軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

1113.クリーチャー

「【ブレイズキャノン】」

放つ闇の砲弾が直撃し、敵が粒子に変わる。

「この森の魔物はどこか、気味が悪いねぇ」

「ああ、そうだな」

余裕を感じさせる維月刹那の声に応えたのは、黒神リズ。

「おお、お見事です……! あなた方は冒険者ですね、ぜひお願いしたいことがあるのですが」

それはヴァルガデーナへと続く、森の中。

まさかの新組織を立ち上げたレンたちの後を追ってきていた刹那が魔物を打倒すると、町人に声をかけられた。

「へえ、ヴァルガデーナでクエストとは面白いなぁ。ナイトメアたちが来たことで、何かが動き出した可能性がありそうだ」

刹那はそう言って、楽しそうに笑う。

「ヴァルガデーナ……なぜか夜になると閉め切られ、人気もなくなるため、プレイヤーの拠点にならない町ですわね。そのうえ入れない建物も多々ある。これだけ怪しい雰囲気をしているのにクエストの一つも見つからなかった、町人の数の割にプレイヤーが過疎の町」

「光の者よ、なぜ付いてきた」

リズがたずねると、白夜は強気の笑みを浮かべて応える。

「決まっていますわ。レンさんの組織の狙いも気になりますし、そのうえ貴方たちも動くとなれば、放ってなどおけません」

「ボクは別に構わないよ。呉越同舟だなんて楽しいじゃないか」

「私の目が黒いうちは、悪行などできないと肝に銘じておいてください」

「ふん」

「さあ、どうやら君は町の上役のような雰囲気をしているけど……ボクたちへの依頼はなにかな?」

刹那はそう言って、町人に問いかけた。

森の中にポツンとある、大きな街ヴァルガデーナ。

そこに現れるという魔物の討伐を受けたメイたちは、町を出た。

「目的は、魔物の中でも手間のかかるハーピーってことみたいだけど……」

木々の中を進み、付近に視線を走らせる。

「敵が、こっちに近づいてきてるよ」

メイの猫耳がさっそく、敵の方向に向けて動く。

自然と構えを取る四人。

敵の接近だけでなく、やってくる方向まで分かるのは大きい。

「きたっ!」

早く警戒できることで、奇襲を受けることはなし。

森の中から飛び出してきたのは、剣のような骨が身体から突き出している、黒灰色の猛犬が三匹。

「魔物というより、クリーチャーね……! 【連続魔法】【誘導弾】【ファイアボルト】!」

見た目は大犬型だが、複眼があり目は計4つ。

恐ろしい見た目の魔犬は、レンの炎弾をかわして接近。

並んだ牙を赤熱させながら、喰らいつきにくる。

これをメイとツバメは、左右に分かれることでかわす。

すると三匹目は、最初に攻撃を仕掛けた後方のレンを狙って特攻。

「引き付けて……ここっ!」

やや危なっかしいながらも、見事にこれを回避。

すると集まった3体の魔犬は、一斉に牙を赤熱させる。

「この首の引き方、ブレスだよっ!」

「まもり、さっそくお願いできる?」

「はひっ! 【かばう】!」

まもりはすぐにレンの前に飛び込むと、両手に盾を取り出す。

そして三体が炎を吐き出し、合わさった炎が業火になってところで――。

「【シンバル】!」

まもりが盾をバシャーン! と、打ち鳴らした。

「「っ!?」」

弾ける衝撃波がうなりを上げ、迫る炎をかき消す。

「おおーっ!」

「これは面白いですね」

これまで見たこともない、変わったスキルに思わず感嘆するメイたち。

「もう一発続きそう! まもり、間に合う?」

「はひっ」

ここでレンは攻撃に入らず、魔犬の様子を見る。

すると狙い通り、三匹は大きく『溜め』を作りブレスを連発。

「【シンバル】!」

二発目は、さらに大きな猛火。

しかし二度目の衝撃波が、これも続けて霧散させた。

「いいスキルね! 思わず笛を吹きたくなるわ! 【フリーズブラスト】!」

レンは『猿がリズムに合わせてシンバルを叩くオモチャ』を思い浮かべながら、氷嵐を発射。

魔犬を、まとめて吹き飛ばす。

三体は体表面を斬りつけられて転がるも、すぐさま立ち上がって走り出す。

その狙いはまたも、まもりだ。

「この復帰の早さ、やっかいね!」

どう猛さはもちろんだが、かなりタフで喰らい状態からの回復が早い。

放つ執拗な赤熱喰らいつきは、受ければ一気にHPを削っていくだろう。

「三体同時の攻撃は防御も難しい。でも、今のまもり相手に飛び掛かるのは失敗よ!」

「【大回転撃】っ!」

振り回す両手の盾が、同時に飛び掛かってきた魔犬たちを弾き飛ばしてトドメ。

危うく巻き込まれそうになったレンは、頬をかすめていく盾に苦笑いしながら杖を構える。

「はい【フリーズボルト】!」

こうして運よく生き残った個体を撃って、打倒。

見事に、異形の魔犬を倒すことに成功したが――。

「まだいるよ!」

メイが、揺れる風の音に気づいた。

「っ!」

急降下してきたのは、またも奇妙な魔物。

四肢を持ちながら両腕が翼の鳥類は、ハーピーを想定する。

しかしこのハーピーも顔が蝶のような造りで、どこか趣味が悪い。

「【アクロバット】!」

急降下からのかぎ爪つかみを、メイは側方回転で回避。

鳥型の攻撃はもう、ジャングルで慣れたものだ。

するとハーピーは、ここで翼を大きく一振り。

「「「「っ!!」」」」」

すると巻き起こった風が、四人を硬直させる。

隙を見て放つのは、羽による範囲攻撃。

大量の羽刃が広範囲に舞う攻撃は、回避が難しい。

レンはすぐさま、盾を構えたまもりの背後に避難。

対してメイは、その手を地に着いた。

「大きくなーれ!」

適当に取り出した広葉樹は一気に成長し、飛来する羽からメイとツバメを守る。

「【バンビステップ】!」

そして攻撃後の隙を突き、即座に距離を詰める。

浮遊しているハーピーの足元に一瞬で踏み込むと、そのまま地面に手をついた。

「【グリーンハンド】【バンブーシード】!」

ここでメイは【世界樹の剣】の効果を発動。

「「「っ!?」」」

分かっていても、驚いてしまう。

天を突く勢いで伸びる竹が、次々にハーピーを突き刺す。

そして、大きく深い竹林を生み出した。

すさまじい勢いで突き上げられたハーピーは、ボロボロになりながら落下。

それでもどうにか空中で体勢を立て直し、羽乱舞攻撃に入ろうとするが――。

「【空襲】」

「おおっ!」

その時すでに、高い位置までメイの木を登っていたツバメに背中を取られていた。

突然木の陰から飛び出し、短剣を抜いたツバメは忍者のようで、メイが思わず声を上げた。

落ちてきたツバメが短剣をハーピーに突き刺すと、生まれる鋭利な斬撃エフェクトが腹部へと貫通。

そのまま落下して、地面に叩きつけられた。

ハーピーは粒子になって消えていき、ツバメは小さく息をついた。

どうやら短剣を刺したまま落下した場合、敵の上に乗った形であれば、落下ダメージはなしで済むようだ。

「どのスキルも良さそうね」

四人はハイタッチをかわし、あらためて場違いな巨大竹林を見上げて笑うのだった。