軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

1122.逃げ出した後

強制狂化の範囲を、無事に抜け出した六人。

「【投石】【投石】! 【投石】【投石】【投石】だ――っ!!」

メイが連発した石が、木に彫り込まれた魔法陣罠を次々に破壊。

森の中に、まばゆい魔力の光が飛び散る。

「【連続投擲】!」

さらにツバメが【ブレード】の投擲で、岩に仕込まれた魔法陣を破る。

するとその隙間を、異形の鳥型が迫り来る。

「鳥型が向かってるよ!」

「【フリップジャンプ】【残光連華】」

夜中の森を飛来する、灰色の怪鳥はフクロウがモチーフか。

夜闇に紛れての攻撃はやっかいだが、メイの【夜目】の前には効果なし。

異形の鳥型は、クルデリスの斬撃に叩き落とされた。

「ないすーっ!」

メイとツバメが罠への対応を始めた時点で、クルデリスは必然的に敵の打倒に集中すればいい。

メイのいち早い気づきと組み合わせれば、対応は完璧だ。

「なんか、そこはかとなく三人がポーズを決めてる雰囲気なんだけど……」

見事な着地を決めて、ニヤリと笑うクルデリス。

まるで組織の暗殺者のようにわずかに視線を合わせる三人に、レンはちょっと震える。

「……次、いっぱい来るかもっ!」

メイが慌てて顔を上げる。

聞こえてきたのは、地を駆ける15匹ほどの狂犬。

骨の突き出た犬たちが、群れで襲い掛かってくる。

「これは少し、やっかいになりそうだな」

そう言って、前に出たのはスキア。

自然とメイたちは、木の陰に身を隠す。

「喰らいつけ、【万魔の眼光】」

放たれた十字光が炸裂し、細かな輝きが散弾銃のように広がる。

十字光はまとめて、狂犬たちを弾き飛ばした。

「普通はもっと苦戦するんだろうねェ、この罠のせいでさァ」

クルデリスは、そう言って笑う。

本来のこの道は、各所に隠された無数の罠に気をつけながら敵を倒して進むという難所。

暗い夜の森を進むのは、容易ではない。

「メイさんの『目』に、助けていただきました」

「いえいえーっ」

えへへ、と笑うメイの目に映ったのは街道。

どうやら森の中を駆ける展開は、ここまでのようだ。

罠がなくなり、敵の追撃も止まった。

「街道に出てしまえば、さすがにもう大丈夫みたいね」

「よ、夜の森を逃げるというのは、思った以上にドキドキしました」

安堵の息をつく六人。

森を無事に抜け、謎の儀式から完全に逃げ出すことに成功した。

「狂化を防ぐ『加護』の効果時間も、余裕をもっての退避になりましたね」

「それにしても、やってくれたわね……あの町長」

「まったくだ。まさか逃げ道を塞ぐための罠を、我らを利用して張らせるとはな。万死に値する」

忌々しそうにするスキア。

「んっふふ。でもまさか、あんな大物たちと戦えるとは思わなかったねェ」

一方クルデリスは、リズたちとの戦いを思い出して笑う。

「敵が大きな力を持ってしまって、一度逃げるっていうクエストは初めてじゃない?」

「狂化……やっかいな力だ」

レンとスキアは、町の惨状を思い出して息をつく。

「や、やはりこの後、あの町に戻る形になるのでしょうか」

「そうなるわね。私たちはサグワの救出を頼まれてるわけだし、可能であれば聖女も助けたい」

メイは大きくうなずく。

メモに『町長の言葉は信じるな』と残したサグワは、今もヴァルガデーナの中。

そして町の皆の役に立ちたいと言っていた聖女も、同様だ。

これから、取り戻しに向かうことになるのだろう。

「でも、町に戻るとリズちゃんとか白夜ちゃんみたいに『わたしがわたしであるうちにィィィィ』ってなっちゃうんだよね?」

「鍵になるのは聖女じゃないかしら。私たちが狂化をまぬがれたのは、聖女の加護のおかげでしょう」

「だがいつの間に、我らは加護を受けていたんだ?」

「も、もしかして……!」

まもりは聖女にもらった【クッキー】を取り出した。

詳細を確認すると、そこには『食べると聖女の加護を得る』と書いてある。

「なるほどね。私たちは図書館クエストの後にクッキーを食べたから無事だった。そしてアイテムとしても残ってるから、もう一度踏み込むことが可能というわけね」

狂化に落ちる時間制限までに、サグワや聖女を見つける。

その後、何かを企む町長と戦うというのが、ここからのおおよその流れだろう。

「それにしてもめずらしいクエストね。まさかあの大きさの町の住人たちが、まとめて狂うだなんて。しかも別ルートで入り込んでたリズと白夜は、選択肢の間違いで死に戻ったみたいだし」

「狂化した自分を残して離脱というのは、変わっていますね」

「そしておそらく正反対のルートを進んでいるルナ。この対応も必要」

「街の外には魔法陣罠。狂ったままの住民たち。何かを狙う町長に、サグワと聖女の救出。そして維月刹那か。なかなか難しいクエストになりそうだ」

「まあ、どちらであれ」

レンの言葉にうなずくスキア。

「我らを欺き陥れようとした者を、このままにしておく理由はない」

「準備がまとまったところで、攻勢に出ましょう」

「反転攻勢の時間ですね」

「んっふふ」

「がんばりましょう!」

「りょ、了解ですっ」

月に照らされた夜の街道で、これからの流れを確認した六人。

うなずき合い、死地と化したヴァルガデーナへと突入を仕掛けることを決定。

クルデリスが、旅用の焚き火セットを取りだし着火。

さっそく反撃の準備を開始する。

「って、ちょっと待って!」

レン、メイたちの始めた行動に思わず制止をかける。

「なんで『闇を継ぐ者』の衣装に着替えてるのよ!?」

「潜入はこれで終わりだ。ここからは悪の打倒に動くターンだからな」

スキアが冷静にそう告げると、黒装備に変えたツバメが一歩前に出た。

「そこに悪が潜むなら、影に潜りて刈り取るのみ。我らは『闇を継ぐ者』。悪を切り裂く――」

「「「「――――【断罪の刃】なり」」」」

「なんでどんどん合わせが上手くなってるの!? やっぱりどこかで練習してるでしょう!?」

「す、すごいです……っ」

当たり前のようにポーズを取った四人に、驚愕の声を上げるレン。

まもりも思わず黒に塗られた盾を取り、歓声をあげ始めたのだった。