軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

1046.エンディング

「それでは、行きますっ!」

メイの一言に、集まった多くのプレイヤーたちが息を飲む。

ゼティアの門に張られた、水鏡のごとき『封』

そこには、異世界とつながった小さな隙間がある。

向こう側に見えるのは、こちらと変わらない青空と、鮮やかな緑の草原。

ただし、太陽は二つ。

そして島々が宙に浮く、異世界ならではの光景が広がっている。

「なんだか、緊張するわね……」

「果たしてどんな世界が、待ち受けているのでしょうか」

「ド、ドキドキしますっ」

『鍵』の青年に導かれ、踏み出す異世界への第一歩。

開かれた道は、すでに誰でも通れる状態だ。

それでも皆が、メイの到着を待っていた。

先陣を切り、最初に世界を超えるメイ。

踏み込んだ異世界を、あらためて見渡してみる。

「すごーい……!」

「ねえ、何あれ!」

「剣でしょうか……武骨な造りの剣が丘に刺さっています」

「い、異世界からやってきたボスにいた、巨人族のものかも……っ」

錆びた巨剣は、もはや自然の一部のようになっており、その柄には見たことのない尾長の鳥が留まっている。

「これが、異世界か……」

「すごいな、このドキドキ感」

メイたちが目を輝かせながら辺りを見回していると、異世界見物に来ていたプレイヤーたちも、後に続いてやってくる。

「あの巨大な剣一つでもう、何かが始まりそうな感じだな……!」

「浮かんだ島には、何が待ってるんだろう」

「これがメイちゃんたちの開いた世界か……こいつは楽しそうだ!」

次々にあがる、期待を含んだ感想。

「お、俺にも見せてくれ!」

「私にも見せてくださいっ!」

「オ、オレにもっ!」

すると門の外に集まっていたプレイヤーたちも、興奮気味に走り出す。

そして我先にと駆け込んできた者たちが、異世界の壮大な光景に見惚れた瞬間。

「ギェェェェェェェェ――――ッ!!」

「「「うわああああああああああ――――っ!?」」」

空を飛んで行く一羽の飛竜の咆哮に仰天、慌てて元の世界に逃げ戻る。

「「「「あははははっ」」」」

そんな光景に、笑うメイたち。

こうして異世界への第一歩は、楽しい雰囲気のまま完遂されたのだった。

変貌の王・グィンドラの打倒。

そして踏み出した、異世界への第一歩。

「すごーい……」

帰宅中のさつきは、駅のディスプレイに流れる動画を眺める。

トップ勢が一堂に会し、巨大な魔物たちと戦った一大クエストは、各所でその動画がCMとして流れている。

各所に張られたポスターは、メイとグラムとアルトリッテ、そこに銀色メイが紛れた物が大人気。

実物を見ようと駆けつけたプレイヤーで、いつでも賑わっている。

「レンちゃん、カッコいい……!」

そしてレンを中心にして使徒たちが居並ぶポスターも、実は負けないほどの人気を博している。

そんな事態に、可憐は頭を抱えているようだ。

中でも一番大きなポスターは、メイが異世界に踏み込んだ瞬間を捉えたもの。

『新たな世界へ――』と書かれたそのポスターはなんと、全国規模で展開されている。

「あっ、メイちゃん!」

「メイですっ!」

駅ではちょくちょく、声をかけられるようになった。

さつきが手を振り返せば、歓声が上がる。

8周年を迎えようとしている大作を、新たなステージに進めた少女はすっかり人気者だ。

「……思ったより、野生感がなかったね」

「きっと普段は、普通の女子高生のフリをしてるんだよ」

「何それカッコいい……!」

「ええっ!? それは違いますーっ!」

しっかりと否定の説明をした後、さつきは歩いて自宅へ。

新たに届いた『死に戻りなしでのボス打倒記録』の楯を受け取り、二つ目のギネスとして並べる。

そして、さっそく『星屑』の世界へ。

最初にたどり着いたのは、史上最高の賑わいを見せている王都ロマリア。

「まさか、異世界のクエストが拠点づくりから始まるとはなぁ」

「ハウジングが、ここで活きるとは思わなかったね」

聞こえてくるのは、冒険者たちの声。

異世界への道が開いたことで、最初に見つかったクエストは、管理者主導の『異世界拠点作り』だった。

それはまだ見ぬ世界に、『最初の街』を作るというものだ。

家を建てるではなく、街を作る。

そうなれば必要な人材も素材も相当多く、物の流通が多い王都は必然的に人であふれる。

マーちゃんは今、この資材集めに奔走しているらしい。

「おっ、メイちゃん!」

「メイさん!」

声をかけてきたのは、ハウジングが得意な二人の男女プレイヤー。

「メイですっ! 忙しそうですねっ!」

「まさかの街作りってことで、大変だよ!」

「ハウジング勢はもちろん、街や都市を作るシミュレーションゲーム好き勢も、大忙しだよね」

「そうそう。異世界最初の街に名前を付ける必要があるんだけどさ、ここはやっぱりメイちゃんに関わるものがいいかなと思ってるんだ」

「ええっ! どんな名前を考えているんですか?」

「――――ワイルド・タウンだ」

「やめてくださーい!」

メイ、いよいよ野生が異世界にまで追いかけてきそうで、慌てて頭上に両手で『バツ』を作り、ブンブンと首を振る。

「それなら、どんな名前がいいですか?」

「……メイちゃんコーヒー嗜む素敵な女性タウン」

「「却下です」」

「なんでーっ!?」

新しい街の名前は一度先回しにすることを固く約束して、ハウジング勢は異世界へ。

「くれぐれもおねがいしますっ!」と、メイは手を振って見送る。

そして大変な盛り上がりになっている王都から、ポータルでいつものラフテリアへと向かう。

「えへへ」

何度見ても気持ちがいい、青い空と海。

聞こえてくるカモメの鳴き声と爽やかな風に、思わず笑みがこぼれる。

メイたちの拠点として知られ、人が増えたこの港町。

それでもいつもの港湾部は、少し中心から離れているため静かだ。

堤防に腰かけて、足をぶらぶら。

キラキラ輝く海を眺めていると――。

「メイ」

聞こえた声に振り返る。

「お待たせいたしました」

「ま、また、早く集まってしまいましたね……っ」

そこには、レンとツバメとまもり。

今日も四人は、いつものように30分前集合をしてしまった。

メイはピョンと跳んで立ち上がり、くるっと回って振り返る。

誰もが異世界への進出に盛り上がる中だが、メイたちが早く来てしまう理由は変わらない。

そこに、仲間がいるからだ。

「待ってたよ!」

こうして今日も変わらず、始まる冒険。

耳を立て、尻尾を振って、元気な笑顔で、メイはいつものように問いかける。

「――――今日は、どこに行こっか!」