軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

1082.大司教

「来た……っ!」

メイの尻尾が、ビビっと震え立つ。

迷子ちゃん作のハンバーガーを美味しくいただいていたところで、やってきたトカゲの一団。

その数は、100体に及ぶ。

魔術師の首領のような長い白ローブをまとった、大司教トカゲ。

そして軽装ながらも鋭い目をした、淡色のトカゲが続く。

どうやら100体の兵士を率いているのは、淡色トカゲのようだ。

規則正しく整列したトカゲたちは、祭壇の前に集結する。

「この数、一斉に戦う形なら各個体の性能は低そうだけど……」

「そ、そうですね」

慌てたまもりは、二つ目の【チーズトマトビーフバーガー】はテイクアウト。

片手に持ったまま、木の陰からトカゲの様子をうかがう。

「何か、話しています」

迷子ちゃんは、草むらからトカゲたちのやり取りをうかがう。

大司教は付近を見回し、何かを待つかのようにしている。

「生贄が来ないから、様子を見てる感じかしら」

レンの予想は正解だ。

「儀式なんて、やらなければいいのに」

「儀式は……早々やめられないのよ」

メイの言葉に応えるかのように、レンが白目でつぶやく。

「また、誰か来ました……!」

良い装備をしたトカゲたちが、一斉にその背を正す。

そこにやって来たのは、この場のどの個体よりも豪華な鎧をまとった、一回り大きなトカゲ。

「あれが皇帝かしら」

大司教は皇帝らしきトカゲの言葉に、うやうやしく頭を下げる。

そして杖を掲げると、生まれる魔法陣。

「ああっ! あの子は!」

メイが思わず声をあげた。

召喚で呼び出されたのは、見覚えのある少年NPCの姿。

忘れるはずもない。

ジャングルに来たメイに声をかけてくれたお姉さんの、弟だ。

「レンちゃん、今って攻撃できないのかな?」

「いけるはずよ。おそらく皇帝は宝珠とかで消えて、戦いが始まる流れになるでしょうね」

少年を祭壇にひざまずかせたところで、大司教トカゲが儀式を開始する。

「いきましょう!」

そして二体のトカゲが剣を持ち出したところで、レンが声をあげた。

「そこまでだよっ!」

広い儀式場に踏み込んだ瞬間、トカゲたちがこちらに気づいた。

しかし皇帝トカゲは、慌てない。

まるで無粋な闖入者を、侮蔑するかのように一瞥。

「儀式の場を荒らすな」とばかりに、動き出そうとするトカゲの兵士たちを留めた。

続けて大司教に視線を向けると、剣を持ち上げこちらに向ける。

そして「お前が殺せ」と命じて、転移宝珠で姿を消した。

「集まってるトカゲたちは、とりあえず後回しでいいみたいね」

「まずは大司教からですか」

「いきましょうっ!」

「はひっ」

両手を開き、戦いの始まりを告げる大司教。

「【バンビステップ】!」

「【加速】!」

「【スリップ・フット】!」

前衛組三人は、高速移動で一気に距離を縮めに行く。

「【死水竜】」

三人の前に現れた魔法陣から、その巨大な口で喰らいつくのは、骸骨の水棲恐竜。

すぐさま前衛組は回避に回り、直撃を防ぐ。

すると【死水竜】は、大地を泳いで次撃の準備に入った。

「【連射】【溶岩弾】」

この隙間を、大司教は速く的確な溶岩弾で埋める。

放たれる連射に、メイは回避に集中。

「【炸裂弾】」

「「っ!?」」

その隙に攻撃に入ろうと接近していたツバメと迷子ちゃんを、弾ける溶岩球で足止めする。

そして共闘型の召喚獣のような【死水竜】は、メイの目前へ。

「【ラビットジャンプ】!」

正面からの喰らいつきを、メイは直上への跳躍で回避。

「【フルスイング】!」

そのまま地面に向けて剣を叩きつけ、土煙が高く昇る。

しかし【死水竜】は地中に逃げてノーダメージ。

「うわわっ! 【アクロバット】!」」

すると今度は真後ろから、【死水竜】がメイに体当たりを仕掛けてきた。

後方の異変に『音』で気づいたメイは、イルカのように大きなバク宙でこれを回避。

攻撃を見事にやり過ごす。

「【連続魔法】【誘導弾】【フリーズボルト】!」

この隙を狙って、レンは氷弾の連射で攻撃。

大司教はこれを二歩の移動で回避して、溶岩弾で反撃。

レンが回避のために動いたのを見て、杖を掲げた。

「【溶岩落下】」

「っ!?」

頭上に現れた、大きな溶岩の球体。

「【かばう】【不動】【天雲の盾】!」

これを跳び込んできたまもりが、盾を掲げて防御。

大量に飛び跳ねる溶岩にレンは思わず息を飲み、まもりは左に持ったままのハンバーガーが焼けないように集中する。

「ツバメちゃん! 迷子ちゃんっ!」

「はいっ」

「いきましょう!」

三人は、掛け声一つで走り出す。

メイは【死水竜】の前に飛び出し、喰らいつきを出させて避ける。

「【連射】【溶岩弾】」

外回りで接近してきていたツバメは、大司教が溶岩弾の連発で足止める。

「【スリップ・フット】!」

こうなれば自然と、大司教への道が開く。

目前まで踏み込んできた迷子ちゃんを前に、できる対応などなし。

「【ジェット・ナックル】!」

ガントレットから噴き出す蒸気と共に、高速で叩き込まれる拳打が、容赦なく大司教を殴り飛ばした。

ここで大司教は追撃を切るために、【死水竜】を呼び戻す。

そしてそのまま、迷子ちゃん目がけて飛びかかりからの【喰らいつき】を指示。

「そうはいかないわ! 高速【フレアストライク】!」

しかし宙を舞った【死水竜】は、レンの放った炎砲弾に吹き飛ばされた。

「打倒には至らなかった……! この召喚獣、HPが結構高いわね! まもり!?」

「こ、ここは私が……っ」

大司教と【死水竜】の連携は、やっかい。

ここで【死水竜】を片付けておけると楽だが、まもりの火力でそれができるか。

レンは厳しいと判断するが――。

「た、【食べ歩き】っ!」

なんとまもりは右手に【魔神の大剣】、左手に【チーズトマトビーフハンバーガー】という状態で駆けて行く。

ハンバーガーを食べつつの突撃だ。

食べれば【腕力】を上げてくれる【チーズトマトビーフハンバーガー】

まもりは頬をリスのように膨らませた状態で、地面にプカプカ浮かぶ形で倒れていた【死水竜】に、大剣を叩き込んだ。

ここでもしっかりクリティカルを叩き出したまもりは、さらにそのまま二撃目。

再びクリティカルを引き出した。

「も、もふ一回ふぇすっ!」

そして三度目も、見事にクリティカル。

そのまま死水竜を打倒することに成功した。

まもりはハンバーガーをごくりと飲み込んで、安堵の息をつく。

「ないすーっ!」

「見事な詰めでした!」

「あっ、ありがとうございますっ」

慌てて食べると口周りが汚れる仕様があるのか、チーズのついたまもりに起こる笑み。

そんな中、大司教が立ち上がる。

杖を掲げると、その姿が突然変化した。

「「「っ!?」」」

「【加速】」

そしてツバメの姿になった大司教は、高速移動でメイの前へ。

「【スティール】」

「っ!?」

いきなりメイの剣を、奪い取ってみせた。

「わあ! ツバメちゃんに剣を盗まれちゃった!」

「一発成功……ですか!?」

「驚くのはそこじゃないわよ」

まさかの事態に、驚愕するメイとツバメ。

その姿にレンは、苦笑いを浮かべるのだった。