軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

1069.見覚えのあるジャングル

「このジャングル、見覚えがある……!」

トカゲによる侵攻から、町を守ることに成功したメイたち。

旧ポータルを使って、逃げた大トカゲを追いかける。

たどり着いたのは、またもジャングル。

しかしメイはその光景に、見覚えがあった。

「あの赤紫色のスライム、もしかして!」

「メイさん?」

「この場所に、心当たりがあるの?」

レンやツバメ、まもりからすれば他の密林と何も変わらない。

しかしメイは近くの木に上がり、遠くを見回す。

そして魔物の種類、植物の種類などから確信する。

「間違いない……ここ、わたしが一番最初に飛んできたトカゲのジャングルだよ――――っ!」

「「「えええええ――っ!?」」」

まさかの展開に、驚きの声を上げる三人。

「そんなこと、本当にあるのですね」

「やっぱり何度聞いても、スタート地点がジャングルになるのはおかしいわ」

「は、はひっ。普通はチュートリアルの街のどこかですよね……」

予約特典で手に入れたアイテムによって起きた、まさかの事件。

三人が驚いていると、メイは突然「ハッ」と顔を上げた。

「レンちゃん。もしかしてこのジャングルに、トカゲの基地があるのかな?」

「逃げたトカゲを追ってたどり着いた廃村。次は町。最後の行き先は……トカゲの王国。その可能性は高いわ」

「ですが、そうなると……」

「も、もしかして……」

四人はすぐに、嫌な予感に至る。

トカゲたちは人間のNPCやプレイヤーに化けて勢力を広げるが、村や町を一つずつ乗っ取っていく。

それならば、トカゲの国からほど近い『メイにとっての最初の村』は、どうなっているのか。

旧ポータルを使って逃げ出した大トカゲは、付近を見回しながら進む。

「またジャングルだ……」

遅れてついてきた掲示板組パーティは、トカゲを追うメイたちを追いかける。

これなら、トカゲに見つかることはない。

「……村は無事かな」

メイの【聴覚向上】には、歩く度に鳴る草の音がしっかり聞こえているため、追跡自体は余裕だ。

ただ、7年を過ごした村の行く末が気になって仕方ない。

それでもメイは、大トカゲを追ってクエストをつなぐことに集中。

見つかってしまうと、大トカゲは地の利を生かした逃走を始め、追うのが困難になってしまう。

「この方向、やっぱり間違いない……っ!」

長らく過ごしたジャングル。

歩けば自然と、大トカゲの行き先に予想がつく。

「村だ!」

メイの予想通り、大トカゲの逃げ帰っていく先には、メイの『最初の村』があった。

島と同じ名前を持つたった一つの集落、クク・ルル村。

すると続く茂みが、大トカゲの姿を隠してしまう。

「……っ!」

思わず走り出したメイは、村の出入り口へ。

ここから見える景色に、おかしな点は何もない。

「行ってみましょう」

「うんっ」

四人はそのまま、メイにとっての『星屑』最初の町となったクク・ルル村へ踏み込む。

「変わってない」

その外見はやはり、変化なし。

木製の家に、鮮やかな花。

立ち並ぶ木々の間にある村は、明るく美しい。

その顔触れもまるで変わっていないため、十万回近く村への出入りを繰り返したメイにしても、一見すると変化なしだ。

「……でも」

やはり、どこか活気がない。

思い出すのは、この村を拠点にジャングルを駆け回っていた頃の記憶。

明るく朗らかな人が多いクク・ルル村。

メイが全力で守ろうとしていたのは、そんな人たちが住んでいる場所だったからだ。

村には人慣れした動物の姿も見られ、その姿は繰り返しの日々を送るメイの癒しとなった。

そして同時に、動物値の向上にも一役買っていた。

「前は子供が駆け回ってたりしたのに、今は静かに立ってるだけ。動物たちもいなくなっちゃってる」

「これだけ明るいのに黙々としてる村人は、ちょっと不気味です」

「2DのRPGの音を、切ったかのような雰囲気ね」

会話することもなければ、必要がなければ声すら出さない村人たち。

ただ何となく指定の持ち場の中だけを動いているだけの彼らは、古いRPGの村人の様。

そしてその全てがトカゲの化けた姿だと知っていると、奇妙な感じだ。

まもりもその恐ろしさに、盾に隠れて進む。

「村長さんも、別人みたい」

ただ真顔でいる生気のない村長を始めとして、一部村民の視線は集まってくるが、こちらに寄ってくる様子はない。

そしてメイは、いつものあの場所へ。

「お姉さんが、いない……」

『ゴールデンリザード狩り』のクエストを担当していたお姉さんがいた場所には、見知らぬ人間が陣取っている。

だがその雰囲気は間違いなく、トカゲの化けたものだ。

メイたちは結局そのまま、村を出る。

やはり正体を問い詰めたりしない限りは、襲い掛かってきたりはしないようだ。

「村はあるけど、人は全部トカゲが化けた別人なのね」

「フ、フローリスとは違う形で、滅ぼされてしまった……ということでしょうか」

「…………」

建物などはそのまま。

村民も知っている人たちで構成されているのに、中身は魔物。

7年いた村が『上っ面』を残して滅んでしまったという事実には、さすがにメイも衝撃を受ける。

ショックと恐ろしさに、呆然としながら村の敷地から踏み出した――――その瞬間だった。

「はあああああ――っ!!」

木の陰から飛び出してきたのは、一人の女性。

手にした剣で、大トカゲに斬りかかる。

「……え?」

その姿を見て、メイが目を見開いた。

「ええええええええ――――っ!?」

「メイ、どうしたの?」

「お姉さんっ!」

「お姉さん? あの人を知ってるの?」

メイは大きくうなずく。

「ゴールデンリザード狩りのクエストを担当してた、村のお姉さんだよっ!」