作品タイトル不明
1084.101人メイちゃん大行進
「な、なあ。良いニュースと悪いニュースがあるけど、どっちから聞きたい?」
「……じゃあ、良いニュースから」
「強い、かわいい、野性的なメイちゃんが、100人いるぞ!」
「おいおい、天国じゃねえか! で……悪いニュースは?」
「それが全部……敵ってことかな」
「「「地獄じゃねえかああああああ――――っ!!」」」
そろえてあげる、叫び声。
意気揚々とやって来た掲示板組の前に現れたのは、101体のメイだった。
その全てが敵というまさかの事態に、誰もが呆然とする。
「本来であれば、パーティ内の強いプレイヤーに化けて脅かせる感じだったんでしょうけど……よりによってメイとはね」
「わたしが、いっぱいいる……」
「敵でさえなければ、天国なのですが」
「は、はひっ」
ツバメたちも、これにはさすがに戦慄する。
「ボス戦後の100体ってことを考えると、おそらくこいつらは倒さなくてもいい。というより偽メイ全部には勝てない。とにかく逃げ切るしかないわ」
目的は、洞窟内密林の奥にある出入り口。
大司教戦が終わると、このトカゲたちが次々に変身して、道を塞ぎにくるという仕掛けなのだろう。
「鬼ごっこのような形になるのでしょうか」
「展開としては結構面白いはずなのに……私が言うのもあれだけど、これは悪夢だわ」
最悪の形を取った状況に、さすがにレンもため息を吐く。
レンの言う通り、大司教から100体の連戦となるこのクエストは、逃走でも問題ない。
トカゲが変身して戦士になっていれば、足が遅いため逃げ切れる。
魔導士になっていれば回避能力も防御力も低いため、一気に踏み込んで高火力の物理攻撃を叩き込めば良い。
そんな、判断力が求められるクエストになっているようだ。
「メイがまもりを連れて、私とツバメは個人で抜ける形かしら」
ここでレンはやはり、打倒ではなくこの場を抜けてとにかく先へ進む形を提案。
逃げ切るだけでも最難関。
まして100体のメイを相手に勝つ方法は、思い浮かばなかった。
「なるほど、メイちゃんたちは偽メイちゃんたちの包囲網を潜って、洞窟密林の奥地に向かうんだな」
「そこに、トカゲたちのボスがいると……」
「やるしか、ないぽよ!」
「そうですね!」
「ククク、面白くなってきたではないか」
そしてここで、むしろテンションが上がってくるのは掲示板組。
「こっちも人数はいる。バラバラで動けば、偽メイちゃんたちも分断せざるを得ない」
「もし生きて奥にたどり着けたら、メイちゃんたちの戦いをさらに見られるわけか」
「仮に死に戻っても、偽メイちゃんを引き付けてから倒れたのなら、それだけ本物メイちゃんたちを助けることにはなるぞ。やって損はないな!」
「なんだこれ、マジでドキドキするな……! 猛獣が住む密林に放り出されたみたいだ!」
「メイちゃん、世界を頼むぞ」
「奥へと進む道で、再会しよう!」
「はいっ!」
メイたち、そして掲示板組がうなずき合う。
そして迷子ちゃんが一歩を踏み出した、その瞬間。
100体の偽メイたちが、一斉に動き出した。
「メイちゃん! 頼むっ!」
「はいっ! 【ソードバッシュ】!」
先手の【ソードバッシュ】で、衝撃波を巻き起こす。
当たれば儲けものという狙いで放った一撃をしかし、偽メイたちは当然のようにかわしてみせた。
高く上がる砂煙に視界が埋め尽くされたら、サバイバル開始の合図。
散開するメイたちと、掲示板組。
「奥の出口で会おう!」
こうして100人の偽メイがうごめく密林での、戦いが始まった。
さっそく一体の偽メイに追われることになったのは、戦士とアサシンの二人組。
「【ラビットジャンプ】」
戦士を射程範囲に収めた偽メイが、高く跳ぶ。
「回避は難しいか、盾で受けるっ! 【防刃盾】!」
「おい、バカっ!」
「【ソードバッシュ】」
「うおおおおおおおお――――っ!?」
偽メイの剣を安易に受けた掲示板組戦士は一瞬で数十メートルを跳ね転がり、そのまま死に戻る。
「防御でどうにかなるような攻撃じゃないんだよ……! でもっ!」
足の遅い戦士が倒れたことで、掲示板組アサシンは逃げに集中。
「逃げ足には自信があるんだ! 偽メイちゃん一人くらいならまいてみせるっ! 【ラディカルスピード】!」
駆け足の速度が、一気に上昇。
密林の中を駆け出し、掲示板組戦士を倒した偽メイを、すぐさま置き去りにする。
「これなら、奥への道に辿りつけるかも!」
掲示板組アサシンは後方を見て、追手がないことを確認。
歓喜しながら、前を向いた瞬間。
「…………嘘、だろ?」
そこには先回りした偽メイがすでに、正面に立ち塞がっていた。
「【ソードバッシュ】」
「うわあああああああ――――っ!!」
こうして掲示板組アサシンも、一撃の下に散っていった。
「この緊張感、今まで味わったことのないサバイバルだ……っ」
戦場に砲弾でも落ちたかのような爆発に、思わず目を奪われる。
戦士とアサシンの散り際を見かけた弓術師は、木陰にそっと身を隠した。
弓術士の場合は、できるだけ遠距離から攻撃して偽メイを引き付け、その隙に迂回して移動する。
その連続が、一番安全。
「俺なら、やれる……!」
そう意気込んで、そっと歩みを進めたところで――――枝を踏んだ。
「しまっ」
枝が折れ、音が鳴った次の瞬間。
耳の良い偽メイの影が、頭上にかかった。
「また、誰かやられた……っ!」
「待て! 動くな!」
近くで響いた悲鳴と盛大な爆音に、慌てる掲示板組魔法剣士。
迫る偽メイの恐怖に、少しでも付近の状況が知りたくて仕方ない。
我慢できず、隠れていた木陰からそっと顔を出した、その瞬間。
「うぐッ!?」
いきなり豪速で飛んできた【投石】に、容赦なく消し飛ばされた。
「おいおい、スナイパーかよ……っ!?」
戦場さながらの『突然の死』に、唖然とする仲間たち。
こうなってしまってはもう、身動きも取れない。
「こ、ここ、こんなのもう映画だろ……! サバイバルホラーだぞ!」
「それでも、この状況は偽メイちゃんの足を止めてる形ではある」
「本物メイちゃんの役には立ててるんだな。後は何とか一矢報いることができればって……なんだこれ?」
何かが手に当たって振り返ると、そこには大きな一枚の葉っぱ。
「それ、メイちゃんの……植物だ」
「「ぎゃああああああ――――っ!」」
残った三人は、現れた【危険植物】に喰われて消えた。
「魔法隊、一斉発射!」
「「「【フレイムシェル】!」」」
足の遅い魔導士たち六人は、付近に注意しながら密林を進攻。
その途中見つけた偽メイに対し、全員で火炎弾を放つことで攻撃に入る。しかし。
「「「なっ!?」」」
その手には【魔断の棍棒】
「うおおおおおおっ!?」
容赦のない全弾打ち返しに、慌てて防御態勢を取る魔導士たち。
そうなれば偽メイは、一気に距離を詰めてくる。
「だが、狙いはここだっ! 【バスターフレア】!!」
この瞬間を狙った見事な、上位魔法による範囲攻撃。
偽メイを巻き込んだ炎が、大きく燃え上がる。
「「「やったか!?」」」
美しいまでのフラグ台詞を吐いた次の瞬間、魔導士の前に現れたのは、炎を割って飛び出してきた【王者のマント】姿の偽メイ。
「「「あ、死んだ」」」
「【ソードバッシュ】」
「「「ぐああああああああ――――っ!!」」」
新たな砂煙が、高々と舞い上がった。
「も、もうダメだ……!」
「なんで、なんで俺たちだけこんなことにっ!」
悲鳴を上げたのは、一つの4人パーティ。
そこに追ってくるのはなんと、8体のメイ。
状況はもう、絶望的だ。
「あ、あたしがオトリになるよ!」
忍者の少女が、そう言った。
「それなら俺が行く! 戦士なら防御すれば一発くらいは耐えられるかもしれない!」
「いや、それなら私が!」
「……こうなっちまったら、仕方ないな」
すると覚悟を決めるようにそうつぶやいたのは、陰陽師の青年。
「【金縛り】」
そしてスキル一つで、オトリ役の奪い合いを始めた仲間たちを硬直させた。
「っ!? お前、一体何を……」
「このパーティの中じゃ、後衛の俺が一番『足』がない。たまには俺が皆を守らないとな。みんな……生きて帰れよ」
「ま、まさか、お前……っ!」
「さあこい、偽メイちゃん! 【挑発】!」
陰陽師の青年は、【挑発】で八人の偽メイを集めて走り出す。
驚異的な速度を誇る偽メイたちは、一瞬で陰陽師の青年を取り囲んだ。
「くっ! さすがに速い……だがっ!」
「待って!」
「「「待てぇぇぇぇ!!」」」
響き渡る仲間たちの声。
8体のメイが飛び掛かってきたところで、陰陽師の青年が覚悟を決する。
「来いよ偽メイちゃん! 俺が地獄の案内人だぁぁぁぁ! ――――【自爆】っ!」
巻き起こる、紅蓮の爆発。
自らのHPMPの全てをかけて放った、渾身の一撃が爆炎を起こした。
「……行くぞ。仲間の死を、ムダにはできない!」
「うん、なんとしてもたどり着こうね!」
【金縛り】が切れ、気合を入れる陰陽師の仲間たち。
やがて一陣の風が、炎を払う。
するとそこには、一人として欠けていない偽メイたちの姿。
「……あ、あれで、軽傷だと? ば、ばけ……もの……め……」
ダメージは、なんと1割以下。
駆け出す偽メイたち。
陰陽師の仲間たちは、呆然と立ち尽くすことしかできない。
「やっぱり……やっぱり仲間の自爆は、無駄死にで終わる定めなのかぁぁぁぁっ!!」
「「「【ソードバッシュ】」」」
「「「ぎゃあああああああ――――っ!!」」」
最強の敵への【自爆】は、通じない。
よく見る展開を完全トレースした自分たちにもう笑いながら、消し飛ばされるパーティ。
こうして掲示板組は、100体のメイたちに次々と消されていった。