軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

1015.vs異世界

「こんな光景、映画でもなかなか見られないぞ!」

「これ、マジで世界を賭けるつもりなんだな……!」

渦巻く暗雲、流れる風。

始まってしまった赤月の夜。

開いた門から続々と入り込んでくる、大量の魔物たち。

「これは、大変なことになるぞ……」

圧巻の光景に、思わず震える。

空を飛ぶ魔物も多数いるが、その全てが見たことのないものだ。

「世界は再び、滅びの道を進むのか……」

愕然とする管理者。

「……赤月の夜が、始まった」

フラフラと身体を起こした『鍵』の青年は、その場に座り込んだ。

黒仮面たちによる傀儡化が解けた青年は、メイたちに視線を向ける。

「皆さん、このままでは異世界の魔物たちが留まることなく侵入してくることになります」

「私たちは、どうすればいいの?」

「今からもう一度『封』を施します。時間はかかりますが、そうすれば魔物たちの流入は止まるでしょう。ですがそれは同時に、向こうから入り込んだ魔物たちをこちらに閉じ込めることになります。皆さんには、魔物の打倒をお願いします!」

『鍵』の青年はそう言って手を組み、目を閉じる。

「簡単ではないでしょう。ですが……世界の崩壊を防げるのは、貴方たちだけなのです!」

青年の魔力が解放され、新たな『封』を仕掛ける準備に入った。

「まずはとにかく数を減らす戦い方から。強敵が出てきたら率先して狙っていく。そういう感じかしらね」

レンは杖を構えて深呼吸。

するとすぐに、付近の追従組も戦い方を考える。

「ここでも情報の伝達は忘れるな!」

「敵の総数は多くとも、『種類』は無限ではないはずだ! 各敵の強さを見て判断できるようになれば、無駄のない戦いができるぞ!」

広大な王都前草原。

こちらにも、草原を埋め尽くすほどのプレイヤーがいる。

初級者も含んでの戦いということで、ここでも敵種類ごとに敵の強さを判断し、『どのレベル』の者が適正かを考えて戦う作戦を取るプレイヤーたち。

その中で現れた強敵を、トップやメイたちに任せるという流れを狙うようだ。

うなずき合う参戦者たち。

異世界の魔物たちの先頭が、攻撃範囲に入ったところで――。

「お願いします」

自然と視線を、メイに集める。

開戦の鐘は、やはりこの一撃以外にないだろう。

「はいっ! それではいきますっ!」

メイは剣を掲げると、力いっぱい振り下ろす。

「【ソードバッシュ】だああああああ――っ!」

放たれた衝撃波はそのまま真っ直ぐに突き進み、敵陣の先頭に直撃。

長い二本の角を持つ悪魔のような黒毛ヤギ、岩剣を持った二足の獅子。

多くの魔物が、弾け飛んで消える。

異世界の魔物相手でも、その威力はもちろん変わらない。

「【ソードバッシュ】【ソードバッシュ】からの【ソードバッシュ】だーっ!」

迫る敵陣の中央に大きな穴が空き、早くも魔物の侵攻は左右に分断。

「行くぞォォォォ!! 世界を賭けた戦いの始まりだぁぁぁぁ!!」

「「「ウオオオオオオオオ―――――ッ!!」」」

それを見たプレイヤーたちの、咆哮が上がる。

そうなれば次は、割れた敵陣の勢いをさらに砕く後衛の攻撃だ。

「――――【魔砲術】」

まだ誰も、攻撃に入れない距離。

しかし杖を『魔法広範囲化』の【ヘクセンナハト】に持ち替えたレンは、空中から迫る大量の飛行型目がけて魔法を放つ。

「【フレアバースト】!」

上空に巻き起こる、壮大な爆発。

小型の竜種や、悪魔のような翼を持つ大型のコウモリが粒子になって消え、長く鋭いトサカを持った鳥が墜落。

その爆炎は、異世界の魔物たちにレンという魔導士の火力を知らしめた。

「【スピリットファイア】!」

「【アクアストライク】!」

遅れて、地を駆ける魔物たちに放つ後衛組の魔法。

散った魔物たちを狙い、前衛組が走り出す。

こうして両者がついに、ぶつかり合った。

激しい火花が、前線に飛び始める。

「ヤバッ……!」

戦いが始まりわずか。

ポニーテールの剣士は、いきなり窮地にあった。

一対一の状況となってしまった上に、相手は格上。

崩れた態勢を逃さず、体高2メートル半ほどの獅子剣士が岩剣を振り下ろす。

「【加速】【リブースト】!」

「ッ!?」

その目前に、現れたアサシン。

早い二連撃で、敵の攻撃を強制停止。

「【跳躍】【回天】」

そのまま獅子剣士の頭を飛び越えながら、放つ縦の回転斬り。

頭部を斬られた敵が大きくのけ反れば、自分のすべきことはすぐに分かる。

「【斬裂剣】!」

続く一撃で、獅子型剣士を打倒。

敵が倒れて消えると、そこにもうツバメの姿はなかった。

――――代わりに。

「っ!?」

違和感に驚きながら、振り返る。

そこには背後から迫っていた狼のような魔物が、【雷ブレード】によって感電していた。

「これが、アサシンの仕事……」

その見事な戦いぶりに、ポニーテールの剣士はノドを鳴らしたのだった。

「くっ! こいつら、思ったより強いぞ」

「ダメだ! ここで引いたら敵が後衛に突っ込むことになる!」

レベルは拮抗、しかし数に劣る一団。

前衛組は必死に敵の攻勢を押し留めるが、戦況は決壊目前だ。

「【魔砲術】【誘導弾】【フレアストライク】!」

その敵陣に放り込まれる、炎砲弾が炸裂。

敵の攻勢が、一気に弱まった。

「ここで攻め切れ! 今なら勢いで攻め切れる!」

「そうだ……あの子はウェーデンでもそうだった。広い視野と遠距離攻撃を使って味方を助けて、戦いを優位に変えていくんだ」

こうして危機にあった一団は、一気に加勢し突き進む。

「くるぞォォォォ!!」

こちらは二足のサイのような魔物。

粗削りな鋼鉄製のハルバードを、豪快に振り下ろす。

ここはレベル差が、ややミスマッチ。

本来は、もう少し高いレベルが求められる相手のようだ。

駆け抜ける緊張感。

「し、ししし失礼しますっ! 【かばう】【地壁の盾】!」

このハルバードを受けたのは、『自分が入り込んで良いのか』ギリギリまで迷いまくったまもり。

「盾子ちゃん!? 助かった! いくぞ、反撃の【アイスジャベリン】!」

放った氷の槍が、サイ戦士のヒザを撃つ。

「貫け【サンダーアロー】!」

雷光を引きながら飛来する矢が、サイ戦士のヒザに突き刺さる。

「今だ! 【弧月剣】!」

そして太刀の大きな振り上げが、サイ戦士のヒザを斬りつけた。

「あはははは! なんで皆ヒザ狙いなんだよ!」

皆が偶然敵のヒザを狙ったことに、思わず爆笑する一団。

これにはまもりも、クスクスと笑みをこぼしたのだった。

「焦るな! 少しずつでいいから敵を削るんだ! そうすれば味方の援護が来るはずだ!」

こちらは敵数の多さに、一進一退を繰り返す部隊。

「いきますっ!」

「「「きたぁぁぁぁぁぁぁぁ――っ!!」」」

聞こえた『最高』の声に、一人も遅れることなく綺麗に道を開ける。

「【ソードバッシュ】!」

敵陣に穿たれる穴。

「メイちゃんさっすがー!」

「サンキューメイちゃん!」

「いえいえーっ!」

拳を上げて先へ進む一団に、メイも拳を上げて応える。

「圧倒的だ……」

見れば各所で上手に情報伝達が行われ、強敵の場所にアーリィたちやシオールたち。

七新星や蘭すみれ姉妹が駆けつけることで、戦線を押し上げている。

さらに遊撃隊のようなメイたちの動きもあり、戦場にいる誰もが意気揚々と戦えているのが大きい。

「おい、あれを見ろ!」

しかし、敵数が明確に減ってきたところで――――。

第二陣と呼べるほどの、大量の魔物たちがゼティアの門から入り込んできた。

「なるほど、敵数が減れば次の『段階』に進む。そういう形ね!」

「これでシステムは把握できました! いきましょう!」

赤月の夜、世界を賭けたこの戦い。

プレイヤーたちの気合の咆哮が、王都前草原に響き渡った。