まれていた【暴水のルーン】が発動。

岩肌にぶつかった荒波のように、弾け散る大量の飛沫がアスモデウスを吹き飛ばす。

「アスモデウスを……っ!?」

その猛烈な勢いに、アスモデウス本体は地面を派手に跳ね転がっていく。

「ダメージはほとんどないけど、これだけ離れたら復帰に時間がかかるでしょう!?」

そう言ってレンは、杖を構えた。

「ダンタリオンを確実に倒すために、アスモデウスを先に離脱させたのか……!」

向けられた杖は、ダンタリオンを狙うもの。

「あとは私の運次第かしら――――【氷塊落とし】【スタッフストライク】!」

レンが把握できたのは【氷塊落とし】が【コンセントレイト】になっているというもの。

よって未知の【スタッフストライク】は、賭けになる。

次の瞬間杖から放たれたのは、【フレアストライク】

溜めによって炎砲弾は、大型の炎塊となって一直線にダンタリオンのもとへ。

「ちいっ!」

ルナティックはすぐさま走り出し、ダンタリオンの前に。

炸裂する炎砲弾が強烈な炎を巻き起こし、夜の町を赤く染める。

「……たいしたものだよベリアル。スキルを絞ってなお、この状況に対峙できるプレイヤーなんて、君たちくらいのものだろうね」

「サンキュー」

自ら盾となって、ダンタリオンを守ったルナティック。

HPはさらに2割ほど減少し、メイのカッコよくない英語に笑みがこぼれそうになるが、それでも態度は変えない。

すぐに月を見上げ、狂気の笑みを作って見せた。

「だが勝負はここからだ! 決着を付けよう、闇を継ぐ者たちィィィィ――ッ!!」