軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

1127.戦いを終えて

【無明雪月花】によって真っ白に染められた、ヴァルガデーナの一角。

【凶弾】を受けた樹氷の魔女は崩れ、ヒザを突いた。

「……予想以上の能力。これが使徒長の見込んだ、後継者たちか……」

吐く息が、白く広がる。

「闇を継ぐ者。使徒長……私に一体……何が足りなかったと言うのでしょうか……」

そしてダイアモンドダストのように、キラキラと輝く粒子を残して消えていった。

するとスキアの左手の凍結と、クルデリスの黄金化が解ける。

「生きているか?」

「ああ、今回も死にそこなっちゃったみたいだねェ」

もちろん、生きていることを知っていて聞くスキア。

クルデリスは、死に場所を探している狂戦士みたいなノリで応える。

「プレイヤーが突発的にNPCと連携を組むのは、かなり難しい。勝負を分けたのは――」

「連携だねェ」

樹氷の魔女とヘルメスは、急造のコンビネーション。

やはり互いの戦い方を知る知らないは、勝敗につながりやすい。

「だが、ゼティアの戦いを乗り越えた者たちというのは、皆ここまでできるものなのか?」

クルデリスはほぼ戦闘不能にまで追い込まれ、スキアも6割近いHPを奪われている。

そして運良く、スキアの右腕が残ったことで勝てた。

そんな厳しい戦いに、思わずため息をつく。

「これでもう敵対者が出てくることもないだろう。サグワのところに向かおう」

「了解ィ」

二人は苦笑いしながら、サグワの家のドアを開く。

すると最奥で震えていたサグワが、驚きと共に顔を上げた。

「き、君たちは……無事だったのか!?」

「んっふふ。無事って言うには少し、ダメージを受けすぎてるけどねェ」

「俺は用意していたこの魔法陣のおかげで、助かったんだ」

「こうなることを、知っていたということか?」

「ああ……町長は狂ってる。この狂化ですら、住人たちをこの町から出られないようにするための仕掛けに過ぎないんだ……! 俺は配達でこの町に来た時に、そのことを知ってしまって、ヴァルガデーナに監禁されることになった」

「出会った時に我々を『帰らせよう』としていたのも、町に捕らわれないようにするためか」

「穏やかじゃないねェ」

クルデリスは、妖しい笑いを浮かべる。

「まさかこんなに早く、始まってしまうなんて……」

「それは、逆行クエストを進めてる連中が上手いのかもしれないな」

「んっふふ。さすがは暗夜教団の教主サマってところかなァ」

「それで、町長の狙いはなんだ?」

「町長は錬金術師の生み出すものに魅入られた。町を囲む化物たちはその錬金術師の『製造』したものらしい。町長はそいつのために住民と、高い魔力を持つ魔獣や冒険者たちをこの町に縛り付け、その命を一つに集めるつもりなんだ」

「命を一つに集めるかァ。物騒だねェ」

「魔獣や冒険者……なるほどな。その場にとどまらない者たちを縛る方法は……石化か?」

「……そうだ。俺は家族の居場所を知られていたから、脅しをかけられて冒険者たちの足止めなどをさせられていた」

「その野望を止めることは?」

「もちろん可能だ……できるなら、町長を止めて欲しい」

そう言ってサグワは、さらに魔法陣の効果を強める。

「俺は大丈夫だ。だから、頼む……!」

「ああ、問題ない」

するとスキアは短くそう言って、サグワの家を出る。

そして、背を向けたまま告げる。

「なぜなら我らは、闇を継ぐ者」

「悪を切り裂く」

「「――――断罪の刃だ」」

妖しい笑みを浮かべながら去る、二人の背を見送るサグワ。

この光景を見たのがもしプレイヤーだったら、新たな『患者』を生み出していたところだろう。

「……でもさァ、結局何を審判してたんだろうねェ?」

原状復帰によって、少しずつ氷雪が消えていく。

元の様子を取り戻していく町を見ながら、クルデリスがつぶやいた。

「確かに、気になるところだな」

樹氷の魔女の残した魔法の効果に驚く二人だが、なぜ怒り気味だったのかは最後まで分からなかった。

スキアとクルデリスが、予想外の敵対者との戦いを行っていた時。

ワイルドたちは、聖女リーシャの相棒フルーネを探して、ヴァルガデーナの町を駆けていた。

耳の良いワイルドのおかげで接敵は少なく、広い町の中でも迅速に探索を続ける。

たどり着いたのは聖女の住んでいる、町の小さな教会。

「いないよ」

しかし教会に、その姿はなし。

あらためて付近を見回してみると、後を追ってきた狂化町人たちが見えた。

「【ディスペル】っ!」

聖女が黄金の杖を突くと、広がる魔法陣から光が立ち昇り、迫る狂化町人が動きを止めた。

しかしそれもわずか。

すぐに動き出した町人は、聖女に襲い掛かる。

「皆さんお願いです! 目を覚ましてくださいっ!」

必死に叫ぶも、その声は届かない。

「【バンビステップ】」

「【加速】」

それを見て、すぐさま駆け出したワイルドとスワロー。

「がおおおおおお――――っ!!」

あくまでダメージは最小で。

【雄叫び】で狂化町人たちの動きを止めると、そこに飛び込んできたスワローが聖女の手を引き下がる。

「ありがとうございます」

聖女は安堵の息をついた後、すぐに泣きそうな顔をする。

「町の皆さんは一体、どうしてしまったのでしょうか……」

「まだ分かっていないの。ただ……背後にいるのが誰なのかだけは確定しているわ」

「――――私を、お呼びですか?」

聞こえてきた声に、視線を向ける。

そこにいたのは、狂化の効果を受けていないのにもかかわらず、狂った目をした町長だった。