軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

1109.プロファイル開始

「ね、ねえ、装備は元に戻さない?」

「なぜだ?」

「今回は人に会い、直接情報などを得るものでしょう? 素顔や姿を隠す物で身を固めてしまうと、怪しまれてやりづらくなると思うの」

「なるほど、そういうことですか」

「この装備は所持したままみたいだし、必要があればまた使えばいいじゃない」

ツバメたちは黒づくめ装備から、装備をいつもの物に戻した。

「うまくいった……!」

メイが名残惜しそうにする中、レンは安堵の息をつく。

レン自体の雰囲気はそんなに変わらないが、メイが元に戻るのが大きい。

これ以上、中二病世界に踏み込ませるわけにはいかない。

「スキアとクルデリスも、ほとんど変わらないわね」

「当然だ。我らは日ごろから闇を渡るような生き方をしているからな」

「んっふふ。そういうことだねェ」

「さて、プロファイル的なクエストを受けることになったけど、まずは何から始めましょうか」

受けたクエストは、落し物の『革製ガントレット』から、その持ち主を見つけ出すというもの。

『――――もし僕が帰ってこなかったら、その時はすべて忘れてください。そして、決して探さないでください』

ガントレットと一緒に拾われた、この手紙。

その一文に見える、不穏な感じが気にかかる。

「残していった装備品から、その持ち主を『探して見つける』なんてクエストは初めてね」

「とてもめずらしいです」

「き、気になりますね。メッセージの内容」

メイは自然と鼻を近づける。

それからスンスンして「ハッ! これは『闇を継ぐ者』っぽくないかも!」と、考えてやめる。

そしてそもそも鼻で持ち主を追いかけるのは、さすが難しいと気づいて、恥ずかしそうに笑った。

「このガントレットから探せということは、特定地域では有名な装備なのかもしれんな。特定の鍛冶職人だけが作るとか、ギルドでしか売られていないとか」

「その線なら、商業都市はどうかしら」

「世界中の商人が集まる街。そこならこのガントレットの生産地や販売の場所が分かるかもしれませんね」

「おおーっ! それはいいかもっ!」

「とにかく一度、バイセル行ってみましょう」

「りょうかいですっ!」

「んっふふ。それでいいよ、僕も」

こうして六人は、再び転移方陣の上に乗る。

メイはここでスキアたちがポーズを取らないことに、首を傾げる。

「『闇を継ぐ者』であることを出さずにする任務だ。さもただの魔導士のように振る舞う必要がある」

「おおーっ! 組織であることを隠しての行動……カッコいいかもっ!」

「やめてもらえる?」

レンは目を輝かせるメイの背を抱きしめる形で引き寄せて、これ以上『染まってしまう』のを阻止しながら魔法陣に乗る。

そして屋根の上へ。

六人はエディンベアのポータルへ向かい、一度ロンディニウムを経由して、商業都市バイセルへとたどり着いた。

「ここがバイセルか」

「あ、相変わらずの露店の多さですね」

綺麗な石畳の街には、大きな店舗が並ぶ大通りがある。

街路灯には細いロープが張られ、飾られたペナントが目に賑やかだ。

様々な商品が並ぶこの街には、いつでも多くのプレイヤーが行きかっている。

「やっぱりマーちゃんは、異世界関係でいないみたいね。防具を専門で扱うプレイヤーに聞いてみましょうか」

メイたちは大通りを進み、その中で自作の革商品を扱っている店舗を発見。

「レザーに魔法珠を組み込む装備品は、結構高レベルの仕事よね」

「格好いいものが多いですね。この感じですと、期待ができそうです」

レンとツバメが商品の出来の良さに感嘆していると、店主がこちらに振り返った。

「いらっしゃ……メイちゃん!?」

「メイですっ!」

「実はちょっと聞きたいことがあって。いいかしら」

そう言ってレンは、レザーガントレットを取りだす。

「実はこれの持ち主を探してるんだけど、このガントレットがどこの物なのか分からないかなと思って」

「なるほど……一見普通のレザーガントレット。でもこの厚さでこの柔らかさとツヤ感。これはジェノヴァ付近の商品ですね。個人で作成するのならホーンオックスの皮が素材として必要になります。そしてホーンオックスはあの付近特有の魔物なので、他所では手に入りません」

「おおーっ! すごーい!」

「いえいえ、このくらいは」

歓声を上げるメイに、商人は嬉しそうに笑う。

「ジェノヴァ付近であれば、割と様々な商店で見られる商品だと思いますよ」

「ありがとう、助かったわ」

さっそく良い情報を得たメイたち。

「これをどうぞっ!」

情報のお礼に、手持ちの【原始肉】を一つプレゼント。

「あ、ありがとうございます……!」

商人は「クエ、ウマイゾ」的な展開のことを想像しながら、【原始肉】に嚙り付いてみる。

「おいしい……でも焼いた漫画肉をお礼にもらうとは。やはりメイちゃん、野生児……!」

そして、元気に手を振りながら去っていくメイを見送るのだった。

「いきなり有能な職人が見つかったようだな」

「ええ、これで国くらいは絞れたわね。とはいえジェノヴァというだけではまだ範囲が広いわ。どうしたものかしら」

「ほ、他にも何か、ヒントになるようなものはないでしょうか」

まもりの言葉に、メイはあらためてガントレットを調べる。

「……ん?」

すると、縫われた革と革の隙間から、何かが落ちた。

メイはさっそくひろって、それをじっと見る。

普通のプレイヤーであれば、服に着いたホコリくらいにしか思わない、小さなヒント。

「レンちゃん、この細い葉っぱってジャングルではあんまり見ないから、北部のものじゃないかな」

「なるほど、針葉樹ね……! その見方はメイならではだわ!」

「確かに、基本的に針葉樹は北部に見られる植物だな」

「んっふふ。これが野生の力かァ」

意外な角度から、さらに絞られることになった対象区域。

「ジェノヴァは結構縦に長い国だし、その中でも北部であることは間違いなさそうね」

「行き先が絞られてきましたね」

「とにかくまずは、ジェノヴァに行ってみましょう!」

「りょうかいですっ!」

「は、はひっ!」

見事な流れで、ヒントを得たメイたち。

ガントレットの持ち主探しは、幸先の良いスタートとなった。