軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

1021.光の使徒・闇の始祖

「【ソードバッシュ】!」

「メイちゃんありがとう!」

「こちらこそですっ!」

メイの一撃で、多くの魔物たちが吹き飛んでいく。

こうなれば後は、減った敵を殲滅するのみだ。

崩れかけていた戦線は立ち直り、味方たちが再起する。

メイは元気に手を振って、皆が手を振り返したことでまたちょっとピンチになったことに笑いながら、別チームのもとへ。

「【不可視】【投擲】」

「「「ッ!?」」」

空中から迫る敵は、対処が難しい。

おとずれた窮地の中、突然敵が硬直した。

「ダ、【ダイナマイトスピア】!」

驚きながらも、この隙を逃したりはしない。

投じた大きな槍が炸裂して、四枚羽のグリフォンを打倒。

三人組パーティは、歓喜の声をあげる。

「でも一体、誰が援護を……?」

そんな三人が不思議そうにする姿に、ツバメは楽しそうに笑うのだった。

「だ、ダメだ……っ!」

恐竜に剥き出しの金属塊を持たせた、ダイナソルジャー。

その豪快な振り降ろしが、後衛組に迫る。

「【かばう】【地壁の盾】!」

しかしこの一撃は、まもりの盾に弾かれた。

「「「【轟雷】!」」」

この隙に、魔導士たちが一斉に雷魔法を同時使用。

危機を脱することに成功した。

「ありがとうございますっ!」

「い、いいいいえっ! 私なんかがお邪魔してすみませんでした――――っ!」

向けられた歓喜の声に、そう言って逃げ出していくまもり。

「第四陣も、安定してきたぞ!」

「メイちゃんたちが援護に回ってくれたのが、めちゃくちゃ効いてるな!」

消耗が目に見えてきた状況で現れた、第四陣の魔物流入。

そして参戦プレイヤーたちの意気を下げた、二体の大物死竜。

二つの展開はレンの指揮による勝利と、その間に自由に動けることになったメイたちの援護によって好転。

厳しかった第四陣も、プレイヤー側に優位が見え始めた。

「ナイトメア、見事だったぞ」

「はいはい、ありがとう」

リズの言葉に、息をつきながら応えるレン。

「ここにきて『指揮官モード』とは、大したものだね」

「そんな大げさなものでもないわよ」

刹那も、涼し気な笑みを向けてくる。

二体の死竜はレンを指揮の位置に置いた戦いで、見事に打倒された。

その余波は、思ったよりも大きいようだ。

「闇の者たち……この戦いが終わった後は監視を強めなくてはなりませんわね」

この三人が再び手を結ぶ事態を想像して、「由々しき問題ですわ」と白夜。

付近のプレイヤーたちを助けていた光の使徒たちも、こくりとうなずく。

「二つのトップパーティのボス戦を、同時に援護するとか聞いたことないぞ」

「しかもそれで立て続けに勝っちまうなんて……っ」

相変わらず、過去に類が無いことを起こしてしまうメイたちに驚く参戦者たち。

「さすが……闇を超える者だ」

「これが、真に力を求めた者の実力だというのか……っ」

本当に二つのパーティの戦いを勝利に導いたレンに、闇の使徒志望者たちも圧倒されるしかない。

「……も、もういいから。そろって驚愕の表情を浮かべたままでいるの、やめてくれない?」

ざわざわし続ける関係者たちに、いよいよ我慢できなくなるレン。

「……ん?」

そんな中、聞こえてきた悲鳴のような声に目を奪われる。

どうやら第四陣は、まだ終わっていなかったようだ。

「二体の死竜に劣らぬ、不吉な感じね」

アンデッドの竜二体に続いて、ゼティアの門から出てきたのは3メートルほどの人型骸骨。

しかしその頭部は、くちばしのように長い骨で作られている。

脚部の関節も逆で、足が大きく三角に広がった形状だ。

ボロボロのローブに、黄金の首飾りと杖。

手はあるが翼はない。

それは人と鳥類を混ぜたような、奇妙な姿をしたアンデッド【死骸王】

杖を掲げると、放たれる赤光弾。

それは容赦なく、死伏竜と死翼竜の遺骸を消し飛ばした。

「なるほど、死竜二体はあいつの部下か何かだってことかしら」

その演出から、そんな関係性を読み取るレン。

「このまま、立ち向かうのでございますか?」

「如月は、問題ない」

そう言って暗夜教団の二人が、問いかける。

すると刹那は少し考えた後、首を振った。

「輪廻と彼方は、悪魔召喚のクールタイム回復を待って備えておくといいよ。そこでだ……ここはボクら『元闇の使徒』で戦うというのはどうかな?」

「フン、好きにしろ」

「……メイたちにはもう少し自由に動いてもらって、第四陣から決定的な優位を取りたいわね。いいわ、やりましょう」

そんな三人の言葉に、さらににざわつき出す使徒志望者たち。

「ついに、闇の始祖が動くのか……っ!?」

「三人の始祖が、ここで!」

「……見逃して置けませんわね」

もちろん、黒装備の三人が居並ぶ状況を白夜は認めない。

「もちろん参加しても構わないよ。君がボクたちに――――ついてこられるのならね」

そう言って刹那は、挑発的な笑みを浮かべた。

「敵は第四陣を代表する大物だろうな……全力でいくぞ」

「もちろんだよ。当然ナイトメアもだよね?」

「そのつもりだけど?」

「ふふ、楽しみだね。また君の『本気モード』が見られると思うと」

「……えっ?」

「闇を超えし者。その隠された本性……やはり監視が必要のようですわね」

「ちょ、ちょっと待って! 口調が変わるのは別にモードチェンジみたいな演出じゃないの! そうしないと納得してもらえないだろうから、仕方なくしてきただけで……」

そこまで言って気付く。

周りの使徒勢全員が、『普段のレンは、本性や魔力を隠すための普通のフリをしている』と思っているため、まったく言葉が届いていない。

安寧のため、そういう設定を演じてきた。

そのためもう、何を言っても『演出』になってしまっている。

「気づいているのだろう? 今がこの第四陣を抑えるために、力をかけるべき瞬間であることを」

リズの言葉に、静かにうなずく刹那。

それは事実だ。

現れた【死骸王】との戦いは、第四陣への勝利を決定づけるものになるだろう。

そしてメイたちには、もう少し付近のプレイヤーたちの援護を任せたい。

それにこれまで『さらなる力に魅入られた者』という設定で、闇の使徒問題を丸く収めてきた。

ここで全力を出している感じを出さないと、二人は納得しないだろう。

「…………分かったわよ」

レンは大きくため息を吐く。

そして目を閉じ、深く深呼吸しながら覚悟を決める。

「待っていました……この瞬間を!」

樹氷の魔女が、身を乗り出す。

「闇を越えし者が、その姿を見せるのか……!?」

「ついに、その力を目の当たりにできるのか……っ!」

さらに闇の使徒志望者、光の使徒までもが注目を向ける中、レンは静かに目を開く。

「――――求める新たな力が異世界にある。ならば……進まぬ手はないわ」

そう言ってナイトメアは、妖しい笑みを浮かべた。

「でもいいの? 求めるはただ純粋な力のみ。果たして貴方たちに――――ついてこられるかしら?」

「ふふふ、待っていたよ」

挑戦的な言い方に、さっそくルナティックが楽しそうに笑う。

「それでこそ、ナイトメアだ」

続いてレクイエムも、深くうなずいた。

「し、使徒長ぉぉぉぉ……っ!」

観戦中の樹氷の魔女が、歓喜に白目をむく。

「さあ、はじめましょうか。こんなに昂らせたのだもの……期待には、応えてくれるのでしょう?」

「ウォォォォォォォォ――――ン!!」

その問いかけに応えるかのように、不思議な咆哮をあげた死骸王。

闇と闇の戦いが、ここに始まった。