軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

1106.闇を継ぐ者vs滅ぼす者

【アビスフォール】による大規模崩落を、無事回避したメイたち。

足場の良い方へ動いたところを狙い、アバドンは大きく跳躍。

前衛組を狙って、そのまま拳を地面に叩きつけた。

すると拳を中心に魔力光が十字に突き上がり、付近の建物を消し飛ばす。

「思った以上に、激しい攻撃をしてくるのね!」

距離を取ることで攻撃を回避すると、すぐさま飛び掛かりから左の掌を叩きつけ、続けて右掌を叩きつける。

その都度、魔力光が飛沫の様に噴きあがる。

ただ後方へ下がり続けるのではなく、ジグザグに後退することで反撃の隙を窺うメイとツバメの回避を、真似るクルデリス。

すると三撃目、クルデリスの目前で連続攻撃が止まった。

「んっふふ。最高のタイミングだよねこれェェェェ! 【光刃】【闇刃】!」

両手の短剣に光の魔法と闇の魔法を添付することで、短剣の攻撃速度で範囲を伸ばすスキルを展開。

光の刃でアバドンの腕を斬り、闇の刃で続き、舌なめずりしながらジャンプ。

「【フリップジャンプ】【残光連華】ェェェェ――ッ!」

放つ魔剣の輝きが、夜の街に幾重もの大きな白弧を描き出す。

これを喰らい、大きくのけ反ったアバドン目がけて、ツバメとメイが追撃に駆ける。しかし。

「ゴァァァァァァァァ――――ッ!!」

「「「ッ!?」」」

付近一帯に響く【魔神の咆哮】

三人は硬直を奪われ、その場に急停止。

そこへ迫るは、強烈な尾の一撃だ。

「【かばう】【不動】【地壁の盾】!」

しかし最初に尾を喰らうであろう位置にいたツバメの前に飛び込んだまもりが、尾の払いを盾で弾く。

「【凶弾】」

「【ファイアボルト】!」

そしてすぐさまスキアとレンが、早い魔法攻撃で敵の体勢を崩した。

「おいしいタイミングだねェ……!」

そこに飛び込んで来たのは、邪な笑みを浮かべたクルデリス。

「喰らいなァ! 【悪鬼羅刹斬】だァァァァ――ッ!!」

二本の短剣で放つのは、三日月形の大型斬撃。

一撃目を放った後、さらに二発目も好きな軌道で撃てるそのスキルは、なんと斬撃一つの幅が10メートルをゆうに超える。

「これは……っ」

その豪快さに驚くツバメ。

オブジェクトを斬り裂き進むその一撃が、アバドンに深い傷をつける。

さらに二発目も、クロスするような形で直撃した。

「「「うおおっ!」」」

観客たちが息を飲む。

生まれた大きな隙に、振り返るクルデリス。

「ワイルド」

「おまかせあれ」

仕事人風な答え方に、クルデリスも思わず「ふふっ」と笑う。

「【バンビステップ】」

メイは華麗な足の運びで一気に敵のもとまで駆けつけ、そのまま剣を振り下ろす。

「【フルスイング】」

「「「おおおおおお――っ!」」」

駆ける豪華なエフェクトに、あがる大きな歓声。

アバドンが再び、エディンベアの町を跳ね転がる。

「……少し、マズいかもしれないわね」

レンのつぶやきに、スキアが耳を傾ける。

メイの一撃によって、大きく転がったアバドン。

足場の悪さゆえに、前衛二人は距離を詰めず、様子見を選択。

それは必然的に、『仕切り直し』になる。

そしてメイの【フルスイング】が直撃したことで、アバドンのHPは残り2割を切っている。

レンの予感は、現実になった。

アバドンが両手を開くと、夜闇に大量の光が生まれていく。

「全員まもりの後ろか、近くのまだ生き残っている建物の背後に回って! 間違いなく広範囲高火力かつ、大量の攻撃を仕掛けてくるわ!」

【アビスフォール】による攻撃から全員が生き残ったのは、レンの言葉あってこそ。

もはやスキアたちも一片の迷いもなく、言われるまま身を隠す。

直後、アバドンはさらに大量の魔力光を生成。

「【ローカスト・ジ・エンド】」

すさまじい勢いで瞬く魔力の粒子が、一斉に放たれた。

「まぶしい……っ!」

「なんだ……これ」

その数は、完全に異常。

夜のエディンベアが、昼と見まごうレベルで明るくなる。

そして放たれた大量の魔力光は、瞬きながら飛来。

その勢いはすさまじく、なんと建物の壁を突き破ってくる。

「……そうか! アバドンであれば本命のイメージは『全てを喰い尽くすイナゴの群れ』っだ。そこからこの奥義を予想したのだな。ベリアル、やはり並の魔導士とは格が違う……っ!」

すでに多くの建物が崩壊し、残骸だらけになったエディンベアの町を、更地に変えるほどの一撃。

しかしメイたちは、いち早くアバドンの攻撃方法に気づいたレンの指示により、ダメージは極々軽微。

そして、これだけの大技だ。

使用後は当然、長い隙が生まれる。

「スキア、行ける?」

「ああ、問題ない」

距離を考えれば、前衛組がたどり着くタイミングで別の大技を使われる可能性がある。

ならば、魔導士組が詰める方が確実だ。

短く答えたスキアは長杖を手に取ると、アバドンに向けた。

「【万魔の眼光】」

一直線に夜空を飛行する十字光が、炸裂。

散弾銃のような細かな十字光に変わり、アバドンをすさまじい勢いで削っていく。

「【コンセントレイト】【魔砲術】」

そして残りHPを確認しながら、レンも静かに杖を向ける。

「放つは、夜天駆ける灼火の彗星――――」

「【フレアバースト】!」

夜空に巻き上がる豪炎は、月を焼くほどの火力。

激しく燃え上がったアバドンは崩れ落ち、粒子になって消えていった。

「「「「うおおおおおおお――――っ!!」」」」

観客たちは大きな歓声をあげ、『適正』のある者たちは、ただ興奮に身体を震わせる。

古き街エディンベアで行われたのは、誰もが一度は憧れるような夜の死闘だった。

満月の光が、一部残骸と化したエディンベアに立つ、メイたちの輪郭を描き出す。

そんな中、静かに集まる六人。

それは普段とは違う、クールな集合。

メイが立ち、そこにクロスするような角度でツバメが並ぶ。

続けてクルデリスが二人に歩み寄り、最後にスキアが前に出てきた。

ここでツバメが、その口を開く。

「恐怖せよ、悪しき餓鬼ども。我らは『闇を継ぐ者』……すなわち」

「「「――――断罪の刃なり」」」

「「「うおおおおおおおおお――――っ!!」」」

「ちょっと待って、それいつの間に合わせたのよ!」

上位上級魔法でもなかったのに、詠唱を入れてきたツバメを疑問に思っていたが、どうやら一連の演出だったようだ。

もちろん大悪魔相手に圧倒的な戦いを見せたメイたちに向けられるのは、その圧倒的世界観への憧れ。

レンはすぐさま声を上げたが、まもりも「おおーっ」と感嘆の声をあげてしまっている。

「あの激しい戦いの中で、味方の状況だけでなく敵の攻撃についても考えていた。これが異世界の王を退けた、ベリアルの眼力か……おもしろい」

「そういうのじゃないの!」

「んっふふ。楽しいねェ、ベリアル」

「だからそういうのじゃないの!」

レンは必死に否定するが、これだけの戦いが起きてしまえば、事はこれだけに収まらない。

「見つけましたわ! ナイトメア!」

レイピアを払いながらやって来たのは、九条院白夜。

「違うの! これは違うのよ!」

「ナイトメア、新たな組織を動かしたという情報は本当か?」

さらに黒神リズ・レクイエムもやってきた。

「闇を継ぐ者かぁ……ナイトメア、まさか君はすでに後継者を探す段階に入っているとでもいうのかな?」

そして最後に、維月刹那・ルナティックが笑う。

「本当に違うの! これは勝手にツバメたちが言ってることで――」

「それなら、組織はないんだね?」

「それは……」

「ない」と言えばウソになるため、レンは答えに詰まる。

すると続けてリズが問う。

「ナイトメアよ、『ベリアル』という存在は『死海文書』にどう記されている?」

「……え? それは『光の子達と闇の子達の戦いにおいて、闇の子達の指導者』にあたる……って、偶然にしてはできすぎでしょ!」

レン、あまりに的確なコードネーム『ベリアル』の背景に、愕然。

「ナイトメア、君が新たな『闇を率いている』ことは明白なんだよ」

「やはりわたくしたち、光の使徒を狙うために……」

「ああもうーっ! だから嫌だったのよ! とにかく違うから、ほら帰って帰ってー!」

最後は力技。

レンは始まってしまった中二病展開を抑えるため、刹那たちの背中をグイグイと両手で押しながら、観客たちのもとを離れていくのだった。